レオ(MIX:現在11歳)

我が家のエンターティナー ~レオ~

レオ




我が家にはヨーキーのトトと、サバトラ猫モスはすでに家族で
私が社会人2年生になった、ある春の日のお話です。


カラオケ大好きな友人と、私の弟と、私の3人でカラオケに行きました。
めいっぱい歌い終わり、カラオケBOXを出た時に
私はカラオケBOXのすぐ横にある、市場が気になりました。

ここのカラオケBOXへはいつも夜に行くため
カラオケBOXの横の市場は閉まっていますが
今日は休日という事もあり、市場は賑やかに営業していました。

ここの市場を覗くのは初めての私。
好奇心で友人と弟を誘い、市場に入ってみることにしました。


農家の人が自分の畑で取れた野菜を売っている八百屋さん
漁港が比較的近いので、新鮮なお魚を売っている魚屋さんもありましたが
当時まだ若かった私達には、あまり関係のないお店ばかりです。


これといって買う目的も無く、市場をぶらぶらしていると
ふと、店頭に2つのケージが並んでいる八百屋さんが目に入りました。


1つのケージには、生後2ヶ月~2ヵ月半くらいの子犬が2匹。
もう1つのケージには、まだ目も開いていない子犬のような
モグラのような、クマのような生き物が仰向けに寝ていました。


八百屋さんのおばちゃんが、ちょうどケージの横に座っていたので
おばちゃんに


「この子達はどうしたんですか?」


と聞きました。


すると、おばちゃんはこう答えました。


「今朝、お店を開けようとここに来たら、うちの店の前に
捨てられてたんだよ。可哀想にねぇ~。
誰か飼ってくれる人はいないかと思って、ここに置いてるんだよ。
お客さんみんなに声をかけてるんだけど、なかなか貰ってくれる人が
いなくてね。お姉ちゃん、誰か知り合いで犬欲しい人はいない?」




友人と私と弟は、その2つのケージの前に座り込んでしまいました。
きっとこのおばちゃんなら、最後まで飼い主さんを探してくれるでしょう。
でも、食べ物を扱っているお店。
犬嫌いな人や神経質な人は、店頭に犬がいるお店を嫌がるかもしれません。


一緒にいた友人は、市営住宅の団地に住んでいたのでペットは飼えません。
うちに連れて帰って、母にお願いすれば1匹はOKしてくれるでしょう。

でも、この3匹。
はて、一体どの子を連れて帰ったらいいものか・・・。
捨てられてしまった、不幸な子達。
その子達の中から、1匹だけ選んで連れて帰るなんて。
私にとって、 究極の選択 でした。


どのくらい時間が経ったでしょうか。
間違いなく、1時間は考え込んでいたでしょう。
私の中で、結論が出ました。


「よし!おばちゃん、任せといて!!
私がこの子達の里親さん、全部探すから!」



そして友人の車に、八百屋のおばちゃんからもらった
ダンボール箱に入った3匹を乗せ、私の家へと向かいました。


家に着いて、とりあえず2階の弟の部屋へ連れて行きました。
モグラみたいな生き物は、そのままダンボール箱に入れたまま
2匹の犬を部屋に放しました。
すると、さっそく1匹がう○ちをし始めました。

すると、まぁ出るわ出るわ、寄生虫!!
回虫とサナダ虫。
まさか・・・と思い、モグラみたいな生き物もよく見たら
身体はダニだらけ!!

こりゃおふくろに怒られるぞ~!!と、慌ててペットショップへ行き
2匹の寄生虫持ちの子達に、虫下しの薬を飲ませ
モグラみたいな子はお風呂場へ連れて行き、ノミ取りシャンプーで
洗いました。

※このモグラみたいな子は、その後我が家の一員になった
「ちぴ」という犬なので、ちぴのお話はまたのちほど。


夜、母が仕事から帰ってきました。
とりあえず、寄生虫の事は黙ってろよ!と、2人に口止めし
虫下しの薬を隠し、2階から「おかえり~」と叫びました。


いつもリビングにいる私達が、弟の部屋にこもって何やってるんだ?
怪しいと思った母は、案の定2階の弟の部屋へ来ました。

開口一番。



「何なのこの子達は~~~~~~~!!!」


間違いなく、言われると思ってました。
でも間違っても「捨てて来い!」なんて言わない人だって事も分かってます。
母に事情を説明。さすがに

「だからって、何も3匹全部連れてくる事ないでしょ!?」


と怒られましたが、怒られるのには慣れています。
あと、それ以降は何も言われませんでした。


それから毎日、寄生虫との戦い。
当時私は仕事をしていなかったので、毎日2匹の犬のお尻を
追い掛け回し、少しでもサナダ虫がお尻の穴から顔を出そうものなら
ポケットに常時準備してあるピンセットで、スポッと取って
同じくポケットに準備してあったポケットティッシュでくるむ。
その後、ティッシュの上からプチッと潰し、何事もなかったように
ゴミ箱へポイ。
手馴れたもんです。
母にバレないうちに、何とか寄生虫を駆除しなければ!
それに、寄生虫を駆除しないうちは里親さんを探せないのですから。


ところが、数日後。
何と母が気を利かせ、私がたまたまほんの10分出かけてる間に
犬を飼いたいという友人を連れ、仕事を抜け出して帰宅したのです!

母が友人に
「この子達なんだけど・・・」と、犬を見せた時に
出てきてくれました、サナダ虫!


私が家に帰った時は、時すでに遅し。
母に


「寄生虫がいるじゃないの!!」

と怒鳴られました。
そして、こう言われました。


「どうしてもっと早く言わないの!?この子達が可哀想でしょ!!」


そして、虫下しを買うのが精一杯だった貧乏な私に代わって
母が3匹を病院へ連れて行き、寄生虫を駆除してくれたのでした。


その後、3匹には
「ちび太」「ちび助」「ちび子」という仮名が付き
弟が大きい2匹の子達のしつけ担当、私がお世話担当
母がご飯と病院担当となりました。



母が連れてきてくれた里親希望のお友達は、その後も欲しいと
何度か我が家へ様子を見に来てくれ、男の子の「ちび助」は
のちにゴンタという名前になり、その方の里子となりました。


さて、残る2匹。
弟の「ちび子」へのしつけは、まだ続いていました。
そしてすっかり弟は、ちび子に情が沸いてしまったようです。
ちび子だけなら・・・と、母が家族の一員として
正式に迎える許可をくれました。


ちび子は真っ白な毛で、とても足が長くまっすぐで
弟が

「ジャングル大帝の レオ みたいだな」

と言った事から
ちび子の名前は レオ に決まりました。



レオは成長するにつれ、どんどん面白い子に育っていきました。
お散歩の時、決まって2本足で歩くのです。
私の家が建つ住宅地の上に小学校があり、うちのワンコのお散歩コースは
そこの小学生達の通学路になっています。
学校へ行く子供達の間でも、2本足で歩くレオのウワサは
たちまち広がり、大人気!!
ちぴと一緒にお散歩していると、必ず


「あ~!!ちぴレオだ~!!」


と、声をかけられるようになりました。

それから、レオは外飼いなのですが、初めの頃は庭の一角に柵を作り
その柵の中で放し飼いにしていました。
ところがある日、レオが脱走して庭でうろうろするようになりました。

どんなにレオを柵の中に戻しても、またすぐ出てきます。
柵も高さはあるし、柵の扉は閉まっているのに、どうしてだろう?

そして、ある日見たのです。レオが、まるで人間のように
「よいしょ、よいしょ」と、柵をよじ登るのを。


leo


これはダメだと急遽柵の中でもリードで繋ぐようになりました。
すると今度は、犬小屋の上に「よいしょ」とよじ登り
犬小屋の屋根の上で日中過ごすようになったのです。


この我が家のエンターティナー 『レオ』 は、現在も私の実家にいます。
11歳とは思えぬ若さで、今でも2本足でお散歩し
日中は小屋によじ登り、屋根の上で過ごしています。




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