恋愛病院『ラブホスピタル』

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ミヤマカタバミ


携帯の請求書や、ピンクチラシと一緒に、手紙が一通。
差出人を見ると、懐かしい名前が刻まれていた

「幸介…」

2年前に別れたアイツから
突然の手紙が届いた

本気で愛していたアイツ
夢を追いかけて、上京するときに…フラれたあたし

あたしは、バックに郵便物を押しこめ
急いでエレベーターに向かった。
エレベーターで、ほんの10秒のところに家があるのに
その時間が、とにかく長かった

エレベーターのボタンを意味もなく何度も押し
早足で家のドアへ行き、鍵をバックから探す
慌てる手が、上手く鍵をはめてはくれない
「なによ…もう」

ドアを開け靴を乱暴に脱ぎ電気をつけ
ベッドに座り、手紙をバックから取りだした


…開けなかった
あんなに、待ちつづけていた男なのに

3回の深呼吸の後…
手紙をあける。

『久しぶり。元気だったか?』

彼の文字が、あたしの凍りそうだった心を
ゆっくり溶かしていた

『実は俺、来月結婚するんだ』

その瞬間、目の動きが止まった
そしてゆっくり手紙をテーブルに置き一晩泣いた
泣いて泣いて…

そんな日から、一ヶ月が過ぎた
テーブルには、読みかけの手紙が置いたまま

朝、仕度をする時も
夜、お風呂から上がってきても
そして眠る、その瞬間まで…

手紙の存在を忘れることが出来なかった
彼の存在と同じように…

ある日の夜中、フラフラになりながら家路に着いた
強くないお酒を友人が止めるのも聞かず飲み続けた

ベッドにうなだれるように倒れこむあたし。
フと目をやると、読みかけの手紙が…

あんなにためらっていた手紙を手にとって
読みなおすあたし

『お前と過ごした時間がなければ、俺は今の自分で頑張ることが出来なかった。
お前の気持ちを無視して別れ、挙句の果てに結婚なんて…むしの良い話だと
きっと怒るだろう。それでも良い、恨んでも良い。
だけど俺はお前を一生感謝し続ける』

「バカやろう…」

ベッドに貼られたままの、二人のプリクラをはがし
手紙と一緒に燃やした

「おめでとう」

やっと言えた言葉だった

* * *

【ミヤマカタバミ】喜び


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