ＲＡ～道の途中～

関節リウマチ≪進むテーラーメード治療≫

関節リウマチ≪進むテーラーメード治療≫ 　2008年2月20日　サンケイ新聞

　手足のこわばり感や痛みが、やがて関節の変形や骨破壊にまで進行する
「関節リウマチ」。原因不明の難病とされるが、近年は分子レベルでの
疾患メカニズムの解明が進み、早期診断基準の作成や治療薬の開発により、
治療目標も従来の「（症状の）進行遅延」から「寛解（軽減・消失）」に
設定できるようになった。リウマチ治療の現状についてリポートする。
　　　　　　　　　　　　　　　（服部素子）

　関節リウマチは、身体の多くの関節に炎症が起き、関節が腫れて痛む病気。
長期にわたって進行すると関節の変形と機能障害が起きる。原因はまだ完全に
解明されていないが、昨今の研究によって関節の破壊に免疫調節物質（サイトカイン）
が関与していることがわかり、その結果、ここ十数年で治療環境は大きく変化した。
　なかでも、サイトカインだけをターゲットにする生物学的製剤（抗サイトカイン製剤）
の登場は治療の目覚しい進展をもたらした。同製剤のうち日本では
平成１５年に 「インフリキシマブ」 １７年に 「エタネルセプト」 が保険適用された。
　リウマチ専門医である松原メイフラワー病院（兵庫県加東市）の松原司院長は
「日本では発症早期は非ステロイド系の抗炎症薬を使い、効果がなければ徐々に
強い薬に変え、最終的に生物学的製剤や外科手術を組み合わせる治療法が一般的ですが、
欧米では初期から強い生物学的製剤を投与し、関節破壊を抑制する治療法を推奨している」
と話す。その背景には欧米で１９９０年代に「関節破壊は発症早期から進行している」
との研究結果が報告されたことがある。

　しかし日本でも早期段階の治療を重視する点は変わりない。
特に発症３年未満は「重要な治療機会の窓」と呼ばれ、関節破壊の軽い
この時期に生物学的製剤をうまく組み入れることで、多くの患者で関節破壊の進行が
ほとんど見られない寛解状態の維持を期待できるという。
　ただ生物学的製剤は免疫抑制剤であるため、副作用として肺炎など感染症への
注意が必要で、しかも価格が高いという問題がある。１回の投与費用は
インフリキシマブで約２２万円。８週間に１度ずつ受けると、保険適用（患者３割負担）
でも薬代だけで年間四十数万円がかかる。
　日本リウマチ財団（東京都豊島区）のホームページ「リウマチ情報センター」
によると、日本の関節リウマチの有病率は０．４～０．５％で患者数は約７０万人。
発症年齢は３０～５０代に多く、女性は男性の約３倍を占める。子育ての経済的負担が
重い時期に、治療にそれだけの薬代を使うことに躊躇する人も多い。

　松原医院長は「こうした点をどう解決していくかが課題。当院では
各患者の遺伝子解析により生物学的製剤の有効性と、感染症などの
副作用の出現を事前に判定できるシステムの開発を進めている」
という。実用化されれば、個々の患者に合った生物学的製剤が
使えるようになり、治療面で大きな前進となる。
　関節リウマチは遺伝子的要因も高いといわれ、昨年４月からは
診断に有用な血液検査法「抗ＣＣＰ抗体検査」も保険適用になった。
松原院長は「今後は、（遺伝子や体質面で）一人一人に合わせた
テーラーメード治療が進むだろう」とみている。

早期ＲＡ（関節リウマチ）診断基準 　　（厚生労働省資料参考）

１）朝のこわばり１５分以上（＞一週間）
２）３つ以上の関節域の腫脹（＞一週間）
３）手関節、足関節などの腫脹（＞一週間）
４）両手や両足などの体の対称の位置にある関節の腫脹（＞一週間）
５）リウマトイド因子（自己抗体の一種）の陽性
６）Ｘ線所見で骨そしょう症や骨びらんなどが認められる

以上の６項目中、４項目以上あてはまればＲＡと診断してよいとされる。

ジャンル別一覧