ココ の ブログ

梅雨の晴れ間(4)

梅雨の晴れ間(4)

 ボクが愚息の事で心煩っていて、ふと、ボクが、かつて父に抱いた気持ちとある種似ている事に気がつく事がある。自分史の父の事を回想している部分を読んでみると実に愚息の性格や心理状態が父に似ているのである。言わば隔世遺伝をしたのだろうが、ものの仕草や短絡的な早飲み込みなぞで後悔する処なぞ瓜二つである。その点、妻の父(義父)には似ず、唯一点だけ強いて似ている点を上げるなら実に臆病者であるという事だ。ボクの父は大胆で行動力があったが、義父は用心に用心を重ねるタイプの石橋を叩いて渡る人だった。心配事があると神経性の腹痛を起こしてトイレに駆け込む。愚息もそのタイプで、ボクや妻から観れば大した事で無くとも大袈裟に考えて余計な心配をする。

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 遺伝というものは良い所は似ず、悪い所が似るようである。目立つからそう思うだけの事なのだろうが、父や義父の悪い点を受け継いだ愚息にも良い点はある。が、それを殊更自慢したり不遜になったりするから困ったものだと想う。高が狭い世界でしか生きて来なかった人間が、威張ってみた処で世界は広いのだから人は笑うだけの事だ。それで、損をしていると言う事が分からない世間知らずだから親として困ったものだと想うのである。しかし、本人は親の言う事なぞ聞く耳を持たないから自分で頭を打って分かるしかない。確かに父も義父も学校での成績は良かったという。大学もそこそこの国公立に合格していて、愚息もその点だけは似たようである。しかし、唯それだけの事で他には何も無い。

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 手先はどちらの親も不器用だった。ボクは母方の祖父に似て手先は器用な方だ。だから愚息の不器用さは手先だけではなく生き方にも表れている。親からの遺伝よりも隔世遺伝の方が出易いのだろうか。だから趣味の世界もボクや妻と全く違って、例えばガーデニングや絵画やデザイン面に関しては全く駄目で、音楽も楽器に関しては先ず出来ない。ギターをやりたいと言うから買ってやったのに基本の調弦からして音階のとり方も出来ない。折角教えても何の役にも立たず、とうとう投げ出してしまった。先ず根気が無いのである。自己をコントロールする能力に欠けるのだろう。だから親に向かって暴言を吐いても自分で自制出来ず、モノに当たって壊すしか無いから、相手にしない事に決めている。

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 理路整然と話が出来ないのは妻の系統なのか、ボクの母方の系統なのか分からないが、いずれにせよボクとは全く思考回路が違うのだ。だから口論になっても自分の言っている事の整合性が無く、感情の赴くまま口から吐き出すだけだから喧嘩にならず、ディベートにもならない。幼児と話をしている様なもので、それならココと話している方が明瞭な場合が多い。ココは腹が減れば餌かお八つをねだり、嫌なら嫌とソッポを向くし、眠ければ眠いでサッサと自分の寝床へ行く。外に出たければドアの前で立ち止まり開けて貰うまでジッと待っている。啼けば分かるのに黙って居るから静かではあるが、こちらの気付くのが遅いと時間がかかり、ココはイライラとして部屋を徘徊する事になり、やっとボクや妻は気付くのである。

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 ペットよりも劣る人との関わりで平気で居られる訳は無く、会社勤めをしようが自分で何か特技があったにしても対人関係が基本だから、唯我独尊では人は寄り付かなくなるだろう。とまあ、人並みの事を心配するのも血の繋がりがあるからこそで、本当の処はそういう情に溺れるような関係には成りたくないのだ。自分の経験と同じ様には行かない事は分かっているのだが、本人の為にと想った処でそれは親の勝手な思い込みだろうから好きにすれば良いと出来る限り無視する事に決めているのだ。一つ屋根の下で共同生活をしながら変な他人が一人居るような感じさえする。居候ならまだ神妙な処があるが、大威張りで虚勢を張っているから父と子の対話というものが無くなってしまい、妻とひそひそ話をしている有様だ。

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 自分の子だけに始末が悪い。情を武器に甘えて来て、理性では話が出来ないとなると、ボクのように青春以後の家庭の味や親子の情というものを知らない人間には今更、世間一般の親子の情というものだけでは意志の疎通は図れないのだ。寧ろ他人の方が理解し易いぐらいだ。しかし、理解した処で他人は他人でしか無い。矢張り血の繋がりがモノを言う場合が多い。だが、敢えてボクはそれを拒絶する。他人であっても遠くの親戚よりも親しい場合もあるからだ。人と人との繋がりが単なる血の繋がりだけで成立するなぞと寝ぼけた考えが嫌なのである。他人でも一期一会で肉親以上の親しみや情を感じる場合さえあるのだ。三国志演義ではないが、男と男の友情で成り立つ人間関係は今の時代にも立派に在ると想うのである。(つづく)

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