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2008.07.04
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カテゴリ: takasaki
柚子と松山くんは、庭の外周を、ゆっくりゆっくりと歩いていく。時には立ち止まり、見つめあい、ふざけあい、笑いあい。きっと、最初で、最後の2人の時間。そのことを、きっと2人とも分かっていても、それでも、今この時だけを純粋に、輝きあっている。繋がれた手に、どれほどの想いをこめて。

隣に立つ莉花が、遠くを歩く二人を見て、静かに言う。
「幸せそう」
僕は、莉花のほうは見ずにうなずく。

僕は、ここ数ヶ月、柚子が、ひたむきに彼を想う姿をずっと見てきた。彼のために、胸を焦がし、胸をときめかせ、胸を痛め、それでも、楽しそうに、幸せそうに、ただ遠くから彼を想ってきたユウコの初恋。それが、成就した。だけど、こんなタイミングでは・・・。遠距離恋愛。2人の年齢で、柚子の体で、存続できるはずもない。
きっと2人ともそんなこと望んでいないんだろう。
きっと2人ともそんなことどうでもいいんだろう。
ただ、会えなくなる前に、こうして、互いに気持ちを伝えたがった。
そして、お互いの気持ちを知り、胸の奥にしまいきれなかった愛が輝きだす。
一瞬だけだとしても。
今、確実に煌いている。

そして今、僕は、その瞬間に立ち会っているんだ。

そんな一瞬の愛を目の前にすると、
莉花への想いを完全に閉じ込めている箱の鍵を必死で探そうとしてしまう。
僕の中で、既に完全に眠り込んでいるはずの、
ただひたむきに誰かを想う少年の心が、共鳴を始める。

あきらめるって決めたのに。
そしてそれはうまくいっていたのに。
莉花に負担をかけてはいけないんだ。
僕は、もう、少年じゃない。
僕は、もう、大人なんだ。

・・だから、これ以上、莉花を感じるわけにはいかない。
そう、少し、そっけないくらいでちょうどいい。
隣にいても、ちゃんと、距離を置いて。
ただ、2人、並んで、若い2人を見つめていた。

松山くんの後姿を見送ってから振り返り、ゆっくりと歩いてくる柚子。
「行っちゃった」
ポツリとつぶやく。莉花は、
「ちゃんと気持ち伝えられた?」
柚子は、微かにうなずく。
「うん。ちゃんと渡したかったものも、渡せたし。・・・松山くんも、私のこと、好きでいてくれたんだって。全然、気づかなかった。・・今更、どうしようもないけど、、ね」
「柚子ちゃん」
「だけど、私、嬉しかった」
それだけを、丁寧に言う柚子。莉花と僕は、うなずく。
柚子は、もう一度、彼の去った方を振り返ってから、ふわりと僕の方に向き直り、
「せんせ、ごめん・・・」
「何?」
「私、倒れてもい・・?」
言い終わるか終わらないかのうちに、柚子は僕の腕に倒れこんできた。
「おいっ」
僕は、慌てて状態を確認する。そして、
「柚子ちゃんっ」
とうろたえる莉花に、
「あなたは、病室に戻っていてください」
「先生・・」
「大丈夫ですから」
と力強くうなずき、柚子を抱え上げ、走り出した。


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最終更新日  2008.07.04 00:13:41
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