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スズムロ家の人々 6

hasunohana

■上海

こんな時には、いろんなことが次々起こるもんだ・・・

もう、誰もがそう思っていた。
ここへ来て、また状況が変わり、なんとタケシが上海に転勤が決まってしまった。
上海支店の立ち上がりからの参加なので、帰国が何年後かも不明である。
会社には、まさか父が亡くなり、更に離婚なんていうわけにもいかず、
更に、嫁を連れていくわけにもいかず、結局、単身赴任が決定した。
関西方面に移住も離婚も親権も、すべてなし崩しになってしまった。

チヨコも、自分的にはサイコーだった計画が、一瞬にして
サイテーな状況に持ち込まれてしまい、うなだれた。
周囲は、もう静かに見守る方向で行くことにした。

最近、長男のユウがサッカーをしたいと言ってきた。
なんと言っても、子供は4人だ。
全員の言うことを片っ端から聞いていたら、財布が大変なことになる。

つい先日、チヨコから電話があり、子供たちの近況を聞かれ
習い事をしたいと言われて、困っちゃった。
ローンだって、まだまだあるのに
全員に好きなことなんかさせてたら、暮らしていけないっちゅーの・・・
みたいなことを、さらっと言ったつもりのキカだったが
チヨコは、真面目に聞いていた。
いきなり「すぐに、とりあえず50万円送るから!」と真剣に叫んでいる。
はっ??!!!50万円?なに?なんなのー??
固まるキカに、チヨコは機関銃トークで
「そこまで苦しいなんて、思わなかったわよ。なんてこと?!
そんなんじゃ、やっていけないわよね?子供たちはどうなるの?!」

やってしまった・・・と、キカは舌打ちしたが
チヨコは止まらず喋り続けて、ふとした間のあとに
「あのね、帰ってきたら?」と言うではないか。
どこへ?!
うちは、ここだよっ!!おい、クソババ!そう来るか?!
チヨコは、急に優しい声で
「子供を育てるのに、田舎はいいわよ・・・
キカちゃんのお母さんも一緒に、皆、帰ってくればいいじゃないの?
お部屋はいくらでもあるんだし」

あああああ~~~~・・・・キカは、一瞬にして地獄へ落ちた気分を味わった。
「ね、キカちゃん?あなたの胸のうちに、こういう考えもあるんだってこと、しまっておきなさい?
それにね、私は、あなたとなら、うまくいけるって思ってるわよ」
おいおいおい!!キカは、自分達の結婚に泣いて反対したチヨコを思い出した。
このバカ姑ーー!!と思いながらも、どうしようもなく
「あぁ、はいはい・・・」と言うしかなかった。

電話を切ってから、キカは、がっくり床へ倒れこんだ。
うちへ切り替えかよ・・・
猛烈な怒りも湧いてくる。
50万円送ると言ったくせに、その後ねちねちと「一生懸命大切に溜めたお金なんだから」と主張する。
だったら、いらねーよっ!と思う。
いつでも恩着せがましいチヨコだ。うざい。うざすぎる。
そう言えば「都会で暮らしてくのは大変よ。都会の人間の中じゃ」なんて言ってたな、と思い出す。
なーに言ってんだ!私は都会生まれの都会育ちなんだよっ!悪かったな!!
と、反撃しておけばよかったと思うキカだったが、チヨコに言ったところで通じないだろう。

ユタの家で、こんな話をしながら
「まったく・・・池に沈めてやりたい」と思わず言うキカであった。
同時に「チヨコが上海に付いていけばいいのに。大好き同士なんだから、問題なく住めるしっ」
キカの怒りと憂鬱は、おさまらない。


















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