lovesick

lovesick

PR

カレンダー

コメント新着

windsurf4179 @ Re:近況(05/08) お久しぶりです、福岡の加藤です。 何年振…
ぽわぽわ0127 @ Re:近況(05/08) ひろさん! よかった♪たまには近況知らせ…
シゲタロス @ Re:近況(05/08) なんだか凄く久しぶり!! 帰ってきてくれて…
t-nik0618 @ Re:近況(05/08) 良かった、仕事もできるようになったので…
ひかるですが…何か!? @ Re:近況(05/08) ひろ。さん、はじめまして。 こちらでコ…

お気に入りブログ

空想世界と少しの現実 緋褪色さん
きっくまーくのくだ… きっくまーくさん
無限の扉 yuto.さん
room47 shingo4711さん
ココロのまま るーじゅら。さん
     . ☆Yuri☆さん
不況に負けずに肝っ… かわちゃん4729さん
テレビでお馴染みの… 京師美佳さん
食いしん坊のHappyLi… ぽわぽわ0127さん
★★★はるちん garden★… はるちん0707さん
2008.06.24
XML
カテゴリ: takasaki
聴診器を耳から外し、僕はため息をつく。
「無理をしちゃいけないって、いつもいつも、言ってるだろう?」
服を直しながら、柚子は口を尖らせる。
「無理なんてしてないよ」
「だったら、なんで、こんなに。体は正直なんだよ?」
「だって。。。」
「何したの?」
俯く柚子。
「また、窯に行ってたんだろ?」
柚子は上目で僕を睨みながら、
「だって。作りたい気持ちは抑えられないもん」
「作るなとは言ってないよ?根を詰めるのをよしなさいって言ってるんだ」
「そんなねえ、時間でどんくらいとか区切れるものじゃないんだよ」
僕は取り合わず、
「また、お父さんにも注意しなくちゃいけないな」
柚子は笑って、
「お父さんに何言っても無駄だよ。自分が作るのに夢中だもん。私がいようがいまいが、気づいてないって感じなの」
僕はため息をつく。
「ったく、ほんとに、親子して。。とにかく、今日は、帰っちゃだめだよ。入院!」
柚子は、不満気に、
「ええええっ、そんなに悪い?」
「悪い。分かってるだろ?自分でも」
少し伏目がちになって聞く柚子。
「どのくらい?」
「とりあえずは、2週間」
「2週間?無理無理。ねえ、せめて来週からじゃダメ?」
「どうして?」
「だって、焼き、終わってないもん」
「お父さんに頼みなさい」
「だめなんだよ~。それじゃ、私の作品にならないって」
「問答無用。こんな状態で、まだ窯に行ったりしたら、、ましてや寝泊りするなんて、、死んじゃうぞ?」
一段と唇を突き出す柚子に、はっきりと言い渡す。
「分かった?」
「は~い。あ~あ。。」
不満気にもうなずく柚子。僕は、看護婦に、柚子を入院させるように告げる。
「逃げられちゃだめだよ?」
看護婦に最後に付け加えるのを聞いて、柚子が、
「ったく、人を犯罪者みたいに」
と文句を言う。僕は笑って、
「次は?」.
「柚子ちゃんで最後です」
看護婦の答えに、
「そうか。あ~~~っ」
僕は大きく伸びをして、まだ腐っている柚子に声をかける。
「入院前に、一緒にメシでも食うか、柚子ちゃん?」
柚子はパッとこちらを見て、
「うんうん。やった~。柚子、お寿司がいい」
遠慮のないヤツだよ、ほんと。
「はいはい。じゃあ、手続きよろしく」
僕は、笑っている看護婦に声をかけてから、白衣を脱いでイスの背にかけ、柚子の腕を取って診察室を出た。

2人で並んで歩く。柚子は、入院のコトなど忘れ、寿司のことで頭がいっぱいのようで、明るい。今にも、スキップでもし始めそうな様子だ。ほんと、まだ、子供なんだよな、この子は。
自動ドアを抜け、明るい庭に出て、一瞬目がくらむ。
そして、視界が戻った時、瞬時に見つけた、広い庭の向こう端のベンチに腰掛ける姿に、釘付けになる。
「せんせ、どしたの?」
僕は、つい足まで止めてしまっていたみたいだ。遅れたことで訝しげに振り返る柚子。僕の目線を追って、その先に莉花を見つけ、ニヤリと笑う。
「そっか、そういうことね。リカさんも誘おっか?」
といったと思うと、止める暇もなく、柚子は、リカの方に向かって走り出した。あのバカっ。これは莉花に声をかけることに対してではなく、走ったことに対してである。僕も慌てて追いかける。
「こらっ、柚子ちゃん、走ったりしたらダメだって」
柚子がたどり着く前に、その大声に、莉花は反応してこちらを見る。その前に柚子は走りこんで、
「莉花さんっ。さっきはどうも」
「あら、柚子ちゃん。今、終わったの?」
「はい」
僕は、柚子ちゃんを、まず叱る。
「ったく、、、走る、なんて、何、、考え、、てるんだ。し、死にたいのかっ?」
「なんともないってば、あんなくらい。それより、先生。。」
「え?」
息を整える僕に、冷たい目で、
「そんなんで息あがってんの?だめだよ、運動しなきゃ」
「バカ、、、普段なら大したことないんだよ、このくらい。あ、慌てさせるからだよ」
くすくす笑っている莉花に(心底、恥ずかしいよ、僕)、柚子が言う。
「莉花さん、これから何か予定ある?」
首を傾げる莉花に、
「お寿司食べにいきませんか?もちろん、先生のおごりで。莉花さんも来てくれるなら、きっといつもより高級なお寿司食べれると思うんだ」
ニコニコいう柚子。そして、突然の誘いに、驚いたような莉花だった。


にほんブログ村 小説ブログ 恋愛小説へ ←1日1クリックいただけると嬉しいです。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2008.06.24 00:25:41
コメント(4) | コメントを書く
[takasaki] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: