番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

番組構成師 [ izumatsu ] の部屋

耳疑うニュース


耳を疑った。
夜のNHKニュース。

--日本政府の毅然とした態度はすばらしかった。
--特に、事件直後に自衛隊撤退はないという強い姿勢を打ち出し、
--その決定にブレがまったくなかったこと。
--そこが非常にすばらしい。

なんとか研究機関のテロ対策室長なる人物の言。

信じられない。

まだ、日本人3人を拘束したとするグループが、
「24時間内に解放する」という声明を、アルジャジーラを通して
公にしただけだ。
3人の解放が確認されたわけでもなければ、3人のうち、ひとりとして
元気な姿を映像としてとらえられたわけでもない。
日本政府が、3人の身柄を確保したという発表をしたわけでもない。

「3人が解放されたとして」というあまりに安易な仮定の元、
相手側が軍隊とみなしている自衛隊の撤退拒否を即座に決定した
日本政府の姿勢を絶賛する人物と、その言葉をそのまま放映したNHK。

信じられない。
これがマスコミの、ジャーナリズムのやることだろうか?

解放されたという事実は、なんら確認されてないのだ。
その時点で、国の姿勢を賛美する人物をスタジオに招き、
「どういう点が功を奏したか?」などという愚問を発したNHK。
誰もまだ帰ってきていない、姿を見せてもいない時点で行なうべき
報道なのか?

信じられない。

マスコミのすべきこと、それは事実のみを正確に報道すること。
しかし、NHKはマスコミとして、決してやってはならない仮定・推定を
前提とした安易な推論を日本全国に向けて発した。
相手側を刺激しかねない推論。
それを日本国営放送が電波に乗せた。当然、海外へも流れる。

信じられない。
報道姿勢を、報道センスを、疑う。

NHKだけではない。
TBSは、昼間、放送中の番組をいきなり中断し、
「拘束された3人は、解放された」旨の特別放送をねじ込んだ。
しかし、そのニュース・ソースは偽物だった。

TBSは、ニュース・ソースの裏をきちんととったのか?
事実の絶対的な基盤である、解放された3人の姿を映像として
入手したのか?
あいまいなままに先走った報道のみっともなさを露呈しただけだ。

ここ数日のテレビ報道のあり方を見て、改めて思う。
テレビは、ジャーナリズムたり得るのか?
誰のために、誰に向けて、報道しているのか?
確固たる姿勢は見えてこない。


NHKのニュースに登場した男性はじめ、研究機関の一部の方々に
とって、連合国の主たる構成国である日本の、その一般市民が拘束
されたという事実は、絶好の研究対象、研究資料となるだろう。
それは、自らのオフィスで、自ら納得しつつ、黙々とやればいい。
そして、見事な“テロリスト対策プログラム”を作成すればいい。

今、必要なのは、今、どうすればいいか。それだけだ。

ファルージャでは、アメリカと武装勢力とが一時の休戦に合意したという。
今、すべきことのひとつ。
それは、ファルージャにおけるアメリカ軍の、一般市民をも巻き込んだ
“掃討作戦”を諌めること。
同盟国の一員として、アメリカ軍の行き過ぎをたしなめることじゃ
ないだろうか。


(2004.04.11)



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