New Worid

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伝説の始まり

 ビンスにとって1985年3月30日とはWWEの社運をかけた一世一代のイベント”レッスルマニア”に己の人生を賭けた大バクチだったのではないかと。レッスルマニアというネーミングの由来はハルク・ホーガンのハルカマニア=ハルク狂時代からきています。レッスルマニア=レスリング狂時代というわけですね。そしてレッスルマニアのコンセプトは”史上最大のレスリング・ショー”という単純明快なもので、それは今も変わってません。レッスルマニアの特徴は数多くの有名人が来場していたことですね。ロックシンガーのシンディ・ローパー、キーボード奏者リバラッチ、元ニューヨーク・ヤンキース監督ビリー・マーティン、元ボクシング世界ヘビー級王者モハメッド・アリなど豪華絢爛なメンバーがレッスルマニアに登場しました。記念すべきレッスルマニア初のメインイベント出場者に選ばれたのはハルク・ホーガンとかつて映画「ロッキー3」で共演した俳優ミスターT、セコンドには”スーパーフライ”ジミー・スヌーカ、対戦相手は”ラウディ”ロディ・パイパーと”ミスターワンダフル”ポール・オンドーフ、セコンドには”カウボーイ”ボブ・オートン(ランディ・オートンの父)が選ばれました。
 まずは第一試合にティト・サンタナVSジ・エクスキューショナー、第二試合にS・D・ジョーンズVSキングコング・バンディ、第三試合にリッキー・スティムボートVSマット・ボーン、第四試合にデビッド・サンマルチノVSブルータス・ビーフケーキ、第五試合はレッスルマニア最初のタイトルマッチとなるインターコンチネンタル王座戦で、王者グレッグ”ザ・ハマー”バレンタインVS挑戦者ジャンク・ヤード・ドッグ、第六試合は世界タッグ戦で、王者チームはバリー・ウインダム&マイク・ロトンドのUSエキスプレスVS挑戦者チームアイアン・シーク&ニコライ・ボルコフ、第七試合は15000ドル争奪ボディスラムマッチで、アンドレ・ザ・ジャイアントVSビッグ・ジョン・スタッド、第八試合は世界女子王座戦で、王者レイラニ・カイVSウェンディ・リヒター、そしてメインイベントという流れになっています。
 記念すべきレッスルマニア最初の試合となったサンタナVSエクスキューショナー。サンタナは元インターコンチネンタル王者でWWEではどちらかといえば中堅で活躍していたレスラーです。レッスルマニアにはプロレスを知らない観客も多数いましたから、サンタナのように基本に忠実なレスラーが最初に試合することは重要なことでした。サンタナは見事務めを果たしたといっていいでしょう。その後この年を含めて8年連続でレッスルマニアに出場していることを考えてもサンタナがいかにビンスやWWE首脳部に信頼されていたかが伺えます。だからこそ2004年にWWE殿堂入りとなったのでしょう。第二試合のジョーンズVSバンディはバンディの秒殺で圧勝しました。7秒という記録はレッスルマニア20まで最短記録として残されました。第三試合はスティムボートVSボーン。まだこの時点ではスティムボートの扱いは若手的な感じです。といってもWWE内での話しです。同世代のリック・フレアーはNWA世界王者として既に活躍していますが。WWE入りしたのが1984年。ホーガンという絶対的な存在がいましたからスティムボートが世界王座を獲得するというのは当時ではかなり難しい立場だったでしょう。実力的にはスティムボートのほうが上だったと思いますが。試合はスティムボートの快勝。スティムボートはその後”ザ・ドラゴン”という名称が加わります。ボーンは90年代に”ドインク・ザ・クラウン”というピエロキャラで小活躍します。第四試合デビッドVSビーフケーキははっきり言って親&友人の七光り対決で、試合もしょっぱかった!!(断)。お互いセンスがなかったのだから当然か…。
 さてレッスルマニア初のタイトルマッチとなったのがバレンタインVSドッグのインターコンチネンタル王座戦。バレンタインはアントニオ猪木の最初のライバルだったジョニー・バレンタインの息子でWWE以前はリック・フレアーのパートナーでありライバルだったレスラーで名脇役。レッスルマニアを初めとする4大大会(サバイバーシリーズ、サマースラム、ロイヤルランブル)に必ずバレンタインの名前があり、それだけでもバレンタインというレスラーの技量が伺えます。ドッグは80年代のアメプロでもっとも人気のあった黒人レスラーでした。実を言うと今のWWEというかプロレス界では信じられない話ですが第一~四試合まで全く入場曲が流れずに普通に入場していました。入場曲があったのはドッグとUSエキスプレス、女子のリヒター、そしてメインだけでした。記憶では入場曲を最初に使用していたのは1950年代で活躍していたゴージャス・ジョージというレスラーでした。のちにランディ・サベージも使用していた”威風堂々”という曲でした。この頃はまだ全体的に入場曲は普及してなかったということでしょう。そんななかでドッグに入場曲があったのはWWEで高い人気があったという証拠でしょう。もっとも試合はバレンタインが王座防衛しましたが。まあレスラーとしての技量はバレンタインのほうが上手でしたから。
 続く世界タッグ戦注目は挑戦者チームのシーク&ボルコフでしょう。入場していきなりマイクをとったボルコフはソ連国歌を歌い始めます。観客からブーイングどころか物が飛んできます。時は1985年。ソ連はあのゴルバチョフが出現してペレストロイカを始めたばかりでしたがまだ米ソ冷戦が終わっていませんでしたからまだまだソ連に対する反感を抱いている人は大勢いたということです。一方王者チームのUSエキスプレスの2人、ウインダムとロトンドのですが当時の将来有望な若手同士の2人という印象です。特にウインダムはこの4人の中でセンスは抜群でしたから。オリジナルメンバーではありませんがフォー・ホースメン(リック・フレアー、アーン・アンダーソン、タリー・ブランチャード)のベストメンバーの1人と謳われるほど成長しました。ロトンドはその後なかなか大成できませんでしたがIRS(アーウイン・アール・シャイスター)というキャラでテッド・デビアスとの”マネー・イン・コーポレーション”=”マネー・インク”として活躍しました。試合は挑戦者チームが勝ちレッスルマニア初の王座移動ということになりました。まあヒールチームにはフレッド・ブラッシーがマネージャーとしてついていたので王者チームはまんまと出し抜かれたという内容でした。さてアンドレVSスタッドはボディスラムマッチというネーミングどおり先に相手をボディスラムを成功させたほうが勝ちというルールです。アンドレはもちろんですが、スタッドも2メートルを超える巨人レスラーでしたから迫力十分の試合となりましたが結局アンドレがボディスラムに成功して15000ドルをゲットしました。もっともボビー・ヒーナンが横からひったくって逃げましたが。
 大会に花を添える意味で組まれた女子王座戦ですが今でいえばディーバという名称がつきますが、無論当時そんな言葉は存在しませんでした。レッスルマニアには有名人が集結したといいましたが、挑戦者であるリヒターのセコンドにシンディ・ローパーがついて入場曲もローパーの曲(ガールズ・ジャスト・ワナ・ハブ・ファン)が流れたのでさすがに盛り上がりました。そもそもレッスルマニアが企画されたきっかけとなったのがローパーと”キャプテン”ルー・アルバーノとの偶然の出会いでした。飛行機内で偶然知り合った2人ですがローパーがアルバーノに興味を抱き、当時のローパーのマネージャーだったデビッド・ウォルフがビンスにローパーとアルバーノの抗争を持ちかけこれがヒットしたためレッスルマニアを思いついたということになっています。さてローパー効果なのか試合はリヒターが勝ち王座を獲得しました。のちにローパーがカミングアウトしてますが彼女自身はプロレスにそれほど強い興味を示していたわけでもなくマネージャーのウォルフのほうが関心があったというのが真相みたいです。それでもプロレスとレスラーに対しては敬意を持っていたそうです。
 そしていよいよメインイベント、ホーガン&ミスターTVSパイパー&オンドーフ。よく考えたら世界王座戦がなかったのはこの大会だけなんですよね。意外というか。まあこの第一回大会に限ればビンスが唱えた”スポーツ・エンターテイメント”というジャンルを確立させるために必要なマッチメイクだったということでしょう。とにかくこの試合での有名人の役割ですが、リングアナにマーティン、タイムキーパーにリバラッチ、サブレフェリーにアリ。で両チームが入場しますが、パイパーチームはパイパーのトレードマークであるバグパイプのメロディが流れます。一方ホーガンチームはあのロッキー3の曲である”アイ・オブ・ザ・タイガー”が流れます。これも意外というか、”リアル・アメリカン”じゃなかったんですよねぇ。さて、試合ですがミスターTは一応レスラーとしての練習を積んだとはいえ所詮素人です。当然それ以外の3人とセコンドのオートンとスヌーカが盛り上げるという展開になります。セコンドの2人の役割は早い話観客の注意をミスターTから逸らすための処置だったというわけです。実際ミスターTを除いてみんな頑張ってましたし、アリも期待に応えてパイパーチームにパンチ攻撃をしましたし。最後はオートンのギプス攻撃がオーンドーフに誤爆しホーガンチームが勝利。こうして見事レッスルマニアを成功させました。
 ”史上最大のレスリング・ショー”を成功させたビンスは翌年もレッスルマニア2を開催させます。



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