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番組構成師 [ izumatsu ] の部屋
政党コマーシャル
--「この国を想い、この国を創る」。
--自民党の目指すもの、それは誰もがこの国生まれてよかった、
--そう思える国づくりです。
--テーマは「日本」。自民党!
お昼を食べつつテレビを見ていたら、小泉さんが登場して、
元気にこうしゃべって、消えていった。
参議院選挙に向けての、政党コマーシャル。
自民党の総裁である小泉さんが、自民党CMに登場するのは当たり前。
でも、なんとなく奇妙な感じ。
自民党の主流派ではない小泉さんが首相であることからして、
ほんとうは奇妙なのかもしれない。
しかし「テーマは『日本』」とは、これまた大きく、かつ、あいまいに出たな。
党としての公約などないも同然の、このコピー。
具体的なことがなにもない。
具体的なことを口走るとその揚げ足をとられかねないし。
耳ざわりのいい言葉で広く有権者にアピールする。そんなところか。
“想い”とか“創る”という言葉はわざわざ文字で見せている。
どちらの漢字も、実体がないものを述べるときや、体裁を整えるときに
使われやすい文字だということを本で読んだことがある。
また、なにかを夢想するときにも頻用される漢字だとか。
--あ~ら、ピッタシ。
そう思ってしまった。
「この国に生まれてよかった」
胸を張って、そう言いたいです、ほんと。
しかし、過去の行為は解決済みと切り捨てている今の母国。
生まれてよかったと言うにはあまりにも腰がすわってなさ過ぎだ。
その腰のすわらなさをリードしてきたのは、自民党。
その自民党に舵取り役を任せてきたのはぼくら国民だから、
胸を張れない国を“創って”きたのは、やはりぼくらということになるだろう。
“国際貢献”のためにイラクへ行ったはずの自衛隊。
それが、あららの間に“多国籍軍”へ参加することとなった。
ますます、「この国に生まれてよかった」とは思えない。
--多国籍軍には参加する。だが、指揮権は日本が保持する。
そんな小理屈で乗り切れてしまう国民。
ほんとに扱いやすいんだろうなぁ、ぼくらは。
多国籍軍に参加するというこの事実に、
ぼくら国民のどのくらいの人たちが関心を持っているのだろう。
関心を持たないのは受け入れたと同じこと。
将来、紛争地帯へわが子がかり出されても、
母も父も、国に非を負わせることはできない。
もう、OKを出してしまったのだから、“無関心”という自己表現で。
多国籍軍に参加することにしました。
各国の軍隊が集結した中で自衛隊もその役目を果たします。
でも、自衛隊は軍隊じゃないよ。
“自衛”のためにしか、武力は使わないんだからさ。
命令はぼくらがするって言ったらいいよってさ。
だから、心配ないよ。ぜんぜんだいじょうぶだぁ。
そんな収め方で、殺し殺される場所へと出かけることがあっさり
決まった。
小泉さんが、
--自衛隊は「軍隊」だ。
そう断言したのは、もう一昨年のことだろうか?
ほとんどニュースにもならず、批判の対象にはならなかった。
それどころか、話題にさえのぼらず、記憶への片隅へと押しやられた。
結局、痛い目を見るのはぼくらなのに。
小泉さんの政治手腕は、最近の「コイズミ流テレポリティクス(テレビ政治)」で
十二分に発揮されてきているのではないだろうか。
拉致事件での、家族会の憤怒に反論せずに耐えるコイズミ。
それだけで、小泉内閣の支持率はぴょんとあがった。
メディアによっては、北朝鮮を訪ねる前よりも10ポイント以上も伸びた。
そして、小泉さんに怒りをぶつけた家族会のもとへは、
1000を越える批判のメールと、「感謝もしないのか」という罵倒の声が寄せられた。
なぜかテレビで中継された小泉さんと家族会との会談。
それまで、あんな位置関係の映像を見た記憶はない。
映像に弱いぼくら。あっさり、小泉さんの手にハマった。
テレビがどう映し、それを見た国民がどう反応するか、
緻密に計算されているのに。
大体、拉致被害者の子どもたち5人は、
小泉さんが行かなくとも帰ってきたとされている。
あわよくば、プラス3人の家族8人、全員帰国。
それが演出できれば大成功。しかし、5人でもコイズミ人気はアップする。
小泉政権にはマスメディア対策を専門に行う人たちがいる。
北朝鮮を訪問する前、専門家はこんな風に分析したという。
「もし帰ってくる子どもたちが5人に留まっても、
子どもたちが両親と会う映像などの効果を考えれば、
国民は首相についてくる」
そして、その通りになった。
帰ってきた子どもたちは、どこか純朴そうで、控え目で、はにかんでいて。
コイズミ流テレポリティクスの脇役として、どんぴしゃだった。
両親との再会劇、そしてそれに続くあふれんばかりの「今日の子どもたち」報道。
テレビは視聴者のニーズに合う情報を流す、だからこそのマスコミ。
小泉さんは、行く必要のない北朝鮮へ出かけ、家族会の非難を敢えて浴び、
その姿をテレビカメラにさらすことで、国民の人気を取り戻した。
子どもたちが「少しずつ日本の生活に慣れてきてます」、
そんな映像に、拉致被害者の苦しみは、あっさり覆われてしまう。
危ない。
テレビは、事実のごく一部しか見せてはいない。
今、映し出されている映像は、現実のほんの一部でしかない。
にっこり話す拉致被害者から少しカメラを横に振れば、
混乱して涙を流す子どもたちがいるかもしれないのだ。
想像力までテレビに預けてはダメだ、絶対に。
(2004.06.21)
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