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スズムロ家の人々 7




キカまちこまき

秋のある日、キカのママが急逝した。
あまりに突然のさよならだったが、家族も周囲も
キカママのあっぱれな人生に、時間の経過を意識することもなく
それでも日常は、しっかり過ぎている。

チヨコに至っては、相変わらずサイアクにばく進していた。
キカママの葬儀のお清めの席では
懇々と長男タケシに、嫁キミドリの悪口を言いまくり
「きちんと離婚へ」の道を促しまくり
彼女のエキサイト振りに、周囲は否応ナシに聞き耳をたて
凄いことになっていた。

「チヨコ、凄かったよ。そんでお兄さんに、こういう席で
 そんな話をするなって叱られてた」と
友人たちを面白がらせていた。

あっという間に2005年も終わり、
いよいよあたためていた?義兄夫婦の離婚話が具体的になったことを
先日、チヨコからの一方的な電話で聞いたキカだった。

チヨコにしてみれば、離婚は当初の目論見から
かなり反れた方向へと進み
溺愛していた、タケシ夫婦の子供のゴンタは
憎っき嫁のキミドリの元へ行くことが、ほぼ決定した。

チヨコによると、離婚を切り出したのはタケシで
タケシは現在、上海と東京を1週間ずつ行き来するという
人間の機能がおかしくなりそうな仕事をしているようで
きっと、どこかで機能も壊れたのであろう、自分から離婚を切り出した、
とのことだった。

そもそも長いこと、同じ家で寝起きしながら
口もきかない、部屋も別々、相手のことは視界にいれないという
徹底した家庭内別居だったのだから
離婚は自然な流れだが、嫁・キミドリはここへきて
慰謝料を要求した。
これも自然な流れ?だろうが
タケシは、おまえに払う金など1円もないっと退けた。
・・・ということで、慰謝料でもめているこの頃らしい。

まったく・・・とキカは、自分だって
おまえらから慰謝料もらいたいぐらいだよっ・・・というところである。
ましてや、嫁1号のキミドリが抜けてしまうと
2号の自分のところへ、今後、チヨコというカメハメ波が
猛烈な勢いで押し寄せる。

しかし、子供達は元気だ。
そろそろ自分の時間を楽しんで、子育てに捧げた生活から
自分のための時間を持ったっていいじゃないか。
やっと、そんなふうに思えてきた。

ユタと何か習い事でもしたいよねーという話しになり
「陶芸」だの「絵画」だの、黙々と一心不乱に集中できそうなものや
「フラメンコ」だの「パワーヨガ」だの
体にムチ打ちそうなものまで、いろいろ考えてみた。

そんな時間に、ふと自分を取り戻せたような気になろうとも
もう翌週には、チヨコ上陸を控えるキカであった。



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