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2008.03.13
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カテゴリ: lovesick
私は悠斗が黙ってくれたのを見て、言いました。

「悠斗、愛してる」

そう、声に出して。

悠斗は、一瞬、びくりと体を震わせ、そして、ゆっくりと口を開きました。信じられない、という表情で、
「か、え、、で・・?い、、今、、、?」
愕然とつぶやく悠斗。私は、いつものように、微笑んで頷きました。悠斗は、口を開けて、言葉を捜しているようでしたが、見つからないみたいでした。まるで、声がでなかった時の私のように。私は、そんな悠斗をいたわるように、薄く微笑んだまま、続けました。
「式の日。悠斗が、もう会わないって言って帰った後、家で泣いたの。哀しくて寂しくて辛くて辛くてずっとずっと泣いてたの。気がついたら、、いつの間にか、大声を上げて泣いてたわ。」
悠斗が私を、目を細めて見ました。
「悟が死んだ時に声を失って、、悠斗を失って声が戻った。私って、単純だよね?」
悠斗は、呆然としたままでした。私は、もう一度ゆっくりと、
「悠斗、愛してる」
と言いました。悠斗はやっと口を開き、
「楓、、だ、だって、謙吾は?」
私は、小さく息をついてから、
「謙吾のプロポーズなら、、断ったわ」


川原で私が指輪を差し出すと、謙吾は、ため息をついて、それを受け取り、
「分かったよ」
と言いました。
「ごめんね、謙吾」
と私の声を聞いて、謙吾は驚いた顔になりました。フジシマくんよりは少し動揺し、悠斗よりは断然冷静に、口を開いた謙吾。
「楓、、声・・・?」
私は頷きました。謙吾は嬉しそうに微笑んで、それ以上声のことは何も言わず、
「謝る必要なんてないだろ?俺が聞きたかったのは、イエスか、ノーだけだよ。できれば、、、イエスだったけど。。結局、楓には、一度も愛してもらえなかったな。」
とさばさばした様子で言いました。私は、申し訳ない気持ちに包まれながら、
「なんで、私、、謙吾を愛せないのかな。。こんなに大好きなのに」
謙吾は、私をいたわるような眼になり、
「それって、悟のせいかもよ?」
「悟?」
「ああ、あいつ、なんか謙吾だけには絶対渡さないって、いっつも呪いのように言ってたじゃん」
「あはは、呪いって。」
私は、悟を思いました。
「そうね。悟がいたときから、、謙吾を愛しちゃいけないっていうブレーキを、いつもかけるくせがついちゃったのかも」
「そうなんだよ、きっと。ったく、悟のせいで、俺は」
謙吾は微笑んだままそう言い、でも、ふっと真面目な顔になり、
「でも、今だからいうけど、、一度だけ、、悟に、『俺に何かあったら、楓を』、って言われたことがあったよ」
私は驚きました。
「悟が、、そんなこと・・・?」
「ああ。悟が死ぬ、少し前のことだったよ。俺は、らしくないこと言うから、びっくりしたけど、『何言ってんだよ、お前に何かなくたって、今でもずっと狙ってる』、って言ってやったら、笑ってごまかしちまったんだ。ただ、、あれは、、もう、冴子さんと会った後だったはずだから、本気で言ってたのかも知れないな。」
「悟。。。」
泣き出しそうな私に、
「悟、、あいつ、バカだよ。楓をこんなに悲しませて。」
そういって、黙って川を見つめました。悟のこと、思ってるんだよね。それでも、、悟、悟が生きていてくれたら。。って。私と同じように。
「ねえ、謙吾、謙吾は、こんな私のこと、ずっと愛してくれた。私、謙吾の愛情の大きさを知れば知るほど、、だからこそ、、愛じゃないのに、そばにはいられない、と思ったの」
謙吾は、こちらを見ました。
「謙吾だって、嫌でしょう、私が、謙吾を愛してないなら?」
「・・・確かに、あの時みたいな思いは、、2度としたくないな。他の誰かを想って、、心が俺にない楓を抱くくらいなら、一人でするほうがよっぽどマシだよ」
と言い笑いました。私が、
「ごめんね」
と、俯くと、
「謝んなくていいんだって。ただ、、」
と、謙吾は私を抱き寄せ、
「1度だけ言わせてくれるかな?」
と言って、抱きしめる力を強くしてから、
「・・・愛してるよ、楓」
と切ない声で言う謙吾。私はその重みと申し訳なさに涙が流れました。
「泣くなって。いいんだよこれで。ただ、俺、一度、ちゃんと楓に気持ち伝えないと、先に進めそうになかったから。仕方ないよ。俺たちはそういう運命だったんだ。俺は、楓に、キスも、エッチも、プロポーズも全部した。もう、思い残すこと、、ないよ」
といたずらっぽく微笑んで言いました。
「今度こそ、楓をあきらめるよ・・。でも、ずっと見守ってるから。」
「ありがと。。謙吾」
謙吾は、しばらく私を抱いていましたが、そっと離れ、
「次は悠斗に会いに行くんだろ?」
と聞きました。私は頷きました。うん。もう、遅いけど。でも、気持ちは伝えておきたいんだ。。
「今日なら会えるはずだ。俺が送るよ」
謙吾の言葉に甘えることにしました。


悠斗は驚いた顔で、
「断った、、って、なんで・・?」
「なんで・・・?なんでって、私が愛してるのは悠斗だから」
私は続けました。
「今になって、、、もう遅いのよくわかってる。恋人・・だっているんでしょ?でも、私、、1度も、、気持ち伝えられなかったから。悠斗はあんなに愛してるっていってくれたのに。。。」
悠斗は、また目を細めて私を見ました。
「今日、焼きあがったものを見て、私、やっぱり、自分をごまかせないって分かったわ。・・私、悠斗にはとても感謝してる。悟との過去から私を引き上げてくれたこと。たくさんたくさん愛してくれたこと。・・そして、、」
私は、少し無理に笑って続けました。
「そして、私に別れを告げることで、、私に強さをくれたこと。」
「つ、よさ・・・?」
「そう。私、これまで誰かに愛してもらうのを、守ってもらうのを、ただ待っていただけだった。でも、今は、自分から誰かを好きになりたいと思ってる。自分から愛を伝えたいって思ってる。勇気はいるけど、新鮮な気分。その勇気、最初は、、悠斗、あなたに使うわ。はじめての自分からの告白は、受け入れられないって分かってても。振られるって分かってても。私ちゃんと1人で立てる強さを、悠斗にもらったから。だから、先に謙吾に連絡した。プロポーズ断って、ちゃんとひとりになってから、悠斗に伝えたかったから。」
私は悠斗を見上げて言いました。
「だから、言わせて。悠斗、愛してる、愛してる、愛してる。」
必死で気持ちを言葉にしました。声が出るようになって、悠斗に、、声にして伝えずにはいられなかった言葉。私の声で最初に聞かせたかった言葉。悠斗、愛してる。
予想通り、悠斗は何も言ってくれませんでした。私、困らせてるよね、、ごめんね、悠斗。
「ねえ、悠斗、頬に一度だけ、、キスしてもいい?さよならのキス・・・、あの日の、、悠斗の真似、、だよ」
私は、答えを待たず、目を閉じ、背伸びをして、悠斗の頬ににそっとキスしました。
抱きしめて欲しい。でも、、、悠斗の手は動かない。。。
仕方ないよね。私は遅すぎたんだから。。
私は、目を閉じたまま、しっかりと自分自身を立て直し、ゆっくりと目を上げ、悠斗の瞳を覗きました。
「ありがとう、悠斗、私、悠斗に愛してもらって、幸せだった。辛い目にあわせるだけだったこと、、ごめんなさい。これで、、忘れるから。ごめんね、呼び出したりして。ちゃんと1人で帰れるから。。。さよなら、悠斗」
私は、、悠斗に背を向けて、歩き出しました。


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最終更新日  2008.03.13 00:46:40
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