New Worid

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王者不在

 1988年3月27日ニュージャージー州アトランティック・シティーのトランプ・プラザにてレッスルマニア4が開催されました。トランプ・プラザはのちにレッスルマニア23でビンス・マクマホンと髪の毛を懸けて対戦…代理人を立ててですが…しますドナルド・トランプが経営するホテルやカジノなどがある会場です。前年9万人以上の観客動員数を集めたときと比較すると観客数は大幅に減りましたが、その代わりPPVが大いに普及してきましたので自宅のカウチでPPVを観戦する人が増えてきました。
 今回のレッスルマニアの特徴は世界王者決定トーナメントでしょう。これは88年2月5日でのハルク・ホーガンVSアンドレ・ザ・ジャイアントのWWE世界王座戦でアンドレが勝利し王座を獲得しましたが王座をテッド・デビアスに譲渡するという暴挙を犯し王座が剥奪され空位という事態になったのが事の始まりです。そこで今回のレッスルマニア4で決定トーナメントを行なうこととなりました。
 出場するレスラーはハルク・ホーガン、アンドレ・ザ・ジャイアント、”ミリオンダラーマン”テッド・デビアス、”マッチョマン”ランディ・サベージ、リッキー”ザ・ドラゴン”スティムボート、グレッグ”ザ・ハマー”バレンタイン、ハクソー・ジム・ドゥガン、ディノ・ブラボー、ドン・ムラコ、ジェイク”ザ・スネイク”ロバーツ、”ラビシング”リック・ルード、ブッチ・リード、バンバン・ビガロ、ワンマン・ギャングの14人。ホーガンとアンドレがシード…といっても2回戦で2人は対戦しますが。対戦カードですが、デビアスVSドゥガン、ブラボーVSムラコ、スティムボートVSバレンタイン、サベージVSリード、ビガロVSギャング、ロバーツVSルード。
 それ以外の試合ですが、20人参加のバトルロイヤルがあります。参加レスラーですが、サム・ヒューストン、シカ、ジム”アンビル”ナイドハート、ブライアン・ブレアー、レイモンド・ルージョー、”ジャンピング”ジム・ブランゼル、バッドニュース・ブラウン、ヒルビリー・ジム、アウトロー・ロン・バス、ジョージ・スチール、ジム・パワーズ、ダニー・デービス、ニコライ・ボルコフ、ボリス・ズーコフ、ケン・パテラ、ジャック・ルージョー、ハーリー・レイス、ポール・ローマ、ジャンクヤード・ドッグ、”ヒットマン”ブレット・ハート。続いてホンキー・トンクマンVSブルータス”ザ・バーバー”ビーフケーキのインターコンチネンタル王座戦。ブリティッシュ・ブルドッグス(ダイナマイト・キッド&デイビーボーイ・スミス)&ココ・B・ウェアVSジ・アイランダース&ボビー”ザ・ブレイン”ヒーナン。アルティメット・ウォリアーVSハーキュリース。ストライク・フォース(リック・マーテル&ティト・サンタナ)VSザ・デモリッション(アックス&スマッシュ)のWWE世界タッグ王座戦。
 まずは20人参加バトルロイヤルから。ここでは初登場のレスラーを紹介します。サム・ヒューストンはあのジェイク・ロバーツの弟で、勿論父親はグリズリー・スミス。主にクロケット・プロ(NWA)で活動してましたが、レスラーとしてのセンスは兄に遠く及ばないというのが正直なところですか。シカはワイルド・サモアンズの血族の1人です。バッドニュース・ブラウンは80年代の新日本プロレスの常連外国人レスラーの1人でした。バッドニュース・アレンという名前のほうがしっくりいきますが。アウトロー・ロン・バスは南部あたりで活動していましたが、個人的にはスタン・ハンセンのパートナーの1人という印象が強いです。ジム・パワーズは当時では珍しいWWE生粋のレスラーでしたがそれほど活躍はしなかったような。ボリス・ズーコフはAWAで活躍していたソ連系レスラーの1人でこの頃はニコライ・ボルコフとタッグを組んでいました。ケン・パテラは重量挙げ選手で1972年ミュンヘン・オリンピックに参加し、その後レスラーに転向してインターコンチネンタル王座を獲得したことのあるほどのレスラーでしたが、1984年警官と乱闘騒ぎを起こして刑務所に服役するという不祥事を起こしました。ちなみに一緒にいたマサ斉藤も服役することになりましたが、これはパテラのとばっちりを受けてということでかなり気の毒な思いをうけましたね。ポール・ローマもパワーズ同様見た目が良くて中身は駄目なレスラーの1人ですね。しかし幸か不幸かのちにフォー・ホースメンのメンバーに加わることになります。かなり不評でしたが。
 バトルロイヤルはブラウンが優勝しました。ただこれをきっかけにブレットというかハート・ファンデーションがベビーターンすることになります。インターコンチネンタル王座戦ですが、ホンキーはホントいい味だしてます。全く強さを感じさせない(笑)レスラーですが、実は1年2ヶ月王座を保持していましたからしぶとさではかなりのものだったのかも。ホンキーのコミカルさでこの試合は成立したのかな、ビーフケーキはセンス悪いから。ブルドッグスはどんどん扱いが悪くなっているような…やはりキッドの体調が悪くなってきてるのが原因だろうか。
 そして遂に登場しました、アルティメット・ウォリアー。おそらくビンスのなかではウォリアーをホーガンの後釜として考えていたのでしょう。でもウォリアーはホーガンほどカリスマ性ないからな…まあそれでもこの頃は人気はかなりありました。実力とセンスが全く追いつかなかったというべきか。WWE世界タッグ王座戦ですがこれはなかなかいい試合でした。80年代WWEを代表するタッグチームのデモリッションはNWA,AWAで活躍していたロード・ウォリアーズのコピー的存在のチームでしたが、見た目と裏腹に結構インサイドワークが巧みなチームでしたね。チームリーダーであるアックス、日本ではマスクド・スーパースターという名前でよく新日本に来ていたので馴染みがあります。スマッシュはNWAではクラッシャー・クルシショフという名前でソ連系レスラーとして活躍していました。ストライク・フォースの2人、マーテルとサンタナは実力者同士でしたが小奇麗すぎて好きになれなかったですね。だからというかデモリッションを支持したくなったというか。
 さてトーナメントですが、まずはデビアスVSドゥーガンから。80年代WWEでもおそらく最高のヒールであるデビアス初登場です。次期NWA世界王者候補の1人と謳われ、全日本プロレスではスタン・ハンセンの名パートナーとして活躍したほどの実力者で、WWE入りと同時に”ミリオンダラーマン”というギミックを与えられました。私の想像ですがビンスがいちばんやりたかったキャラかも。イメージ的に近いし。一方ドゥーガンも今回初登場でルイジアナ地区で活躍していたレスラーで、実はデビアスとはライバル関係でした。ピークはとっくに過ぎているとはいえ未だに現役でたまにロウに登場しているのには恐れ入ります。とはいえデビアスのほうに勢いがあったのでこの試合はデビアスの快勝でした。
 ブラボーVSムラコですが、タイプが似ているせいかやや単調な内容の試合でムラコがどうにか勝ちました。ちなみにムラコのセコンドには”スーパースター”ビリー・グラハムが付いていました。続いてスティムボートVSバレンタイン。共にリック・フレアーのライバルという共通点のある2人で予想通り好試合でした。しかしヒールの強みか、バレンタインが巧みにレフェリーの隙を突いてスティムボートのタイツを掴んでのフォール勝ち。サベージVSリードですが、勢いの差がモロに感じた試合でした。レッスルマニア3でのスティムボート戦以降人気が急上昇しているサベージの貫禄勝ちとなりました。共にレッスルマニア初出場となったビガロVSギャング。レッスルマニア11でのローレンス・テイラー戦が印象に残っているビガロですがレッスルマニア初登場は今回というのは結構意外です。とはいえこのあとWWEを退団しますが。ギャングはというと世代的にはサベージ、スティムボートらと同世代のレスラーでビガロほどではないにせよ巨漢のわりには動けるタイプです。ただ試合はそれほど盛り上がりませんでした。ギャングのリングアウト勝ちでは致し方ないですが。ロバーツVSルードですが、これは1回戦のなかではいい試合でした。ルードは今回初登場。ルードといえば腰をクネクネとグラインドするパフォーマンスが有名です。このムーブはのちにバル・ビーナスに受け継がれます。試合は時間切れ引き分け。
 2回戦最初の試合はレッスルマニア3の再戦となったホーガンVSアンドレ。ただ盛り上がり自体は前回には及びませんでした。アンドレとしては自分が優勝するよりもデビアスをサポートすることを優先していましたからホーガンを勝たせないことが第一でした。結局その目論見が当たり両者失格。ホーガンがここで消えるのは意外でしたが…。デビアスVSムラコはデビアスのインサイドワークの巧みさが光った試合でした。デビアス快勝でした。サベージVSバレンタインはこれも両者が試合巧者でしたので好試合に。ただライバルだったホーガンが消えたことでサベージのモチベーションが上がったせいかサベージが見事に勝ちました。ちなみにギャングは不戦勝。準決勝はデビアスが不戦勝で労せず決勝へ。サベージVSギャングはサベージが優勢になったところでギャングが暴走し反則負け。サベージが決勝へ進出しましたが3回戦ってるだけに体力の消耗が気になるところです。
 遂に始まった決勝戦。サベージVSデビアスですが当然デビアス陣営にはアンドレがセコンドに。対するサベージはエリザベス。これでは不利とみたか、サベージがエリザベスに指示をして一旦帰ります。そしてエリザベスが再び登場すると同時にホーガンも登場。これでお互いの力関係が五分となりました。とはいえ試合数が多かったサベージが不利なのには変わらず。そしてアンドレがちょっかいをかけてきます。しかしここでホーガンが動きます。レフェリーがアンドレに注意をしている隙にデビアスにイス攻撃。このビッグチャンスをサベージが見事に掴みダイビングエルボードロップを決めて勝利。新WWE世界王者となりました。エリザベスと喜びを分かち合うサベージを祝福するホーガン。これがレッスルマニア5までの伏線になるとは想像できませんでしたが。



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