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浩平のさとり

浩平
     浩平のさとり

 浩平が2歳の頃まだ言葉もカタコトで可愛い盛りの時でした。兄が何かの拍子に振った手が、浩平の顔の真ん中に当たってしまいました。『バチン』という音がしたので、痛かっただろうなあ、と思いながら顔を見ていると、次第に顔が崩れて泣き顔になってきます。目には涙がたまっています。それから、抗議の顔を兄のほうに向け恨めしそうな目で見つめました。

 ところが、兄はびっくりしたような顔で弟を見ていたのです。その瞬間、浩平の顔がみるみる変わっていき、溢れるような涙を浮かべたまま、くしゃくしゃな笑い顔になって、ついに「ヘヘヘ」と声を出して笑ったのでした。いつもなら完全に泣いていたはずでしたが、この日に限って泣きませんでした。

 兄の行為がわざとだったり、ふざけるというのであれば、泣いて抗議をしているところでした。しかし、兄の顔を見ると、即座に兄は自分に対して悪戯をしたのじゃない、兄はすまない気持であり、謝りたい気持があることを察したのではないかと思います。そして、今は兄ちゃんと楽しく遊びたいし、兄ちゃんを心配させたくない気持から、痛さを我慢して笑顔を作ったのではないでしょうか。

 禅でよく言われる言葉に「今、ここ」があります。ぼくたちが生きているのは、未来ではなく過去でもない、今この瞬間、この場しかありません。このことに徹しきること、これが悟りの境地だと思っています。ぼくはこの事件を「浩平のさとり」と名付けました。ぼくのニックネームはこれにあやかって付けました。



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