日々のあぶく?

日々のあぶく?

August 31, 2006
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アンソロジーは面白いが、読みたい本、作家が増えるので嬉しい悩みが増えることに。

"目を閉じて思い浮かべてください。あなたの目の前を川が流れています。その川に死体を置いてください。"歌野晶午によるテーマを六人の作家がそれぞれ料理する。
書く作品ごとにあとがき(仕事を受けた経緯やプロットについてなど)があるのも良い。

「玉川上死」歌野晶午~玉川上水
玉川上水を流れる死体があるとの通報により現場に向かった福生派出所に勤務する市田。
死体に見えた物体は思い出作り&賭けで"死体の振りして羽村の堂橋から拝島の日本橋まで辿り着けるか"に挑戦した高校2年生・秋山だった。
状況を確かめる中、生中継担当の同級生・茂野と沢井が相次いで殺されたことが判明。
近くの暴走族にやられたのか、それとも―

明らかになる真相、板ばさみになることが予感される両親、ぐっと引き込まれるラスト。

「水底の連鎖」黒田研二~長良川
長良川に転落した車を探る水難救助隊員・瀬古が見つけたのは対象車とそれよりも前に沈んでいたと見られる車2台。
それぞれから死体が見つかる。
対象車に乗っていたのは越川重宜。大量の車戴道具を軽トラックの荷台に積んでいた。
ジープから発見されたのは室伏安則。死後4日ほど。
軽自動車から見つかったのは澤木麻帆。2週間以上前から行方不明だったことが判明。
別々の事故と思われた運転者らにつながりが見えてきて―

連鎖して見つかる死体という発想が面白い。

「捜索者」大倉崇裕~一ノ戸沢
雪山で遭難した男(高野)を捜索するのに協力した登山者の一人・白井は死体となって沢を流れた。
山岳警備隊隊長の松山は彼が犠牲になったことを今でも悔いていた。
事故で死んだと思われたが、登山を止めたはずの高野が雪山で死んだことからとある真相が浮かび上がる。

作者が書くように"川"というよりも"山"にある死体であるが、それはそれで面白かった。

「この世で一番珍しい水死人」佳多山大地~ウクカ川
行方不明の伯父・三平太を探すように泊グループ総帥である父・大から厳命を受けた僕は彼の足跡を辿って南米へ。
そこで僕は伯父に出会った人々から、以前、刑務所の中にいるはずのない男が脱走を企て、
看守に射殺されてしまった怪事件を伯父が解決した話を聞く。

川を流れた死体はおまけのようなもの。それは大倉氏も同様か。
川そっちのけで展開する物語はなかなか面白いのだが、伯父の行方はわからずじまい。気になる。

「悪霊憑き」綾辻行人~深蔭川
"この世には不思議なことなど何もない"とは、恐らく今この国でもっとも有名な古本屋の決め台詞だが、本当にそうだろうか…
これって京極堂のことじゃないか!と心惹かれる導入部から一気に綾辻ワールドへ。

顔に異様な線が引かれた水死体。彼女の顔には覚えがあった。
水妖の一種、水の悪霊「*****」(正しく発音すると憑かれてしまう。正式名称は不明のため伏せ字)に憑かれた彼女。
眩暈のため、通っていた病院で作家・綾辻が担当医に誘われて参加した悪霊祓い。
儀式は失敗。その直後の死であり、彼女は悪霊に取り殺されたかに見えたのだが―
あとがきに書かれるもともと予定していたプロット(アンソロジーに登場する作家が死亡する事件)も面白そう。(これが枚数オーバーで予定変更。彼は原稿を落としたらしい。遅筆なだけはある!?)
同じ主人公・同じ舞台設定で短編連作を続けているらしいので続編も楽しみ。
話の中にちらほら出てくる妻は小野不由美氏だが、彼女の新作も読みたいなぁ。

「桜川のオフィーリア」有栖川有栖~桜川
桜川で見つかった綺麗な女性の死体。
彼女の同級生だった石黒(今は雑文ライターとなっている)は推理小説研究会の発起人で、創部メンバーで友人の江神に会いに来た。
現メンバー望月、織田、有栖川が彼の抱く疑惑を解明する。

有名なシリーズの番外編。とはいえ、このシリーズ未読である。今度読んでみよう。
作中で紹介されている「蝋のリンゴ」って有名なのだろう…か?

同じテーマでこうまで違う話が出来るのだと興味深く読了。





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Last updated  September 2, 2006 04:18:10 PM


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