Midnight waltz Cafe 

2nd Dance -第3幕-



          第3幕  続  シ  ン  カ  



「誰だ!!」

怪盗チェリー・・・涼は、背後に気配を感じて叫ぶ。するとそこには柳真琴と・・・

「怪盗チェリー・・・!?」

・・・真琴と一緒にいるのは、怪盗チェリーのような、いや、同じ格好をした。人がいたのであった。 満月に照らされた、そのもうひとりの怪盗チェリーが声をかけてきた。

「なるほど、先ほどテレビを見ましたが、やはり最近の『怪盗チェリー』は桜さんではなく、涼君だったのですね。」

「・・・」

「桜さんが『怪盗チェリー』を、一人だけでは演じると思えませんからね。」

そう言いながら、彼はシルクハットと眼鏡を外す。その正体はやはり高山楓であった。

「楓さん、あんた一体?」

涼はバレているのならば仕方ないと、普通の声で話す。

「桜さんに手品・・・奇術を教えたのは、僕なんですよ。」

そして楓は、語りだした。

「桜さんから、怪盗をするために教えて欲しいと言われ・・・」



『楓君、私に手品を教えて。』

『突然、どうしたんですか。』

『私、泥棒したいの。よくある怪盗をやりたいの。でね、怪盗をするためには手品が必須でしょ。』

(手品を使う怪盗って・・・、桜さん、それは漫画の見すぎなのでは?)と、楓は思ったとか、思わないとか・・・やっぱり思ったとか・・・。

『・・・わかりました。』



「・・・それで名前は、桜さんの名前から『チェリー』になり、こうして『怪盗チェリー』が、誕生したのです。」

楓は、一息つく。

「姉さんと、楓さんの2人が・・・2人ともが怪盗チェリーだったのか。」

「少し違います。あくまでも怪盗チェリーは、桜さんです。 おそらく涼君、君と雪絵ちゃんもそうなのでしょう。・・・君だけが怪盗チェリーであるのと同じように。」

「後方支援(バックアップ)ってわけか。」

「まぁ、そのようなところです。・・・さて、話は戻って、あの頃はいろいろと危険なことをしましたが、楽しかった。 もしかしたら涼君、君も桜さんと同じ思いをしているのかもしれませんね。」

「・・・」

「そういえば、ひとつ聞きたいことがあります。・・・桜さんは、どうしたのですか?」

「姉さんは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

涼は、桜のことについて、蒼波(あなみ)のことや黒の宝石のことなどの、この前の事件の詳細を話した(詳しくは、1st Dance-深夜の舞踏会-を読んでね)。

「そうですか、桜さんは怪盗チェリーとして・・・・死んだのですか・・・・・・。」

無念そうにつぶやく涼。

「なぁ、楓さん。楓さんは、姉さんと付き合っていたの?」 気になっていた涼。

「いいえ、つきあってはいませんよ。・・・桜さんにはあの人がいましたから・・・・」

楓の心を表したか、少し風が強くなった。

「あ、あのぅ、私のペンダントは・・・?」

真琴が、話しかけてきた。

「あ、わるいわるい。はい、これですね。」

涼は、真琴にペンダントを返す。 真琴は、返ってきたペンダントを確認しようと、ふたを開けた。

-冒頭に少し述べたが、今宵は満月。きれいなきれいな満月が、この摩天楼を、この街を、怪盗を・・・そして『月の鏡』を照らしている。

ペンダントを開けた真琴は、突然こう声を上げた。

「何、これ・・・鏡に、文字が浮き出ている!?」

その声を聞き、涼と楓は、鏡を覗き込む。

そのペンダントの中にある鏡は、満月の光を浴びて輝いていた。 その輝きの中にどういう仕組みなのであろうか。鏡の表面に紅い文字が浮き上がっていた。浮き出てきた文字は、こう書かれていた・・・。



[クロキスイショウ ト ニジノスイショウ ハ タイヨウノヒカリ ヲ アビ 

タカラ ヘト ミチビク]



「黒き水晶と虹の水晶は、太陽の光を浴び、宝へと導く?」

鏡の文字を読んでも何のことか分からない。

「柳さん、その鏡は?」 楓はたずねる。

「え、あ、父からもらったもので、『月の鏡』というものだそうです。」

真琴は、何かに気づき、少し困惑していた。

「月の鏡か、なるほど、月・・・いや、満月の光を浴びると文字が現れるのかな。」

そんな真琴を置いといて、涼は話す。

「そうでしょうね、そしてこのクロキスイショウは、その『誘惑』という宝石なのでしょう。」

楓が、涼の言葉に賛成する。

おそらく・・・蒼波が言っていた宝石の『真価』とは、このことなのであろう。



で、真琴の困惑の理由であるが、あのペンダントは、やはりロケットで、雪絵の読み(?)どおり、写真が入ってあった。驚いたことに、入っていたのは楓の写真であった。

俺としては、この後の2人がとても気になるところである。 が、しかし・・・邪魔なので早々に去ることにしたのだが、どうなったことやら? おそらくは・・・・。





場所は変わり、東洋テレビでは・・・

亜美のプロダクションの社長、霧谷が神尾親子に向かって怒鳴っていた。怒鳴っている内容は、何をやっているんだとか、そう言った内容であった。何か特別なことを言っているわけではない。霧谷が怒っている本当の理由は、亜美もそうだが、何より自分が目立っていないことなのかもしれない。 

一方、東洋テレビのプロデューサーは・・・

「いつもの倍以上か・・・むふ。」

深夜の時間帯の割に、怪盗チェリーの予告のおかげで視聴率が高かったため、こっそりと喜んだとか、喜んでないとか、喜んだとか・・・



神尾哲幸は、霧谷の抗議もあってか、警視庁に呼ばれることとなった。その結果・・・

「真理。私は怪盗チェリーの捜査から外れることになったよ。特にお前は高校生だ。 もう警察の捜査に加わることはできない。」

残念そうに哲幸が言う。

「お父様、私が・・・」

真理は、申しわけなさそうに言う。

「何も言うな。将来頑張ってくれればそれでいい。」

そう言って、哲幸は部屋へと帰っていく。

真理は、勝手にあのペンダントにつけていた発信機の信号を追うことにした。

受信機に、反応はまったくない。

「・・・やっぱり、ダメか。」

残念そうにそう言って、受信機をしまう。それから他の何かを取り出そうとするのであったが、何を思ったか取り出すのをやめた。

「もう私は、あの怪盗を追いかけることが、できないのだったわ。」

本当に残念そうにつぶやいて、真理は机にふせる。

「本当に・・・もう・・・」

真理は泣いていた。彼女の怪盗への想いは、『深化』していたのだった。





ところで、オーディションの結果であるが・・・

「審査の結果、この度のヒロインは柳真琴さんに決まりました。」

審査委員長が、そうアナウンスする。

オーディションの後、真琴は亜美に対して「正々堂々とやっていたら、あなたが選ばれていたと思うわ。」なんて言ったものだから、亜美は暴れそうになったとか、ならないとか・・・



      ―そして、2学期のはじまり、9月1日をむかえた。









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