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和泉 WAN,WAN,コミュニティー
僕は太陽《サン》
前書き
「僕は 太陽」は
我が家の 3本足のサン君の 今までの歩みを
サン君の 置かれていた環境や
その時々の サン君の行動から 心理を想像し
サン君の 立場から 書いたものです。
命の 誕生、
命を 育む、
そして 共に生きる。
純真だからこそ 良い事も悪い事も
全てをまともに 受け止めてしまう。
それでも何が有っても 明るく 元気に たくましく
日々を送っている サン君の姿が
今、苦しい思いをしていたり、
悩んでいたり、迷っている人達の
お役にたてば・・・
と 書き綴っています。
今、NO11まで 書き終わっています。
少しずつ ブログの方に書いて いくつもりです。
写真が 入ればもっと良いのですが・・・
いつか 1冊の本に出来たらいいな。と 思っています。
僕 は 太 陽
《サン》
僕には
「お母さんの 優しいにおい
温かいまなざし、
オッパイを お腹いっぱいに飲んで
お母さんの 鼓動を聞きながら
安心して 眠る・・・」
なんて意味 全然理解が出来なかった。
何故なら 僕は 生まれてすぐに
人気の無い 草原に捨てられたから・・・
僕を 捨てた人は 僕に
「死ね!」
って 言葉では無く
行動で 叫んだのだ・・・
「僕は 生まれて来ては いけなかったの?・・・」
それでも 優しい人が
僕を見つけてくれて 病院へ運んでくれた。
僕が 初めて見た世界は 動物病院の中。
僕が 育ったのは 動物病院。
周りの人達は 皆、
「可哀そう・・・」
「こんなに 可愛いのに・・・」
って 優しくしてくれる。
とっても 嬉しい。
「でも・・・」
何かが 違う。
何かが 足りない。
心が スースーする。
何なんだろう?
何が 足りないんだろう?
誰か 教えて・・・
ある日、僕は 気が付いた。
僕は 仲間の様に
遠くまで 走り続ける事が 出来ない。
すぐに 疲れて ヘタってしまう。
僕は 仲間の様に
思いっきり ジャンプをする事が 出来ない。
どうすれば 地面を思いっきり蹴る事が出来るのか 解らない。
そして 知ってしまった。
僕は 僕の「命」と 引き換えに
右前足を 失ってしまっていた・・・
僕は 4本足で 歩いた事が 一度も無い。
だから 今までこれが 「当たり前」だと 思っていた。
でも・・・
違っていた・・・
いったい 僕は 何者なの?
何故 ここに僕は居るの?
僕は これから どうすれば いいの?
僕は どうなるの?
誰か 教えて・・・
僕は 車に乗せられて
病院から 人のいっぱい居る所へ
よく 連れて行ってもらった。
何処へ行っても 相変わらず皆は
僕を 優しく撫でてくれる。
でも ずーとは 側に居てくれない。
必ず 一人ぼっちで また病院に帰る。
少し 涼しくなって来た ある朝、
いつもより 長く車に乗っていた。
車から 降ろされた場所は
見たことも無い 景色、
知らない 臭いばかり。
一人の女の人が 僕を 抱上げてくれた。
僕には これから何が起こるのか
想像する事さえ 思いつかなかった。
僕を 病院から連れ出した人は
女の人に 僕の名前を
「サン」
と 伝え
僕を その場に置いて
車ごと 居なくなってしまった。
「エ! 何? 何?」
女の人の 横には
僕に似ている お姉ちゃん犬が 居た。
女の人が
「エコちゃん」
と 呼んでいた。
エコちゃんが 言った。
「たった今から サン君は 私達の家族よ!」
「何? 家族って 何なの?・・・」
それから 女の人とエコちゃんと一緒に
また車に乗って 違う場所へ行った。
エコちゃんが 言った。
「ここが お家よ。」
「家? 病院なの?」
僕には 解らない事ばかり。
ドキドキしながら 建物の中に入った。
「な~んだ。やっぱり 病院だ。
仲間がいっぱい 居るじゃないか。
でも、ちょっと違う。何だろう?
臭いだ!お薬の臭いが しないよ?」
エコちゃんに 言われた。
「だから 家だって言ってるでしょ!
サン君のお部屋は あそこよ。
いろいろ教えてあげるから ちゃんと覚えるのよ。
解った!」
女の人は 皆から
「お母さん」
と 呼ばれていた。
お母さんの部屋は 二階に有って
エコちゃんと ブー爺さんの部屋でも有った。
僕の部屋は お母さんの部屋の一番奥の 壁際に有った。
僕の部屋には 僕がずーと使っていたバスタオルが敷かれ
お気に入りの アヒルさんのぬいぐるみも有った。
それで 安心したのと
今日は長い間 車に揺られていたので
疲れたのか 眠くなってきた。
用意してくれた お水を飲み干し 部屋に飛び込むと
バスタオルに包まり すぐに 爆睡してしまった。
美味しそうな臭いで 目が覚めた。
そう言えば
「今日は 長い時間車に乗るから 車酔いしたら行けないからね。」
と 朝から 何も食べさせてもらっていない。
お腹が空いていたのと 眠たいのとで
ただ 夢中で食べて またすぐに 爆睡してしまった。
真っ暗い中、フッと 目が覚めた。
「ここは どこ?
僕のベッドは どこ?・・・
有った!」
翌朝、エコちゃんに言われた。
「初めてのお家で 夜 サン君が目を覚まして
淋しがらないように。
って お母さんが お布団に入れて
抱いて寝てくれていたのよ。
なのに サン君は ガバッと起き上がったかと思うと
サッサと自分の部屋に入って
知らん顔で 眠ってしまうんだもの。
お母さんも 私も 目が点になったわよ。」
「え!でも 僕、いつもあのバスタオルに包まって眠っていたから
あの バスタオルさえあれば どこでも平気だよ!
一番 安心するんだ。」
「サン君って 変わってる~」
「僕、変わってるの?」
「そうよ。私なんて お母さんの体のどこかに
くっついる時が 安心出来る時よ。
他の子達も そうよ。
お母さんに 撫でてもらったり、抱いてもらって居る時が
一番幸せよ。」
僕には 解らない?・・・
僕が 3本足になったのは 暑い8月の初め。
そして エコちゃんに初めて会ったのが 11月。
エコちゃんが いろいろと教えてくれるけど
僕には 解らない事ばかり。
それは 僕が 人で言えば まだ5歳位の
子供だからだと 思っていた。
僕は 足以外で 何処が仲間と 違うのだろう?
僕は ある日 酷い下痢をしてしまった。
それも ウンチをする時に
仲間の様にうまくバランスをとって 踏ん張れないから
中腰になってしまい 白い壁も お母さんのベッドも
僕の ウンチまみれに してしまった。
「怒られる~」
でも お母さんは 僕を
一度も 怒ったり 罰する事はなかった。
ただ
「お腹痛いね。つらいね。よしよし。
お母さんが付いているからね。大丈夫よ。」
って 汚れた僕の体を 優しく拭いてくれたり
病院へ 連れて行ってくれた。
お腹は痛いし、体はだるいし、最悪だったけど
なぜか 胸の中に フワッとした 不思議なものが有った。
「何なのだろう?」
お尻が ムズムズするよ。
下痢が治ると 今度はオシッコに 血が混じりだした。
「オシッコする時 痛いよ・・・」
病院で 検査すると
「尿道結石」
と 言われた。
僕みたいな子供がなるのは 珍しいとも 言われた。
「僕って やっぱり変なのかな?」
直すのに お薬と
決められたご飯を 決められた量しか
食べさせてもらえなくなった。
「育ち盛り、食べ盛り真っ最中の僕なのに・・・」
それでなくても 右前足が無いから
残っている左前足に 負担が掛かるからと
お腹いっぱいには 食べさせてもらえない。
「食べる事だけが 僕の唯一の楽しみなのに。」
お母さんは 容赦なく キッチリとしか くれない。
「お母さんは 以前に動物病院のスタッフをしていたから
こう言う事は 厳しいのよ。」
と エコちゃんが 教えてくれた。
「何か、モヤモヤ~、イライラするよ~」
エコちゃんから 一喝!
「サン君、自分の為でしょ。
我慢、我慢!」
尿道結石が治ると 僕は病気らしい病気はしなくなり
元気いっぱいに なった。
お母さんは 今はある会社の事務所で 仕事をしている。
僕が 初めて お母さんとエコちゃんに
会った場所が そうらしい。
家には 他にも仲間がいっぱい居るのに
僕と エコちゃんだけは 特別扱いで
毎日 お母さんに 事務所に連れて行ってもらっている。
事務所には 僕とエコちゃん専用の それぞれの部屋が有る。
そして エコちゃんは そこから
「犬の学校」
とやらに お迎えの車に乗って 出かけている。
「犬の学校って 何だろう?
エコちゃん、楽しそう。
僕も 行ってみたいな。」
会社の人達も 皆
僕やエコちゃんに 優しくしてくれる。
「結構 良いかも。」
「でも 何故、僕とエコちゃんだけ 特別なの?」
エコちゃんが 言った。
「私も 捨てられていたの。公園に・・・
優しい人も居たけれど 私を棒で叩いたり
石を投げつけてきた人も 居るわ。
いつも お腹をすかせていたし
安心して眠れる場所も無かったの。
飼い主さんと お家に帰っていく お友達を見送りながら
淋しさに 押しつぶされそうになった事も 数え切れないわ。
何故、私には 帰るお家が もう無いの?・・・
そんな時 お母さんが 抱きしめてくれたの。
今は とっても幸せよ。
サン君にも 解る日が 来るわよ。」
お母さんが 僕の事を知ったのは
ネットの 里親探しのコーナーだと 言っていた。
やっと目が開いたばかりなのに
3本足になったしまってた 僕の事が心配で
僕を見つけて 病院へ運んでくれた人と
ずーと メールのやりとりを していたんだって。
お母さんは 少しでも早く 僕を引き取りたかったんだけど
僕の命を助けてくれた 動物病院の先生が
「こちらでも 絶対にきとくな人が居るはずだ。
四国なんて 遠くにはやりたくない。
って お母さんの申し出を 断り続けていたんだって。
お母さんは
「では そちらで この子にとって良いご縁が有りましたら
宜しくお願いします。
もし 良いご縁が見つからなかった時の為に
私は この子の最後の 受け皿になります。」
そう 先生に伝えたんだって。
何組かの 家族が 僕を引き取りたいと 言って来たらしいけど
「可哀そう。可愛い。だけでは 犬は飼えない。
せっかく助かった命。幸せになって 欲しいんだ。」
って 一生懸命に 僕を幸せにしてくれる里親さんを
探してくれたんだけど なかなか見つからなくて・・・
僕の 心身の成長を考えると
「動物病院で 世話するのにも限界が有る。」
って 先生は 僕のアルバムと 一通の手紙を添えて
僕の幸せを お母さんに 託したんだって。
僕を お母さんの所に 連れて来てくれたのは
草原で 僕を見つけて 動物病院へ運んでくれた
心優しい お兄さん。
僕の為に 仕事を休んで
神戸から 愛媛まで 車を走らせてくれたんだ。
僕の
「サン」
と言う 名前は 3本足の
「3:サン」
と 太陽の様に いつも明るく 皆から愛される様にと
「SUN:サン」
僕の命を助けてくれた 動物病院の先生が
付けてくれた 名前だったんだ。
お母さんは 心優しい、正義の味方の
「アトム」
に したかったんだけど 「サン」の由来を聞いて
「一番ステキな 名前ね。」
って!
僕は いろんな人に守られ、愛されていたんだね。
でも その頃の僕には そんな事 ぜんぜん解らなかったよ。
お母さんが 僕の宝物として 大切にとっておいてくれている物。
僕が お母さんと初めて会った時にしていた 赤い小さな首輪。
お母さんが こっそりと教えてくれた。
裏に書かれている 先生から僕への メッセージを。
「さんちゃんが 幸せで いられますように。」
家には お母さん以外にも
「お父さん、お兄ちゃん」
って 呼ばれている人達が居る。
でも 僕を あまり撫でてくれたり、声はかけてはくれない。
仲間は 僕とエコちゃん以外は 皆
血統書付きの 純血種と呼ばれている 犬達ばかり。
「やっぱり 僕は
雑種で 3本足だから 嫌われてきるのかな?・・・」
僕は 少しずつ解ってきた。
「可愛い。可哀そう。」
って 言葉の意味が・・・
他所の犬だから 僕を哀れんで
優しくしてくれただけだったんだ。
僕みたいに 雑種で 何の価値もなく
おまけに3本足の 僕を
本気で 受け入れてくれる人なんて
ほとんど 居ないんだ。
「お母さんは どうなんだろう?
僕の事を どう思っているんだろう?」
「今まで 感じた事の無い 淋しさで 胸がチクチクするよ。」
「淋しいよ。
怖いよ。
誰でもいいから 僕を撫でて!
かまっていて!
僕を 見ていて!」
この家に来て 数週間がたった。
病気も しなくなった頃、
1階の仲間達に 僕を紹介してもらった。
皆、僕が2階で暮している事は
臭いで 解ってくれていた。
皆の仲に 放り込まれた僕は 困ってしまった。
「こんにちは。
僕、サンです。よろしく!」
皆が いっせいに 僕を匂いに来た。
Mダックスの ジェニー婆さん、吾空おじさん、ネネおばさん、
モエおばさん、メイちゃん、マルちゃん。
シェルティの パールちゃん。
「エコちゃん 助けて~」
「しっかりしなさい。
私も最初に その洗礼を受けたのよ。」
そして 皆は僕を 家族として 受け入れてくれた。
僕に 意地悪をする犬は 1頭も居ない。
外には コリーのウーおじさん、
グレートデンのアンディおじさんも 居た。
「僕の体の 何倍有るんだろう?」
皆、凄く優しい。
動物病院では 仲間は沢山居たけど
いつも 違う誰かだった。
夜には 僕は必ず 一人ぼっちになってしまっていた。
「家って、家族って
同じ仲間が いつも一緒に居られるんだね。
ウン! やっぱり その方が嬉しいな!」
皆、大好き!
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