心のままに~星に願いを~

心のままに~星に願いを~

幸せな時間




いつものように由希は僕の足の間にすっぽりと体をおさめ、僕にもたれながらTVを見てる。
いつも僕が重いからのいてって頼んでも、君は「こうやってTVを見るのが決まりなの」と言って、場所は動いてくれるけど、膝枕に変えたりと結局はどこか僕にもたれていないと気が済まないらしい。

「そういえば、最近引きこもったり、僕の前で泣いたりしなくなったね」
由希と結婚して5年になるけど、最初の頃は由希はよく家出をしたり、引きこもったり、突然泣き出したりしていた。
その度に僕は身も心もボロボロになりながら、ただ由希を抱きしめていた。
「ああ、そうね。最近TV見て泣くことは多いけど」
「そういうことじゃなくてさ。訳わからないのに泣くこと」
「・・・ああ、今も時々はあるけどね。立ち直りが早くなったかも。寝たら忘れる。働きに出たのがよかったのかな?」
由希はこの春からパートに出始めた。
それがいい気分転換になっているらしい。
「そう。」
「けど、人付き合いは面倒臭くなってきたかも。一人の方が気楽だもん。」
「僕といるのは、面倒くさくないの?」
僕はふと不安になって、あわててそう聞いた。
「あ、それは大丈夫。時々いらっとはくるけどね」
といたずらっぽく笑いながら由希は答えた。

「私ね、相変わらず何がしたいのか、何で生きてるのかわからないけど、でもね、生きてるだけでいいやって思えてきたの」
「昔はどうだったの?」
「昔は、生きることに疲れてたなあ・・・。何で生きてるんだろって思ってたもん・・・。けど、今は美味しいもの食べれたり、もちろんしんどいこともあるけど、毎日楽しいって思えるようになった。だから、別に目標が見つからなくても、いいかって思えるようになった」
「そう・・・。きっとそのうちしたいことも見つかるよ」

出会った頃の由希は、本当に辛そうだった。
もしかしたら、今でも一人で抱え込んでしまう時があるのかも知れない・・・。
パートに出たのも、「お小遣い稼ぎ」なんて笑いながら言っていたけど、本当は仕事仕事で由希を受け止める余裕が無くなった僕の為に、何とか自立しようと思ったからなのかも知れない・・・。
まあ、僕が弱ったから、由希がこうやって少しずつ強くなってきたってのも皮肉なもんだけど・・・。
けど、それが最良のパートナーってことなのかも知れない。

本当は由希が僕に好きって言ってくれることを目標にしてくれたらいいのになあなんて思ってるんだけど、無理なんだろうなあ・・・。

まあ、こうやって僕にもたれてくつろいでる君を見てるだけで、僕は十分幸せなんだけどね。

(fin)


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