つきあたりの陳列室

つきあたりの陳列室

2010.09.13
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カテゴリ: Other topics
(2010年,アフタヌーンコミックス,講談社)


クラシックバレエをフューチャーしていた山岸凉子の大河ドラマ「舞姫 テレプシコーラ」もとうとう終幕を迎えました。がしかし,それと前後する形でこの社交ダンス漫画が彗星のごとくアフタヌーン誌に降臨しました。いやっふー!!ダンス漫画,おもしろいよダンス漫画。

  マイナー部活動×リアリズム青春漫画。

「ヒカルの碁」以降,良作が続いているジャンルです。書道とかカルタとかあれとかこれとかね。本作「BUTTER!!!」も万人に勧められそうな良質の漫画です。超おすすめです。

そして何より,気品があるのです。BLとか百合もの出身で,大手の雑誌に引き抜かれるような作家さんたちには,気品というものをうまく描ける人がよく居ます。西炯子とか,草間さかえとか,タカハシマコとか。



描写のことを言いますと,ヤマシタさんの描く眼が,ぞくぞくするほど素晴らしいです。ダンス部副部長の二宮さんは,オールドファッションな少女漫画(「日出処の天子」の厩戸王子とか)を彷彿とさせる睫毛バサバサの眼をしていますが,その眼が意地悪く歪む描写などには溜息が出ます。

そして一番魅力的なのはやはり,ヒロインであるなっちゃんの眼で,その生き生きとした眼,くるくると変わる表情はもう,キュート!としか言いようがありません。見た目だけでなく,タイトルの由来にもなっている

 「バ,バターになっちゃいますーー」

なんて科白とか,可愛すぎだろコラァ!やめて!もー,おじさんをこれ以上誘惑しないで!

失礼,見苦しいスイッチが入りました。一旦筆を置きます。ふー。



BL出身の作家さんが,ノンケの,オタクっぽい男の子の,コンプレックスに満ちた精神をを描こうとする時,意外とステレオタイプでリアリティが無かったりします。おそらく彼女たちにとって魅力の薄い人種なのでしょう。あるいは同族嫌悪でしょうか。その魅力の無さを逆手に取って,オタク男子を徹底的に戯画化してみせたのが西炯子さんの「電波の男よ」「亀の鳴く声」におけるキャラクター造形です。

ところがヤマシタさんの場合,そういうひ弱な男子の心根を,かなりリアルに描写していたので,私は嬉しかったです。本作「BUTTER!!!」の端場(はば)君という準主役級男子がそれです。プライドばかし高くて,でも苛められやすいオドオドっぷりは,「おおきく振りかぶって」のミハシと似ていなくもないけれど,端場君は可愛気に欠けます。しかし,だからこそ身につまされるし,リアルなのです。


というわけで,脂ののってきたボーイズラブ界の中堅作家が,このヒネくれたボーイミーツガールをどう料理してくれるのか。今のところ,連載一話ごとに面白くなってきており,期待は増すばかりです。









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Last updated  2010.09.13 22:42:25
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フィンち@ Re:「記憶の中の源氏物語」 三田村雅子 「人生のままならなさ」への強烈な疑問と,…
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