浜松中納言物語 0
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「物思いの絶えない身の上だ」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。勝手な事は言えないので、黙って聞いていたが、聞きづらい事を言われる間はしばらく退出していたいと思うが、退出しても嫌な事を言われそうだからそのままお仕えしているが、やはり物思いの絶えない身の上だと思う。宮さまが北の方のお部屋に入ると、北の方は何気ない風にしておられる。宮さまが、本当ですか、女御さまの所へ行かれると聞いたのですが。どうして車の用意もわたしにおっしゃらないのですとおっしゃる。北の方は、あちらからお迎えが来たものですからと言っただけで、後はなにもおっしゃらない。宮の北の方のお手紙や、女御さまのお言葉は実際はこんなものではない、それらしく作って書いたようだと書き写した元の本には書いてある。明日より和泉式部の和歌だけを紹介したい。
2022.07.01
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「自分からとやかく言えない」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。宮さまを憎んで言い合っているので、北の方はひどく辛く思われる。もうどうなってもいい。近くにいても会ったり話したりしたくない。迎えに来て下さいと話したり、兄弟がいらして、お迎えですと申し上げる。北の方は、いよいよ迎えの車が来たなと思われ、北の方の乳母がお部屋の汚れ物などを片づけさせているのを聞いて、略式の天皇の命令を伝える女房が、北の方さまはお里にお帰りになるそうです。東宮さま(兄)がお聞きになると困ることになります。お部屋に行かれて北の方をお止めくださいと慌てて宮さまに申し上げているのを見ると女は心苦しく辛いけれど、じぶんからとやかく言えることではない。
2022.06.30
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「このままここにいても面白くない」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 汚い所などの掃除をさせられて、しばらく里にいましょう。このままここにいてもおもしろくないし、宮さまにしても、私の部屋へお越しにならないのを心苦しく思ってらっしゃるでしょうからと話す。女房たちは、ほんとうにあきれたことです。世間の人は宮さまを軽蔑して悪く言っています。女がお邸にあがったときも、宮さまがわざわざ出かけて迎えられたのです。まったく見てはいられない待遇です。あのお部屋にいます。宮さまは昼でも三度も四度も通われるそうです。しばらくの間、宮さまをしっかりと懲らしめておあげなさい。あまりにも北の方さまに無関心ですからと宮さまを憎んで言い合っている。
2022.06.29
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「わたしまで人並みに扱われていない」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。近頃人が噂していることは本当ですか。わたしまで人並みに扱われていない気がします。夜にでもここへいらっしゃいと書いてある。これほどでもない些細なことでも、人は噂するのに、まして今度のことは と思われると、とても情けない気がして、お返事を書いた。お手紙拝見しました。いつもうまくいっていなかった夫婦の仲がこの頃は見苦しいことまで起きて。ほんのわずかな間でもお伺いして若宮さまたちを拝見し、気持ちを慰めたいと思います。迎えに車を寄こしてください。わたしも宮さまがなにをおっしゃっても聞かないで出ようと思っていましたからなどと申し上げて里帰りに必要な品々を取り揃えていらっしゃる。
2022.06.28
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「下仕えの者達の中にも嫌なことを言う」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 こうしてお仕えしているうちに、下仕えの者たちの中にも嫌なことを言うのを宮さまはお聞きになって、こんなふうに下仕えが噂するほど北の方はあの人を悪く思ったり言ったりすべきではない。不愉快だ。 気に入らないので、北の方のお部屋にお入りになることもめったにない。女はこのように宮さまが北の方に疎遠なのもいたたまれない気がするがどうしようか、どうしようもない、今はもうどうなろうと宮さまのなされるままにと思ってお仕えしている。 北の方の姉君は、藤原済時の長女、娍子(せいし)で、東宮の女御としてお仕えしている方が、里帰りしているときに、北の方にお手紙がある。
2022.06.27
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「女はじぶんを恥ずかしく思う」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。北の方がお嘆きになること限りない日が続き、年が改まって正月一日になった。冷泉院の拝賀の式に、廷臣(ていしん)たちが大勢参上なさる。宮さまもいらして、とても若々しく美しく、多くの人々の中で優れていらっしゃる。宮さまが若々しく美しいにつけても、女はじぶんが恥ずかしく思われる。宮さまは二十四歳、女(和泉式部)は二十七歳くらい。北の方の女房たちが端に出て見物しているが、廷臣たちを見ないで、まず宮さまの女を見ようと障子に穴を開けて騒いでいるのは、なんとも見苦しい。 日が暮れると、儀式は終わって宮さまはお帰りになった。宮さまの見送りに上達部が大勢お越しになって、管弦の遊びをなさり、とても華やかで趣があるにつけても、わびしかったじぶんの家がまず思い出される。
2022.06.26
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「わたしを憎らしく思っている」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 北の方の話しを宮さまは、人を使うからには、あなただって愛さないことはないでしょう。ところが、あなたのご機嫌が悪くなるに従い北の方付きの女房の中将などがわたしを憎らしく思っているのが面倒な事だと思う。髪なども梳かせようと思って呼んだのですが、ここでもお使いになったら などとおっしゃるので、北の方は不愉快でならないが、なにもおっしゃらない。 こうして何日かが経った。女はお仕えするのに慣れて、昼間も宮さまのそばに仕えて、髪なども漉いて宮さまもいろいろとお使いになる。女を少しもそばから離されない。北の方のお部屋に行かれるのもだんだん稀になっていく。
2022.06.25
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「不愉快でいつもより不機嫌に」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 二日後に宮さまの北の方の住む北の対屋に女を連れて行こうとされたので女房たちは驚いて北の方に申し上げると、北の方は、このようなことがなくてもとんでもないことなのに。あれはたいした女でもない。それなのにこんなひどいことをとおっしゃり、特別に愛していたから秘かに連れて来たのだろうと思うと、不愉快で、いつもより不機嫌にして宮さまは困ってしまって、しばらくは北の方の部屋に入らないで、女房たちの言うことも聞かず、女の様子も気がかりなので、女の部屋にいらっしゃる。 北の方が宮さまに、色々なことがあったそうですが、なぜ話して下さらないのです。妻のわたしが止めることができることでもありません。でも、これほど人並でない扱いをされて世間の物笑いになるのは恥ずかしくてなりませんと泣く泣くおっしゃっておられた。
2022.06.24
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「昼は女房たちや院の殿上人が集まる」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 宮さまが来られるというので、しばらく女の部屋の格子は上げないでおく。暗いのが恐ろしいわけではないが、うっとうしいので、宮さまがここでは人気が近すぎて趣がないからすぐに北の方に移してあげようといわれるのを、格子を全部下ろしてひそかに聞いていた。昼は女房たちや院の殿上人が集まり、このままではいられないでしょう。近くに来たばかりに失望させるだろうと思うと辛いとおっしゃるのでそれはわたしも心配していましたと申し上げると、宮はお笑いになる。まじめな話ですが、夜などわたしがあちらにいるときは用心してくださいよくない者たちが覗いたりする。もう少ししたら、あの宣旨の部屋に行ってごらんなさい。だいたいがあちらには人は寄ってこないと話す。
2022.06.23
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「誰か連れて来なさいと言われる」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 いつものように、いらっしゃいというので、女は今夜だけの外泊だろうと思って一人車に乗ると、宮さまが、誰か連れて来なさいと言いできることならゆっくりお話ししましょうとおっしゃる。いつもはこんなことは言わないのに、もしかしてこのまま邸にと思っているのかしらと思って、侍女を一人連れて行く。いつもの所ではなく目立たぬように侍女も置いて住みなさいとすでにしつらえてあり、やはりそうだったのかと思う。なにも大げさにしてお邸にあがることもない。かえって、いつの間にやって来たのだろうと人も思ってくれたほうがいいなどと思って夜が明けると、櫛の箱などを家に取りに行かせた。
2022.06.22
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「代々語り継がれてきた古い物語」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 宮さまはなにをお考えなのだろう、やはりわたしはいつまでも生きてはいられないのだろうかなど心細いことが書いてあるので呉竹の 世々のふるごと 思ほゆる 昔がたりは われのみやせむ代々語り継がれてきた古い物語を思わせるようなわたしたちの思い出話を わたし一人でするというのでしょうかと申し上げた呉竹の 憂きふししげき 世の中に あらじとぞ思ふ しばしばかりも嫌なことばかり多い世の中に生きていたくないのです ほんのしばらくでもなどとおっしゃってきて、その一方で宮さまは女を人目につかないで住まわせておける所などを決められた。慣れない所だからきまり悪く思うだろう。邸の者も聞きづらいことを言うだろう。今はもう、わたしが行って連れてこようと思われて十二月十八日、月がとても明るいときに、女の家にいらっしゃった。
2022.06.21
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「冬の夜にあなたが恋しくて眠れない」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 梅ははや 咲きにけりとて 折れば散る 花とぞ雪の 降れば見えける梅がもう咲いたのかと思って折ったら散ってしまいました 雪が降ったのが梅の花のように見えたのですね 翌日朝早く、宮さまから、冬の夜の 恋しきことに 目もあはで 衣かたしき 明けぞしにける冬の夜にあなたが恋しくて眠れなく 独り寝の淋しさのまま夜が明けてしまった宮さまへのお返事に、いやもう、わたしのほうは冬の夜の 目さへ氷に とぢられて 明かしがたきを 明かしつるかな冬の夜に目まで涙で凍ってしまって 明かしにくい夜を明かしましたなどと詠み交わすことにより、いつもの淋しさを慰めて過ごすというのもなんともはかないことである。
2022.06.20
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「わたしは今仏法の席にいる」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 宮さまは思わず笑ってごらんになる。この頃は、お経を習ってるのであふみちは 神のいさめに さはらねど 法のむしろに をればたたぬぞあなたと逢うのは神様は禁止されてはいないけれど わたしは今 仏法の席にいるので出て行かれないのです女(和泉式部)は返事を書くわれさらば 進みてゆかむ 君はただ 法のむしろに ひろむばかりぞそれならわたしのほうから行きましょう あなたはそこで仏法の道を広めていらっしゃればいいのです なとど申し上げて過ごす。そのように過ごすうちに、雪がたくさん降って、降りかかった木の枝にお手紙を結びつけて、雪降れば 木々の木の葉も 春ならで おしなべ梅の 花ぞ咲きける雪が降ったので 木々の木の葉もまだ春ではないのに みな真っ白に梅の花が咲きましたとおっしゃってきた。
2022.06.19
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「ああ恋しい今すぐに逢いたい」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。愛しい人、仮の話などもうけっしてしない。自分で言い出したこととはいえ辛くてならないとお返事があり女はその後、なにもかも悲しく思われ嘆いてばかりで、早くお邸にあがる準備をしておけばよかったと思う。昼頃、宮さまから手紙がある。見ると、あな恋し 今も見てしが 山がつの 垣ほに咲ける やまとなでしこ古今集・読人しらずああ恋しい 今すぐに逢いたい 山里に住む人の垣根に咲く大和撫子(やまとなでしこ)のようなあなたに 女は、まあ、狂おしいほどねと思わず声が出て、恋しくは 来ても見よかし ちはやぶる 神のいさむる 道ならなくに伊勢物語・七十一段恋しいのなら来てごらんなさい 恋の道は神様が禁止なさるものではないのですからと恋話しに花を咲かせる女人が詠んだ歌を告げる。
2022.06.18
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「情けないことでと書き添えた」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 宮さまへの便りを書いた紙の端に、しかばかり 契りしものを さだめなき さは世の常に 思ひなせとやあれほど約束なさったのに 出家なさるのは定めない世の常と思えということでしょうか情けないことでと書き添えた。宮さまはそれをごらんになって、まずわたしのほうから先にお手紙をと思っていました。うつつとも 思はざらなむ 寝ぬる夜の 夢に見えつる 憂きことぞそは現実のこととは思わないで 出家のことは二人で寝た夜に見た悪い夢なのです世の常と思えだなんて、気が短いね。 ほど知らぬ いのちばかりぞ さだめなき 契りてかはす 住吉の松いつまで生きられるかわからない命だけが定めないもの契り交わしたわたしたちの仲は 住吉の松のようにいつまでも変わらない
2022.06.17
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「頼もしい事があるわけではなく」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 落つる涙は 雨とこそ降れ。わたしは今夜の雨のように涙を流しています。 宮さまのご様子も、いつもより心細い頼りにならないことをいろいろおっしゃって、夜が明けたのでお帰りになった。女は、宮さまのお邸に上ったところで特別頼もしい事があるわけではなく日々の淋しさを慰めることができると思って決心したのに、今さらどうしたらいいのだろうなどと思い乱れて、宮さまに手紙を送る。うつつにて 思へば言はむ 方もなし 今宵のことを 夢になさばや現実のことだと思うと悲しくてならない 昨夜のことは夢にしてしまいたいなどと思うのですが、夢にはできないことでと書いた。
2022.06.16
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「取り留めもない話」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 その頃雨が激しく降っていたので、雨も降り 雪も降るめる このころを 朝霜とのみ おきゐては見る雨が降り雪も降るこの頃は お越しがないのは愛情が浅いのだと起き明かして朝の霜を見ています その夜、宮さまはお越しになって、いつものように取り留めもない話をなさりながらも、わたしの邸にあなたをお連れした後でわたしがよそへ行ったり、法師になったりして、お逢いできなくなったらがっかりなさるでしょうねと心細くおっしゃる。どういうお気持になられたのだろう。ほんとうに出家などということが起きるのかしらと思うと、とても悲しく思わず泣いてしまった。
2022.06.15
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「何度も手足を動かして眠れない」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 いつもより霜が真っ白に降りている朝に、宮さまから、この霜をどうごらんになりますかとおっしゃってきたので返事を冴ゆる夜の かずかく鴫は われなれや いく朝霜を おきて見つらむ冴(さ)ゆる冷えこむ夜に何度も羽を掻いている鴫(シギ)は私なのでしょうか 何度あなたの訪れを待って起きていて朝の霜を見たことでしょう暁の 鴫の羽がき 百羽がき 君が来ぬ夜は 我ぞ数かく古今集・読人しらず夜明け前に鴫が何度も嘴で羽根を掻いているように あなたがこない夜 わたしは何度も手足を動かして眠れないでいる
2022.06.14
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「心はしっかり結びついている」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 (長女家族が飼い出した生後4か月のポメラニアン)心はしっかり結びついているなどとこんなことを言っているうちに今年も残り少なくなったので、宮さまの邸に行くのは春になってからと思う十一月のはじめ頃、雪のひどく降る日に、宮さまから手紙が届く。神代より ふりはてにける 雪なれば 今日はことにも めづらしきかな神代から降っている珍しくもない雪だけれど 今日は格別新鮮に感られますお返事の手紙を初雪と いづれの冬も 見るままに めづらしげなき 身のみふりつつ初雪が降った と毎年冬のたびに珍しく見るうちに 珍しくもないわたしだけが古くなっていきますなどととりとめない歌をやりとりして日々を過ごす。宮さまからお手紙がある。ご無沙汰しているので、お伺いしてと思ったのですが、人々が漢詩を作るようなのでとおっしゃってきたので(まだ散歩へ行ってないポメラニアンはももに興味津々)いとまなみ 君来まさずは われ行かむ ふみつくるらむ 道を知らばや暇がなくてあなたがいらっしゃれないなら わたしが行きましょう 漢詩の道とお邸へ行く道を知りたいです(柴犬の6歳は人間の35歳位だろうか14キロが10.2キロに)宮さまはおもしろく思われて、わが宿に たづねて来ませ ふみつくる 道も数へむ あひも見るべくわたしの家に訪ねてきてください 漢詩の道も家まで来る道も教えましょう お逢いできるようになれば
2022.06.13
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「優しいお見舞いを下さる」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。気分はどうですか大分良くなりましたかとお尋ねになったので、いくらかよくなりました。もうしばらく生きていたいと思うのも罪深いことで。それにしても、(この撮影のあと25分間ほど脱走して車を渋滞させる)絶えしころ 絶えねと思ひし 玉の緒の 君によりまた 惜しまるるかな訪れが途絶えた頃 絶えてしまえと思った命ですが 宮さまが優しいお見舞いをくださるので また命が惜しくなりましたと申し上げた。宮さまのお返事は、良かった、ほんとうによかったと書いてあり玉の緒の 絶えむものかは ちぎりおきし なかに心は 結びこめてきあなたの命が絶えることなんてない 二人が契った誓いのなかに 心はしっかり結びつけておいたからともくださった。
2022.06.12
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「あなたを恋しく想っています」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。宮さまはいつものように心にしみることをお書きになって、われひとり 思ふ思ひは かひもなし おなじ心に 君もあらなむわたし一人であなたを恋しく想っていても甲斐がない わたしと同じ心であなたもわたしを想ってください。お返事は、君は君 われはわれとも へだてねば 心々に あらむものかはあなたはあなた わたしはわたしというように分け隔てはしませんから 二人の心が別々なはずがありません こうしているうちに、女は風邪をひいたのか、ひどく重いわけではないが気分が悪いので、宮さまはお見舞いの手紙をくださる。
2022.06.11
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「霜がとても白く降りている」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。夕暮は たれもさのみぞ 思ほゆる まづ言ふ君ぞ 人にまされる夕暮れは誰もそのようにもの悲しく思われます まずそれを口になさったあなたは 誰よりももの悲しいのでしょうと思うと愛しくてならない。今すぐお伺いしたいとある。 翌日のまだ朝早く、霜がとても白く降りているときに、今、どうしていますかと宮さまから手紙があったので、手紙をだす。起きながら 明かせる霜の 朝こそ まされるものは 世になかりけれあなたのお越しを待って夜を明かした霜が降りている朝ほど世の中で悲しいことはありませんなどとお手紙を交わす。
2022.06.10
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「女は決心がつかないまま」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。やはりわたしのところへ来る決心をしてくださいとあるが女はひどく気が引けて、きっぱりと決心がつかないまま、ただぼんやりと物思いにふけって日々を過ごしている。 さまざまに色づいていた木の葉もすっかり散って、空も明るく晴れていたのに、しだいに沈んでゆく夕日の光が心細く見えたのでいつものように宮さまに手紙を送る。なぐさむる 君もありとは 思へども なほ夕暮は ものぞかなしき慰めてくださるあなたがいらっしゃると思っても やはり夕暮れはもの悲しいですとあるので、宮さま手紙をくださる。
2022.06.09
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「昼も夜も話しして侘びしさも紛れる」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。のんびりと昼も夜もお話しして、いつもの侘びしさも紛れるので、このまま邸にあがりたいと思うが、宮さまの物忌も終わったので、いつものじぶんの家に帰ったが、今日はいつもより別れるのが名残惜しく恋しく思い出された。どうしようもなく苦しく思われるので、お手紙を送る。つれづれと 今日数ふれば 年月の 昨日ぞものは 思はざりける今までのことを振り返ってみると 昨日だけが思い悩むこともありませんでした 宮さまはごらんになって、女を愛しく思われて、わたしも同じですとあって思ふこと なくて過ぎにし 一昨日と 昨日と今日に なるよしもがな思い悩むこともなく過ごした一昨日と昨日とが 今日になってくれる方法はないだろうかと思うけれど、このままではどうしようもない。
2022.06.08
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「霜枯れはわびしいものです」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。日暮れにお手紙をさしあげる。霜がれは わびしかりけり 秋風の 吹くには荻の 音づれもしき霜枯れはわびしいものです 秋風の吹くころは荻の葉音がして あなたの訪れもありましたのにと申し上げると、宮さまからお返事があった。その手紙を見ると、とても恐ろしそうな風の音をどう聞いていらっしゃるのかと、かわいそうで。かれはてて われよりほかに 問ふ人も あらしの風を いかが聞くらむ枯れ果てた わたしよりほかに訪ねる人もいない家で あなたは嵐の音をどんな気持ちで聞いているでしょう思っているだけで伺えないのが辛いとある。やはり返事があったと思うと嬉しくて、宮さまは方違えの物忌で人目につかない所にいらっしゃるというので、この前のようにお迎えの車が来たので、今はもうおっしゃるままにと思うので、宮さまのところへ行った。
2022.06.07
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「恨みの心は絶やさないで」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。恨むらむ 心はたゆな かぎりなく 頼む君をぞ われもうたがふわたしをお恨みになっている心は絶やさないでください 限りなく信頼しているあなたをわたしも疑っているのですからと申し上げた。そんな事をしているうちに、日が暮れたので宮さまがいらっしゃった。宮さまは、まだ人があなたの噂をしているので、まさかとは思いながらあのような手紙を書いたのですが、こんな事を言われたくないと思われるならわたしのところへいらっしゃいとおっしゃり、夜が明けるとお帰りになった。 邸へ移ることばかりいつもおっしゃってくるが、お越しになることは難しい。雨がひどく降り風が激しく吹く日にも手紙を下さらないので、人が少ない家の風の音を思いやっても下さらないようだと思った。
2022.06.06
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「噂が立つどころか腹が立ちます」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。君はさは 名のたつことを 思ひけり 人からかかる 心とぞ見るあなたはわたしとのことで噂になるのを心配しているのですね 相手次第でそんな気持ちになるのがわかりました噂が立つどころか腹が立ちますとある。女は、わたしがこんなふうに困っているのを分かっていて、からかってらっしゃるのだろうと思う。やはり辛くて、やはりとても苦しくて。なんとかしてわたしの気持ちをわかっていただきたいのですと申し上げると、宮さまから、うたがはじ なほ恨みじと 思ふとも 心に心 かなはざりけり疑わない もう恨んだりしないと思っても じぶんの心ながら思うようにはいかないものだ。
2022.06.05
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「あなたのことを噂していた」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。やはり噂は本当だったと思ってしまう。ずいぶん早い心変わりですね。人があなたのことを噂していたので、まさかとは思いながらも(このバンダナ女の子のママが落とした物を銜えて離さない戦利品)人言は あまの刈る藻に しげくとも 思はましかば よしや世の中人の噂が海人の刈る藻のように多くても 二人の間に愛があればそれでいい古今六帖・伊勢 という気持ちで申し上げただけですと書いてある。女(和泉式部)は少しほっとして、宮さまのご様子も知りたくどのような噂を聞かれたのかも聞きたくてなって今の間に 君来まさなむ 恋しとて 名もあるものを われ行かむやは今すぐに来てください 恋しいからといって 世間の噂もありますから 女のわたしのほうから行けるでしょうかと申し上げる。
2022.06.04
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「事実でない事はどうしようもない」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。胸がしめつけられ、驚きあきれるばかり。とんでもない作り話が今までにもたくさん出てきたが、どう噂されようと、事実でない事はどうしようもないと思って過ごしてきたのに、この手紙は本気でおっしゃっている。お邸に行くのを決心した事さえ微かに聞いた人もいるだろうに、これではみっともない目に遭いそうだと思うと悲しく、返事をする気にもなれない。出家しても本心からではないように、人は思ったり言ったりするだろう。やはりこのまま過ごそうか。近くにいて親や姉妹の様子も見てあげたい。また、どういう噂を聞かれたのかしらと思うと恥ずかしくて、お返事も申し上げなかったので、宮さまは、わたしが出した手紙を恥ずかしいと思っているようだと思われて、どうしてお返事も下さらないのです。
2022.06.03
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「浮名の立つのは嫌だから」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。昔の人である橘道貞の形見である子の小式部内侍の将来も見届けたいと決心したので、宮さまに疑われたらつまらない。邸に行くまでは、嫌になる噂はなんとかして聞かれないようにしよう。傍にいればいくらなんでも私のことをわかってくださるだろうと思って言い寄ってきた男たちの手紙にも、いませんなどと侍女に言わせてまったく返事もしなく、宮さまからお手紙がある。見ると、まさかそんな事はないと思ってあなたを信じていたのがばかだったなどと、多くのことを書いてはいらっしゃらなかったが。人はいさ 我はなき名の をしければ 昔も今も 知らずとを言はむ古今集・在原元方(ありわらのもとたか)あなたはともかく わたしは浮名の立つのは嫌だから あなたのことを昔も今も知らないと言おうとだけ書いてある。
2022.06.02
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「そっと女を連れだされた」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。もみぢ葉の 見にくるまでも 散らざらば 高瀬の舟の なにかこがれむ紅葉が車で見にくるまで散らないでいたら どうして高瀬舟〔宮さま〕を恋い焦がれたりするでしょうと返事すると、その日も暮れてから宮さまがいらして、女の家が方塞がりなので、そっと女を連れだされた。 この頃、宮さまは四十五日の方違えをなさるというので、いとこの三位(藤原兼隆)の家にいらっしゃり、いつもとは違う所であるので女は、みっともない事をと申し上げるが、宮さまは無理に連れてこられる。女を車に乗せたまま誰もいない車宿りに牛車を引き入れて、ごじぶんは邸の中へ入ったので、女は恐ろしく思う。人が寝静まってから宮さまはいらして、車に乗って、さまざまなことを話されて約束を取り付けようとされる。
2022.06.01
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「初めてお逢いした夜から」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。お返事は、 その夜より わが身の上は 知られねば すずろにあらぬ 旅寝をぞする宮さまに初めてお逢いした夜から わたしの身の上がどうなるのか分からず車宿りという思いもしない所で旅寝をしていました と申し上げた。 女は、こんなに親身にもったいないほどのお気持ちを、知らないふりをして強情をはっていていいのだろうか。ほかのことは大したことはないと思う。宮さまのお邸に行こうと決心した。邸に行った場合、実際に起こる問題を言う人たちもいるが、聞く気もしない。辛い身の上だから、ご縁のあるままにお邸に行こうと思う一方でこの宮仕えはわたしの望みではなく、巌(いわ)の中に住みたいけれどそこでまた辛いことがあったらどうしよう。巌の中に住むとは出家。
2022.05.31
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「いい加減に過ごしてきた」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。事情を知らない宿直の男たちがあたりをめぐり歩いている。いつものように右近の尉と小舎人童が車の近くに控えている。宮さまは女を身にしみて愛しく思われるにつれて、女に対していい加減に過ごしてきた態度を悔やまれるのも、身勝手といえる。 夜が明けると、宮さまはすぐに女の家まで送っていらして、邸の人が起きないうちにと急いでお帰りになり、早朝に、文を寄こして来た。寝ぬる夜の 寢覚めの夢に ならひてぞ ふしみの里を 今朝は起きけるあなたと一緒に寝た夜以来 夜目が覚めてしまって 伏見の里なのに 今朝は臥さないで起きていました
2022.05.30
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「今行っても無駄でしょう」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。うつろはぬ 常磐の山も もみぢせば いざかし行きて とふとふも見む色の変わらない常磐の山が紅葉するなら 急いで行って見るでしょうが今行っても無駄でしょうと、先日宮さまがこられたときに、差し障りがあってお逢いできませんと申し上げたのを思い出しておられた。その後で高瀬舟 はやこぎ出でよ さはること さしかへりにし 蘆間わけたり高瀬舟〔宮さま〕早く漕ぎだしていらっしゃってください 障りがあってお帰りになった蘆(あし)の障害は取り除きましたからともうしあげた。蘆は舟の進行の障害 と申し上げたのを、お忘れになったのか山べにも 車に乗りて 行くべきに 高瀬の舟は いかがよすべき山の紅葉は車に乗って行くはずなのに 高瀬舟でどうして行くことができるでしょうとあるので返事を書いた。
2022.05.29
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「今朝になって悔やんでもしかたない」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。もみぢ葉は 夜半の時雨に あらじかし 昨日山べを 見たらましかば紅葉の葉は昨夜の時雨で散って残っていないでしょう 昨日山に行って見ていたらとお返事したのを、宮さまはごらんなってそよやそよ などて山べを 見ざりけむ 今朝はくゆれど なにのかひなしそうですよ どうして山へ行かなかったのでしょう 今朝になって悔やんでもなんにもなりませんと書いたあと、紙の端にあらじとは 思ふものから もみぢ葉の 散りや残れる いざ行きて見む紅葉はもうないとは思いますが 散り残ってるのがあるかもしれません さあ行って見ましょうとおっしゃってきた。
2022.05.28
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「十月には振るといわれる時雨」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。聞こえるはずのない大きさの声でもなかったのですが、聞いていた時に本当に、とても哀れに思われましたが、そうはいってもやはりすぐに返歌をしにくく、つつましくして終わってしまいました。残念に思いながら夜を明かしたその早朝、宮さまから、神無月 世にふりにたる 時雨とや 今日のながめは わかずふるらむ十月には降るといわれる時雨 あなたも今日の長雨をわたしの物思いの涙雨とは思わないでしょう だとすると残念ですとおっしゃってきた。女(和泉式部)は時雨かも なににぬれたる 袂ぞと 定めかねてぞ われもながむる時雨に濡れたのか 何に濡れた袂(たもと)なのかと決めかねてわたしも物思いに沈んでいますと詠んだ。
2022.05.27
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「この頃の山の紅葉はきっと美しい」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。月も見で 寝にきと言ひし 人の上に おきしもせじを 大鳥のごと月も見ないで寝たとおっしゃったあなたの袖には霜は降りないでしょう 起き明かした大鳥の羽のようにはとすぐに夕暮れにお越しになった。この頃の山の紅葉はきっと美しいから見に行きましょうといわれるのでとてもよいことですと申し上げて、約束したその日になり今日は物忌ですと申し上げて家にとどまっていた。宮さまから、ああ、残念だ。物忌が終わったら必ずと返事があったがその夜の時雨は、いつもより強い雨音が木々の木の葉が落ちそうなほどに聞こえるので、女は目を覚まして、風の前にある木の葉がうらやましいという。
2022.05.26
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「霜がたいそう白く降りた早朝」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。 よくない男たちが手紙を寄越したり本人たちも家の周りをうろついたり悪い噂が立つので、女は、宮さまのところへ行こうかしらと思うがやはり気おくれがしてきっぱりと決心ができない。霜がたいそう白く降りた早朝、女がわが上は 千鳥も告げじ 大鳥の はねにも霜は さやはおきけるわたしの袖に涙の霜が降りたのを千鳥も告げないでしょう 大鳥の羽(宮さまの袖)にも霜は降りたでしょうか大鳥の羽に、やれな霜降れり やれな 誰かさ言ふ 千鳥ぞさ言ふ 鷃(かやぐき)ぞさ言ふ 蒼(みと)鷺(さぎ)ぞ 京より来てさ言ふ風俗歌・おほとり、と申し上げると、宮さまから返事がある。
2022.05.25
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「恥ずかしくてならなかった」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。葛城などの故事とは役(えん)の行者が葛城山と金峰山との間の久米路に橋を架けるように葛城神に命じたが、容姿が醜いために夜だけ仕事をして、昼は仕事をしなかったので橋が中々完成しなかったという故事をふまえている。 愛しくてならなかったと言ってこられ、恥ずかしくてならなかったですと申し上げると、折り返し宮さまからおこなひの しるしもあらば 葛城の はしたなしとて さてややみなむわたしに役の行者のような法力があったなら 葛城の神のように あなたが昼間に逢うのを恥ずかしがっているからといってやめてしまうでしょうかなどと言う。今までよりしばしばお越しになったりするので日々の心細さも格段に慰められる気がする。
2022.05.24
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「愛しくてならなかった」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。直衣をお召しになり、その下になんとも言えないほど美しい袿(うちぎ)をそれも出し袿(下に着る衣の裾を出して着る)にしていらっしゃるのが理想的に見える。女は、私の目まで色っぽいせいかしらとさえ思われた。 翌日、宮さまから、昨日昼間に伺って、あなたがあきれていた様子が辛かったものの、愛しくてならなかったと言ってこられた。葛城の 神もさこそは 思ふらめ 久米路にわたす はしたなきまで葛城(かつらぎ)の神も私のように思ったことでしょう 昼間に久米路に橋を架けるのはみっともないことだと故事をふまえて書いている。
2022.05.23
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「わたしたちの言葉も深くなった」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。伊勢のあまの 塩焼き衣 馴れてこそ 人の恋しき ことも知らるれ古今六帖・柿本人麻呂伊勢の海人が塩を焼く時に着る衣のように 馴れ親しんでこそ人は恋しくなるでしょうとおっしゃって、部屋を出て行かれた。 庭先の透垣(すいがい・垣根)のところに、美しい檀(まゆみ)が少しだけ紅葉したのを、宮さまはお折りになって、欄干に寄りかかって檀の葉が色づくように、わたしたちの言葉も深くなったねとおっしゃる。白露がほんの少し置くのを見ていた間にと申し上げる女の様子を宮さまは情趣があって素晴らしいと思われる。宮さまのご様子もとても心ひかれる。
2022.05.22
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「頼りない関係では苦しくてならない」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。宮さまがいわれるようにお邸に移ることになったら、いつまでも恥ずかしがっていられないと思って、にじり出たが、宮さまはこの数日ご無沙汰していたことなどをお話しになった。しばらく横になられてわたしが申し上げたように、早く決心して下さい。こういう外出はいつも気恥ずかしく、だからといってお伺いしないと気がかりだし、こんな頼りない関係では苦しくてならないといわれる。とにかくお言葉通りにと思っているのですが見てもなほ またも見まくの ほしければ 馴るるを人は 厭ふべらなり古今集・読人しらず逢えば逢うほど逢いたくなるので 親しくなると人は嫌がるだろうということがありますから、思い悩んでいると申し上げた。
2022.05.21
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「思わず歌が口ずさまれて」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。目を覚まして横になり、夜もしだいに更けたようだと思うころに門を叩く音がするので、誰だろう、心当たりがないけれどと思うが、取次に尋ねさせると、宮さまからのお手紙だった。思いもしない時刻なので、心が通じたのかと嬉しくなって妻戸を押し開けて手紙を見ると見るや君 さ夜うちふけて 山の端に くまなくすめる 秋の夜の月見ているだろうかあなたは 夜が更けて山の端に曇りなく澄んでいる秋の夜の月を 思わず歌が口ずさまれて、いつもより身にしみて感じられる。門も開けないで待たせているから、お使いが待ち遠しく思っているだろうと思って、すぐに返歌を詠み送った。
2022.05.20
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「月を眺めている歌を返してくる」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。ふけぬらむと 思ふものから 寝られねど なかなかなれば 月はしも見ず夜が更けただろうと思うものの眠れませんが だからといって月を見れば物思いが増すばかりなので見ませんと詠んだ。宮さまは女も月を眺めている歌を返してくると思っていたので意表をつかれた気がして、やはりつまらない相手ではない。なんとか近くにおいて、こういう歌を詠ませて聞きたいなと女を邸に移らせることを決心なさった。 二日ほど経ち、宮さまは女車のように見せかけてそっとお越しになった。昼などにまだお目にかけたことがないので、恥ずかしいけれどみっともなく恥じらって隠れているわけにもいかない。
2022.05.19
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「わたしが手枕の袖を忘れた」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。女(和泉式部)が、人知れず 心にかけて しのぶるを 忘るとや思ふ 手枕の袖誰にもわからないようにあなたのことを想っているのにそんなわたしが手枕の袖を忘れたと思っていらっしゃるのですかと申し上げる。宮さまから、もの言はで やみなましかば かけてだに 思ひ出でましや 手枕の袖わたしが手枕の袖と言わなかったら あなたはけっして思い出されなかったでしょう) こうしてその後二、三日、宮さまからなんのお便りもくださらない。頼りにできそうにおっしゃったことも、どうなってしまったのかと思い続けると、眠ることもできない。
2022.05.18
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「わたしの機嫌もなおりそうにない」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。朝日影 さして消ゆべき 霜なれど うちとけがたき 空の気色ぞ朝日がさせば消える霜なのに なかなか霜が消えそうにない空模様 わたしの機嫌もなおりそうにないとある。殺したいだなんてと書いて君は来ず たまたま見ゆる 童をば いけとも今は 言はじと思ふかあなたは来ないばかりか たまに姿を見せる童を生かしておいて 手紙を届けに行けともおっしゃらないつもりですかと申し上げる。宮さまはお笑いになって、ことわりや 今は殺さじ この童 忍びのつまの 言ふことによりもっともです もう童は殺さない 隠し妻のあなたがおっしゃるのだから手枕の袖は忘れてしまったようですねとある。
2022.05.17
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「霜の上に朝日が射しているよう」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。まどろまで 一夜ながめし 月見ると おきながらしも 明かし顔なるわたしが一睡もしないで眺めていた月を あなたは今朝まで起きて見ていたようにおっしゃるのですね 本当でしょうかと申し上げてこの童が、ひどくお責めになりますと言うのが面白い。紙の端に霜の上に 朝日さすめり 今ははや うちとけにたる 気色見せなむ霜の上に朝日が射しているようです 今はもう霜もとけるように 童に打ち解けた様子を見せてください童はひどくしょげているそうですと書いたところ、宮さまから今朝あなたが歌を先に送って得意そうだったのが、憎らしくてたまらない。この童を痛めつけたいと思っているほどでとある。
2022.05.16
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「寝てしまって見なかった月」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。まだこちら様からお手紙をくださらない前に、宮さまはわたしをお呼びになったのですが、今まで参上しなかったとわたしをお責めになったかと思うと、お手紙を取り出した。昨夜の月は素晴らしかったねとあって寝ぬる夜の 月は見るやと 今朝はしも おきゐて待てど 問ふ人もなしあなたが寝てしまって見なかった月をごらんになったかと 今朝までずっと起きて待っていたが 便りをくれる人もいないなるほど童の言うように、宮さまのほうが先に歌を送ろうとなさったらしいと思うと、嬉しい。
2022.05.15
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「今朝よく見ると真っ白なんです」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。手枕の 袖にも霜は おきてけり 今朝うち見れば 白妙にして寝ないで起きていたからわたしの手枕の袖にも涙が凍って霜になったよう 今朝よく見ると真っ白なんですと申し上げた。宮さまは、悔しい、先を越されたと思われて、つま恋ふと おき明かしつる 霜なれば けさうち見れば 白妙にして妻と思うあなたが恋しくて 起きていて明かしたわたしの涙の霜だからとお詠みになったときに、やっと童が参上した。宮さまはご機嫌が悪く童のことをお聞きになるので、取次の者は童に早く参上しないから、ひどく怒っていらっしゃるようだと言ってお手紙を渡したので、童は女のところへ持って行った。
2022.05.14
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「露と別れの涙で濡れてしまった」 「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「和泉式部日記」の研鑽を公開してます。女が横になっているときに、宮さまから手紙があった。露むすぶ 道のまにまに 朝ぼらけ 濡れてぞ来つる 手枕の袖露が降りた道を歩くうちに夜が明けて 露と別れの涙ですっかり濡れてしまった手枕の袖。この手枕の袖のことは、どうということもないが、お忘れにならないで詠んでいらっしゃるのも嬉しい。道芝の 露におきゐる 人により わが手枕の 袖もかはかず道の芝草の露に濡れて起きているあなたのせいで わたしの手枕の袖も涙で乾かない その夜の月がとても明るく澄んで、女も宮さまも月を眺めて物思いにふけって夜を明かし、翌朝、宮さまはいつものように手紙を遣わそうと、童は来ているかとお尋ねになっているとき女も霜がとても白いのに目を覚まして歌を詠む。
2022.05.13
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