INVICIBLE NIGHT

INVICIBLE NIGHT

明るい未来


つまりは登校拒否。
「だってさ、学校ってつまらないじゃん」
ひとり、ぼやく。
母はそんな私を放っておく。
けどお父さんは優しくて
『お父さんは、亜由美のやるようにやっていれば、いつか学校にも行けるようになると思っているんだよ』
と言ってくれる。
それが私の希望。お父さんだけが私の味方。
でも母は
『不登校なんて我が家の面汚しだわ。いっそ出てってほしいね』
なんて言う。
ちなみに私には弟がいる。
弟は頭がよくて、有名な私立校に通っている。
母は弟にはやさしい。
「…ま、当然か」

久々に町に出てみた。と、妙な店を発見した。
「本屋…?」
そこは店主のいない本屋であった。
「いいのかなー、ぱくっちゃうよー」
本屋へと入る。と、気になる本を見つけた。
「『ひとつやれば自分の中の世界が変わる』…?」
もっともなことが書いてある。発行年数は1956年…。
「ひとつ…やればねぇ…」

来週から我が校の修学旅行だ。
もちろん行かない。でも
「亜由美、お父さん頼みがあるんだ。旅行先にしか売ってないものを買ってきてくれないか?もちろん嫌なら嫌と言っていい」
お父さんはやさしく言う。そのとき
『ひとつやれば自分の中の世界が変わる』
その言葉が頭をよぎった。
「…うん、わかった。買ってくるよ」
「そうか!ありがとう亜由美!」
そして、旅行の日。
私にも友達ぐらいはいる。
「ねぇ亜由美、ポーカーやらない?」
「え?あ、うん、やるやる」
…まあ、こんなのも、ありかな。

旅行先から帰った。
疲れたけど、楽しくなかったと言えば嘘になる。
「学校も…いいかもね」
よし、明日は学校に行こう!
母を驚かせてやるんだ。

「人多いなー」
学校にやってきた。まあ生徒がいるのは当然なわけで。
「あれ、亜由美じゃーん!」

それは唐突だった。
お父さんが事故で重体という連絡が学校に入った。

「お父さん…!しっかりして…!亜由美だよ…!」
集中治療室の中で、父は、苦しそうだった。
「亜由美か…今日学校に行ったそうじゃないか…偉いぞ」
「お父さん…!喋っちゃダメ…!」
「お前が学校に行けて、お父さん嬉しいよ…」

お父さんは、助からなかった。
泣いて泣いて、泣きまくった。泣き止んでも、居心地が悪いので、外へ出た。

アーケード街。
なんとなく、修学旅行のきっかけになった本屋へと立ち寄った。
無論店主はいない。
そして、あの本のページを開いた。
「『ひとつやってしまえば、全ては終わる』…」
そうだ。もう終わったんだ。ずっと暗い部屋の中で生きる時間はい終わったんだ。
「明日から、学校行かなきゃ、お父さんに顔向けできないもんね」
それにしても
「1956年って随分古いなー」




続編


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