凍えたココロ

凍えたココロ

如月の夕べ。





「もう恋愛感情は無い」



と。



私は其処にあるだけのお薬を飲み込んだ。



睡眠薬、メジャートランキライザー、

抗うつ剤、マイナートランキライザー。



70錠を数えた頃から意識はあやふやになり

何とか100錠以上飲み込んで、畳に顔を

押し付けた。







気が付けば視界一杯に白い天井が広がっていた。

無機質な白。病院の白。

私の顔は胃洗浄の活性炭で真っ黒。

コントラストがおかしくて嗤った。

自嘲した。







『嗚呼、死ねなかった』







そう呟いて、女はまた目蓋を閉じた。







それは如月の夕べ。

如月の終わる頃に起こった実話。

間抜けな女は未だ

生きているのである。

必死に生を叫びながら、

死の誘惑に負けそうになりながら。







寿命が尽きる時まで

生きるしかないんだろう?


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