lovesick

lovesick

PR

カレンダー

コメント新着

windsurf4179 @ Re:近況(05/08) お久しぶりです、福岡の加藤です。 何年振…
ぽわぽわ0127 @ Re:近況(05/08) ひろさん! よかった♪たまには近況知らせ…
シゲタロス @ Re:近況(05/08) なんだか凄く久しぶり!! 帰ってきてくれて…
t-nik0618 @ Re:近況(05/08) 良かった、仕事もできるようになったので…
ひかるですが…何か!? @ Re:近況(05/08) ひろ。さん、はじめまして。 こちらでコ…

お気に入りブログ

空想世界と少しの現実 緋褪色さん
きっくまーくのくだ… きっくまーくさん
無限の扉 yuto.さん
room47 shingo4711さん
ココロのまま るーじゅら。さん
     . ☆Yuri☆さん
不況に負けずに肝っ… かわちゃん4729さん
テレビでお馴染みの… 京師美佳さん
食いしん坊のHappyLi… ぽわぽわ0127さん
★★★はるちん garden★… はるちん0707さん
2008.02.02
XML
カテゴリ: lovesick
ローブを着て部屋に戻ると、入れ替わりに謙吾が浴室へ行き、そして、シャワーから出てきたときには、謙吾は、もう覚悟を決めていたように見えました。ゆるぎない足取りで私に近づき、目をしっかりと見てから抱きよせ、キスをしました。謙吾はそのまま私を、ベッドルームに連れて行き、、、そして、押し倒された時に、震えていたのは私の方でした。謙吾はそんな私の耳元で、
「初めてなんだろ?」
私は、肯きました。謙吾は、私を抱く力を強くし、
「優しくするつもりだけど、、、痛いかもしれない。でも、、もう、俺、、、止まらないよ」
耳元で吐息混じりに囁き、首筋に口づけると、謙吾は、私のローブの紐をほどきました。

現実に私を抱いたのは、謙吾だったけれど、私が抱かれたのは悟でした。謙吾に優しく抱かれ、確かに快感を覚えながら、それでも、声が出ないのをいいことに、私の唇は何度も悟の名前を呼んでいました。すでに押しも押されぬスターとなっていた、女の子なら誰でもあこがれるはずの謙吾に抱かれながら、私は、もうこの世にいもしない悟のことだけを考え、悟の指の感触を思い出し、その思いを謙吾の指に重ね、カンジていました。
謙吾は私の心の中に、多分、気づいていたはずです。私を抱くときはいつも、部屋を薄闇にし、最中に声を発しませんでした。私が悟のことを思いやすいように。そんなにまで、、、どうしようもなく優しかった謙吾。

私が求める度に、忙しいスケジュールの合間を縫って、何度も何度も、謙吾は私のためにホテルをとり、私を抱いてくれました。そんな謙吾は、私を何度も抱きながら、一度も愛してると口にすることもありませんでした。ただ、私を優しく、時には激しく抱きました。

そんなことを繰り返していたある日、終わった後で、私は突然泣いてました。自分でも、理解できない涙でした。悟が死んでから、死んだように生きていた自分を思いました。愛してもいない相手に体をゆだねている自分を思いました。乾ききって干からびていた心に、涙がどんどん染み込んでいきました。謙吾は、そんな私をずっと、優しく抱いてくれていました。
その日、私を車で家の前まで送り、降ろすとき、謙吾は、微笑んで、
「元気でな、楓」
とだけいい、帰っていきました。私が何も言わないのに、その日で、その涙で終わりだということを謙吾は知っていました。愛してる、と一度も言わずに、、、そう、言わせてあげることさえできずに、謙吾との無理な関係は終わりました。

あんなことするべきじゃなかった。謙吾の言うように、私は間違っていました。私は最初からわかっていたはずでした。彼の言うように、時間をかけて、彼を愛し、愛され、ゆっくりとステップを踏んでいけたら、お互いにもっと幸せになれたはずでした。相手は謙吾だもの、できないことではなかったのです。なんであんなに急いだんだろう。
多分、、きっと、、悟と過ごした日々に、そして悟がいない現実に、置き去りにされるような恐怖が私を包んでいたからかもしれません。ただ、私はもっと強くなれるはずでした。もっと気高くあるべきでした。悟に愛されて生きてきた自分に、もっと、自信を、誇りをもつべきでした。でも、できませんでした。ただ、現実から目をそらしたかった。与えられた試練に耐え、強くなることよりも、さらに自分を貶め、どん底に突き落とすことを選んだのです。
そんな何もかも、全ては弱い私の責任でした。
悠斗に、何から、どうやって話すことができるでしょう?謙吾とそんな理由で体の関係を持ち、謙吾と、自分自身、そして、悟が私にくれた愛に傷をつけた。そして、この話をすることで、悠斗をも傷つけようとしている。私は自分が自分であることが、とても恥ずかしく思えました。
確かにあの時、後悔なんてしてもかまわないと思いました。そして、確かに今、私は後悔していました。悔やんでも悔やみきれない後悔。過去の私が、今の私に課した重荷。私は、今、これから、愛し合うことができたはずの悠斗を失おうとしている。私は、謙吾につけた傷と引き換えに、誰かに愛される資格を失ったんだ、そう、それは引き受けるべき代償なんだ、と思い始めていました。

にほんブログ村 小説ブログへ にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説へ  ← 1日1クリックいただけると嬉しいです。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2008.02.02 08:17:03
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: