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2008.05.22
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カテゴリ: let me sleep beside you
楓のマンションは、とても広かった。しかも、ここに1人暮らしらしい。広いキッチンに並んで、一緒に料理を作る。あまりの手際のよさに聞いてみれば、楓も、私と同じで、お母さんを早く亡くしたそうで、家政婦さんもいるけれど、家事は好きで得意だそうだ。(お母さんを亡くしたこと、後になってから、私たちには、不思議な縁があったことを知ることになるけれど、その時は、まだそんなこと知りもしない私たちだった。)

ケースケは、部屋の隅に置かれたアコギを見つけ、今度、悠斗くんがギターを弾く役をするから練習中だって言うのを聞いて、教えてあげていた。まだ、弾けるんだな~って思う。ケースケがギターを持つ姿を見るのは、本当に久しぶりだった。

そして、約束どおり、楓の作品もいくつか見せてもらえた。作品といっても、飾ってあるのではなく、普通に食器棚に入り、使われているから、料理を盛り付ける時に順番に見ることができた。陶芸のことを何も知らない私にだってその才能が伝わってくる。さっきのおじいさんのも素敵だったけれど、歳が近いからか、楓の作品の方が、私にはとても響いた。
「素敵だね~、どれも」
「ありがと~」
と嬉しそうに言う楓。
「触れてるだけで、すごく、貴重な体験してる気がする。」
「そんな大げさな」
と楓は笑った。

食事中は、ケースケと悠斗くんの今のドラマの話を聞く。ケースケはあまり私に仕事の話しないから、とっても興味深かった。実は、結構真剣に仕事してるんだな~って分かったし、あの原田好司の意外な性格も教えてもらったりして。

今日はケースケと一緒だから、私も安心して飲む。眠くなっても大丈夫だもんね。
楓も結構好きみたいで、よく飲んだ。
ケースケも悠斗くんも呆れ顔だったけど、ま、たまにはいいよね?

食後、後片付けは悠斗くんとケースケにまかせて、私は、飾り棚に置かれたフォトフレームを眺める。悠斗くんと楓の幸せそうな写真が何枚も。うちには、ないな~。。。ていうか、ケースケと写真撮るような機会ほとんどないもんな~。ケースケはしょっちゅう私を写メっているけど。。今度ちゃんと一緒に写真撮ろう、うん。と思う。
そして、他にもたくさんある写真の中の1枚に目をひかれる。男の人が1人で写っているセピアの写真。二枚目な人ではないけれど、とても、やさしげな表情。誰かに似てる。。誰?思い出せそうで思い出せない。そんな気持ちで、ずっと観ていると、いつのまにか、楓がそばにきていた。振り返ると、にっこり笑って、
「ねえ、ミリ。サンルームで星、見ない?」
「星?」
「うん」
ワインを片手に、2人でサンルームに出る。ほんとだ、星がとても綺麗。
「うわ~、素敵~。とってもキレイ~」
私がそういうと、楓は、にっこり笑って、
「でしょ~?私、ここが気に入って、この部屋に決めたの」
「そうなんだ。実家はどこ?」
「S市」
「ちょっと離れてるんだ。」
「うん。仕事をする窯はS市にあるから、月に半分くらいは、向こうにいるんだけど」
「へ~。じゃあ、なんで、わざわざ、こんな遠いとこに?。。。って、色々聞きすぎ?私」
久々の酔いも手伝って、少し自分が図々しくなってるのが分かる。楓は優しく首を振って、
「ううん。何でも聞いて。なんかね~、実は当時、私、大好きだった恋人が死んじゃってね、で、街を離れたかったんだ」
恋人、、が、死んだ?私の動きが止まる。一気に酔いも覚める。そ、うなんだ。。・・・楓も?私が深刻な顔をしたからか、楓が申し訳なさそうに言う。
「あ、ごめん。重い、、よね?この話」
私は慌てて首を振る。
「ううん、ううん。私が黙ったのは、何もそういう意味じゃなくて。私も、」
楓が真剣な目で私を見る。
「私も、2年前、恋人が死んじゃったの。だから」
楓は、一瞬はっとして、それから、いたわるような目で私を見て、
「そうだったんだ。ごめんね、辛いこと言わせちゃったね?」
「ううん、私の方こそ。」

2人で黙って空を見上げる。
そうか、あの写真は、きっとその彼なんだ。と、同時に、突然思い出す。
似てるのは、ヒロト。
顔ではなく、見守ってくれるような優しい表情が。
何もかもを受け止めてくれるあの瞳が。
久しぶりに、強くヒロトを思う。
いつも優しかったヒロト。その優しい頬笑み。
涙が出そうになる。だけど所かまわず泣くほどの衝動では、いつからか、もう、なくなっている。
そのことを喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか、、多分、両方なんだろう。

「楓、もう少し聞いてもいい?」
「なに?」
イノセントな微笑で、私の目を覗く楓。
「あの、セピアの写真の人、、なんでしょ?彼って。」
楓は一瞬思い出すような目になってから、
「そう、悟っていうの。」
「とっても優しそうな人。大切にされてたんだね」
少し遠い目になる楓。
「そうね。大切にされてた。ミリもでしょ?その亡くなった彼に」
なんだか、楓の優しい言い方に、もっと泣きそうになる。うなずくのが精一杯。そんな私にいたわるような目をくれる楓。
「・・・ケースケは、彼の弟なの。だから、私、、、」
楓は少し驚いたようだったけれど、納得したように
「・・そっか、だから、ケースケが、あんなにあんなに美莉のこと大切に思ってくれてても、ミリだって、ケースケのことそんなに好きでも、まだ、始められないんだね。」
といってくれる。
「それに、ただでさえ、、、恋人亡くしたら、次は、怖いもん、ね。。私もね、ほんと、悟といた頃は怖いもの知らずだった。、、ていうより、怖いものを知らずにいられるように、守ってもらってたんだと思う。でも、悟がいなくなって、どうしたらいいのか、、分かんなくなって。。とても大切な人がいるっていう幸せの中で、その人を失う怖さを知ってしまったから、、」
「それでも、楓は、悠斗と始められたんだよね・・・?」
同い年のはずの楓は、まるで姉のように優しく私を見て、
「うん。そうね。。」
私は、楓の言葉の続きを待った。
「もちろん、簡単じゃなかった。また失うかもしれないって思うと、始めるのが、とても怖くて。。他にもたくさん理由があって、自分が悠斗にはふさわしくないって思ったりもしたし。。だけど、、、最後には、そんな考えよりも、」
楓は胸を抑えて、
「ここにある、心の方が押さえ効かなくなってたわ。いつの間にか、とっても愛してたの、悠斗のこと。だから、伝えるしかなかった。」
楓はそのときのこと思い出すように目を少し閉じてから、開き、こちらを向いて
「今は、とっても幸せだよ。ミリの心もいつかきっと、そうなるんじゃない?」
と微笑む。
「私も、、、ケースケと始めたい。もう、心はいっぱいいっぱいなの。ただ、ケースケが愛してくれてることも、ケースケを愛してることも、ちゃんと分かってるのに、どうやって伝えたらいいか、わかんないの」
楓は、自分のことのように嬉しそうに、
「そうなの?そうなんだ。もう、そこまで来てるんだ。」
「・・・すごくゆっくりだったけど」
「伝え方なんて、なんでもいいよ。思ったまま、ケースケに言ってみなよ」
「・・・うまく伝えられるかな?」
「大丈夫。ケースケは、ミリのその答えだけを聞きたくて待ってるんだもん。どんな言い方したって、、きっと、受け止めてくれるから」
そっか。そうだよね。楓にしっかりそう言われると、急に、伝えられそうな気になってきた。だけど、もうひとつ。。
「でも、もうひとつ・・」
「なあに?」
キレイな楓に言うのは少し、恥ずかしかったけれど、言ってしまう。
「ケースケはあんなにかっこいいのに、自分がこんなだから、、」
「え~?こんなって何?ミリ、かわいいよ~。すっごくお似合いだよ。さっきも2人がギャラリーから出てった後、悠斗とフジシマくんも、2人のこと、見ててこっちまで幸せになるって言ってたよ?」
「ほんとに?」
「うんうん。」
途端に元気になるゲンキンな私。
「・・なんか、自信出てきたみたい。楓、ありがと~」
「いいえ~。次会うときは、きっと、ふたり、ラブラブだね。」
にっこり微笑んでくれる楓。

ドアが開いて悠斗くんが出てくる。
「片付け終わったよ~。俺にも見せてよ」
と楓の隣に座りながら、楓の肩に腕をまわす悠斗くん。当然のように、ごく自然にもたれかかる楓。
ほんとに、幸せそう。
一緒に星空を見上げる二人に、ぼんやり、見とれちゃう私だった。

ケースケは、、、といえば、、、、部屋の中で、またアコギをいじっている。
ねえ、ケースケ、ここに出てきてくれたら、相当ロマンチックなムードなのに、、。
ほんと、タイミング、関係なし、だよね?ケースケって。
物足りないけど、、今は、、まだ、、しょうがない、、か?
てか、ケースケは、一生、グッドタイミングとは無縁な気がするな。。

楓と悠斗くんの邪魔しちゃ悪いから、私はそっと中に入る。
ケースケは、中学の時、一緒にバンドでやっていた時にコピーした曲を弾いていた。懐かしい。
私に気づいても、弾きつづけるケースケ。相変わらず暖かい音。私は言う。
「ケースケ、高校に入って、バンドもやめちゃったの、あれも私のせいだったんだね?」
「ん~?・・・ああ、そうだな。ヒロトのものになっちゃったミリと、顔合わすの辛かったんだ」
なんでもないことのように、正直に言ってくれるケースケ。私、そんなこと全然気づかずにいた。。
「ごめんね?」
ケースケは弾くのをやめてこちらを見る。
「いいんだよ。昔のこと。俺はもう、今の仕事に居場所を見つけてるから」
「だけど、」
「いいんだって。それよりさ、久しぶりに、俺の音にミリの声、乗っけてくんない?」
と、もう一度頭から弾きなおすケースケ。

私は、うなずいて、
ケースケの優しい音に乗せ、
懐かしい曲を歌いながら、
ケースケの横顔をこっそり眺める。

大好きだよ、ケースケ。

・・・もう、この想い、止めらんない。


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最終更新日  2008.05.22 00:02:25
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