日々のあぶく?

日々のあぶく?

January 21, 2006
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ネクロポリス 上 の中で、「百物語」をする場面がある。
そこで主人公が"耳なし芳一"を話そうとするが、ラストの教訓がどうだったか思い出せないとあり、
そういえば、ラストってどうだっけ?と気になったので借りてみた。
かの有名な「怪談」。映像などでは見たことあるが、ちゃんと読むのは初めてかも。
原作は英文だったものを翻訳したもの(訳:平井呈一 金の星社発行 日本の文学15)
日本の心を大事にしながら、時に外国人としての(感覚で)ギャップを丁寧に説明している。
海外でも多く読まれたというのもうなずけるし、こういう面から日本を紹介してくれる人がいてありがたいなぁ、と今更ながらに感謝。

小泉八雲:本名 ラフカディオ・ハーン(アイルランド人でイギリス軍医の父と東洋人の血の混じったギリシャ系の母を持つ)
日本に帰化した時に小泉八雲を名乗る。
小泉の清は妻・小泉節(セツ)の姓。
八雲は有名な日本の神話にある「八雲立つ、出雲八重垣~」から。
ちなみに怪談とは「ばけものに関する話。妖怪、幽霊、鬼、狐、狸などについての迷信的な口碑、伝説」(広辞苑)だそうな。

「怪談」
:不思議なことの物語と研究~日本の古典、古事を彼なりに肉付けしたものや、彼自身が各地で聞き及んだ話などが収められている。

耳なし芳一のはなし・
腕の良い盲目の琵琶法師である芳一は源平の物語の中でも「壇ノ浦合戦の段」を得意としていた。
身を寄せていた阿弥陀寺で和尚の留守中に琵琶を弾いているとさるお方からの使者が彼を迎えに来て、「壇ノ浦合戦の段」を披露する事になる。
毎夜出掛ける芳一を心配した和尚が寺男に確かめさせると、彼は阿弥陀寺裏にある安徳帝の陵(墓)の前、人魂に囲まれていた。
和尚の計らいで使者に見えぬよう全身に経文を書き、難を逃れようとしたが、
経文を書いた納所のミスで耳だけ書き忘れられていた。
見える耳を引きちぎって去る使者。
その後、芳一は良医の手によって本復し、また、その不思議な危難の噂が広まったことにより、"耳なし芳一"という異名と共に益々有名になった。

教訓話ではなく奇談であるから、ラストにこれといった"オチ"は必要なかったなぁ、と読み始めて気付いた。
でも、気になっていただけに読んですっきり。

おしどり・
ひとつがいのおしどりを見つけた猟師が雄を仕留めた。
その夜、夢に綺麗な女がでてきて「私が夫なくして生きていけないことが明日も沼に来れば分かるでしょう」と言う。
次の日、沼に行ってみると彼を見つけた雌のおしどりは自分に嘴を突き立て死んだ。
それを見た男は剃髪し、僧になった。

お貞の話・
許嫁との婚前間近に病死した娘・おていは死ぬ前に「もしも私を思い続けてくれるのならば生まれ変わってあなたの前に現れる」と相手の男に約束する。
その後、生まれ変わったお貞に再会した男は彼女と結婚するが、再会時に自分は「お貞」だと告白したあと、前世の記憶は消えていたという。

うばざくら・
大病にかかった娘の身代わりになることをお不動様に祈願した乳母。
祈願成就の後に死ぬが、その間際、お不動様に約束した桜を植えるよう周囲に頼む。
願い通り桜を植えると乳母・お袖の命日(二月十六日)に花が咲くようになり、
その桜は「うばざくら」と呼ばれるようになった。

かけひき・
罪人が刑に処されるとき、役人に「(自分を殺さば)恨みをかける」と言う。
役人は一計を案じ、「その気持ちが本当ならば首を落とされたと気に目の前にある石に噛み付いてみろ」と彼の気持ちをそらし、恨みながら死ぬことを防いだ。

鏡と鐘・
鐘を造るために寄進した鏡のことを娘が惜しんだため、鏡は溶けなかった。
そのこと(彼女が本心から寄進したのではないと噂)が広まり、
恥ずかしさも募った娘は「鐘を撞き割る者がいればそのものに金銀財宝を授ける」と言い残し身投げする。
その言葉を真に受けて時を選ばず鐘をつく村人達に困り果てた寺は鐘を沼に捨ててしまう。
この鐘は「無間の鐘」と呼ばれた。

後日談として、平家の武士・梶原景季のために金子が必要になった梅が枝が「無間の鐘」を想定した鉢を割れるまで叩き、
その理由を聞いた周囲の人が金子を彼女に送ったという話も載っている。

食人鬼・
禅家の僧が美濃の国を行脚している時に立ち寄った村では死人がでると死体を残して村人はよその村に行くという風習があるという。
村に残った僧は死体を食らう食人鬼を見る。
その正体は生前は僧であった食人鬼は施餓鬼(仏教法会の一つで餓鬼道に落ちて苦しんでいるものに対して食物を施して供養をするもの。)を頼み、姿を消す。

ろくろ首・
山中で親切なきこりの元に身を寄せた行脚僧がきこりの正体がろくろ首であることを見破り、返り討ちにする。
その後、彼は袖に噛み付いた首をぶら下げて行脚を続ける。

葬られた秘密・
病で死んだお園が昔(主人以外の人から)もらった恋文が(残っていることが)気懸かりで幽霊となって現れる。
誰にも他言せず、和尚が件の文を焼き捨てる。

雪おんな・
山中で吹雪にあった時に出会った雪女に自分のことを口止めされた若者。
後に、彼が唯一秘密をこぼした妻は件の雪女だった。
夫婦となり、子供もいたため、彼女は男の命をとらずに姿を消す。

この話が伝わっているのが今の東京都調布市だということに驚いた。
昔はあの辺りも雪が多かったのだろう。

青柳ものがたり・
武芸の達人とも言われた男が旅の途中で出会い、妻にと望んだ娘と紆余曲折の末に結ばれるが、
数年後、彼女は急にこの世からいなくなる。
実は彼女は柳の木の化身で、本体の木が伐採されたため姿が消えたのだった。

十六ざくら・
皆の心を楽しませていた桜が枯れた時、桜の為に身代わりになった老人がいた。
彼の切腹した日(正月十六日)に桜は咲くようになった。

安芸之介の夢・
安芸之介は夢の中で立派な家に迎え入れられ、子もなした。
夢から覚めて近くを掘るとそこには蟻の巣があった―

力(りき)ばか・
知能は低いが力持ちの力が死んだ時に母親は彼の手に「力ばか」と書いた。
三ヵ月後、さるお屋敷で生まれた男の子の手には「力ばか」の文字が。
生まれ変わりを喜ぶ力の母。文字を消すには力の墓の砂を使った。

ひまわり・
ジプシーに対する偏見を子供の視点で書いた話。(外国の話)

蓬莱・
蓬莱とは桃源郷のことであるが、八雲は蜃気楼・まぼろしとして紹介。
老いることなく、飢えることなく、心健やかに暮らせるという蓬莱。
それは霊妙な大気を吸っているためにも思えるが、理想に対する憧れ・希望の現れであるとも言っている。

むじな・
原文(英文)つき。
男が泣いている娘を見ると彼女はのっぺらぼうだった。
驚き逃げた男が屋台で事の次第を話すと、屋台の親父が一言「それはこんな顔だったかい?」
親父の手が顔をなぞると、のっぺらぼうになった―
有名なむじなに化かされた話。





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Last updated  January 21, 2006 04:29:58 PM


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