ココ の ブログ

繁華街(4.その様々な表情)

繁華街(4.その様々な表情)

 ボクは都会の繁華街で生まれ育って来たから根っからの都会っ子で、繁華街というものの良い面も悪い面も総てその裏表を知っているつもりだ。言わば慣れっこになって、街の不良やチンピラも見て来たし、本物の893とも一緒に呑んだ事もあるだけに怖い処というイメージが無かった。その代わり、結婚して郊外に住むようになってからは繁華街の良い面ばかりを観るようにして来て、早同じ年数が過ぎてしまったから、かつての繁華街の悪い面が何となく胡散臭く感じ、大嫌いになってしまった。だから893も同様に大嫌いで、映画も893ものは絶対に観ない。第一、邦画は駄目になって久しく、黒沢監督辺りの作品が最後の観劇になってしまった。観るのはもっぱら洋画である。

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様々な繁華街(11)。

 そんな中でも外国の893や繁華街が出て来る場面があって、話の流れとして観てはいるが他所の世界の事としてしか感じないし、実感の伴わないものは飽くまでフィクションとしか受け取れない。インターネット映画で韓国ものや中国ものの893や繁華街が出て来る作品を観ても、かつて独身時代に経験した世界を観るような昔の事として懐かしい気がするだけである。もうボクの概念からはそういう世界は一種の文学のようにしか観えないし感心もなくなったのだ。しかし、現実は其処に存在するし、今日も其処で様々な悲喜劇が演じられているだろうし、繁華街という特有の場所での商売の浮き沈みもあるだろう。そう言えば、学生時代に東京へ友人と一緒に遊びに行った事を想い出す。

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様々な繁華街(12)。

 東京の繁華街が珍しかった訳ではなく、当時流行っていたモダン・ジャズを聴きに行ったのだった。そのついでに小学時代によく遊んだ同級生が一家で東京へ引っ越し、東大の赤門付近に住んでいる家へ独りで訪ねた。事前に手紙を出しておいたから家族総出で歓待してくれ、懐かしさから積もる話をしたのだったが、訪ねた時間が遅かったこともあって勧められるまま客間に敷かれた布団で泊めてもらう事になった。翌朝、目が覚めると親父さんは会社へ、友人はテニスの試合があるとの事で既に出掛け、弟達も学校へ行き、家にはお母さんだけが居て朝ごはんの用意をしてくれていた。昨夜と違って二人だけの会話では、家族の近況や卒業後の進路を保護者のような気遣いで尋ねられ少し湿っぽい話になった。

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様々な繁華街(13)。

 ボクにすれば単純に懐かしさから東京に行ったついでに会いたいという軽い気持ちだったのだが、逆の立場からすれば急に何事かと訝ったかも知れない。そこまで考えが及ばないまま一晩世話に成りっ放しになった訳だが、脳裏には親父さんが言った「新宿へ行くって?駄目駄目、あんな危ない処なんか」という言葉だけが妙に残っていた。学生だった昭和30年代後半の新宿は、それ程、環境の悪い繁華街という事だったのだろう。が、繁華街育ちのボクにすれば何を言っているのだろう?という感じだった。当然、夜の新宿をほっつき歩く訳でもなく何事も無く無事に新幹線で京都へ帰ったのだが、親の世代にすれば学生が繁華街で何事も無ければ良いのにという心配が先に立ったのだろう。

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様々な繁華街(14)。

 そういう有難い話は、最近では余り聞かない。時代が変わってしまったせいもあるのだろう。今時、小学生でも平気でインターネットで大人の世界の様々な情報を得ている。未成年者禁止の情報でも、その気になれば幾らでも入手できる。大人の方がウブな考え方をする場合すらある時代だ。ピュアな気持ちだけに子供は辛らつである。大人顔負けと言う事は往々にしてある。ボクの時代と違って繁華街をウロウロする子供は今時居ないだろうが、頭脳面での情報は他人に見えないだけに知らなくても良い事までも知っているものだ。繁華街の何たるやよりも、その機構や使い方は大人以上に分かっていると考えて間違いない。かつてのボクの経験からも今の子供は驚くような情報を知っている筈だ。

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様々な繁華街(15)。

 そして使い方も分かっていると考えられるのだ。末恐ろしいと言うよりも、それが情報化社会の姿なのである。建物群だけが繁華街ではない。そこで機能する様々な職業や人間関係がからみあって出来た組織と場が繁華街なのである。そこには法律では解決できない問題が山積している。口先で誤魔化し、情念で生きる人間の性がうごめく場所なのである。舌先三寸の世界とまやかしの世界は、ある時は極楽浄土であろうし、ある時は地獄の一丁目であるかも知れない。天使も居れば悪魔も居る。キリストも居ればサタンも居る。海外から売られて来た少女が春を売る商売なぞ掃いて捨てる程ある。葉っぱや薬でラリッた連中がうようよ居る。それを捕まえようとする警察や役人(官憲)も居るのだ。(つづく)


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