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敵対的TOB?
北越製紙 <3865> は24日、王子製紙 <3861> が前日発表した経営統合提案に関連し、三菱商事 <8058> に対する第三者割当増資および業務提携を撤回しないとの方針を発表した。北越製紙は、三菱商事との業務提携について、「同社の国際的な信用力と取引基盤を活用することで、さらなる成長につながる」としている。
北越製紙の三輪正明社長は24日夕、記者会見し、王子製紙による統合提案について「三菱商事への第三者割当増資の撤回に応じるつもりはない」と述べた上で、「王子製紙は提案を撤回するようにお願いしたい」と拒否する姿勢を改めて表明した。さらに「今後も自主独立の成長戦略にいささかも揺るぎはない」と強調した。
池田裕彦・大江橋法律事務所弁護士の話 これまで新興企業がTOB(株式公開買い付け)を仕掛ける動きが相次いだが、潜在的に大企業によるTOBも増える可能性が高まっている。実際に大企業から相談を受けるケースが増えている。王子製紙によるTOBの今後の展開だが、北越製紙が資本提携を決めた三菱商事に第三者割当増資による新株発行すれば、王子製紙は差し止め訴訟を起こすだろう。北越製紙は増資を設備投資のためと説明している。ただ、王子製紙が7月3日に統合提案をしていることからタイミング的に支配権の維持が目的であるとうかがえる。
北越製紙が24日に都内で開いた記者会見で、王子製紙が経営統合実現への条件とした北越製紙の三菱商事に対する第三者割当増資と業務提携の撤回について、三輪正明社長はこれに応じる考えのないことを改めて強調した。三輪社長は会見で「三菱商事との提携による信用力向上と海外とのネットワーク強化で自主独立による成長はゆるぎないものとなる。自主独立路線で株主価値を高めることが出来る」と述べた。
会社側は、王子製紙の経営統合案のデメリットについて、新潟工場の社員一人当たりの生産性が統合によって薄れる点や、従業員のモチベーションの低下など挙げた。ただ、両案の具体的な比較数字を用いて三菱商事側との提携の優位性を株主に対して示す必要があるのでは、という報道陣からの質問に対しては、「現時点では王子製紙からTOBをかけられたわけではない。かけられれば当然示す」と述べるにとどめた。
今回の会見で北越製紙の経営陣からは、王子製紙側から7月3日に示した経営統合提案について、「提案とは認識していない。あくまで一連の打診のひとつにすぎない」との発言が繰り返され、両者の間の溝の深さをうかがわせた
王子製紙は24日、都内で説明会を開催し、北越製紙との友好的な経営統合に向けて努力を続ける考えを改めて示した。篠田和久社長は「商社とメーカーの組み合わせよりも、メーカー同士の方がよりシナジー効果を発揮できる」と述べ、王子製紙側の提案の優位性を強調した。
会見ではまず、この日の午後に行われた三菱商事との会談内容についての説明が行われた。21日に発表された北越製紙の三菱商事に対する第三者割当増資と業務提携について、三菱商事側からは「すでに契約が成立しているため、撤回はできない」との回答があったという。また、今後の対応については、「両方の案を北越製紙が株主に説明するのが先決」として、北越製紙の対応を見守る考えで一致した。
その後、改めて今回の経営統合の狙いやメリットについて説明が行われ、紙パルプ業界における東アジア市場の一体化の進展と、これに勝ち抜くための設備効率化の必要性を訴えた。「会社を跨いだスクラップ&ビルド」が柱で、2008年末に運転開始予定の北越製紙の大型新鋭設備=N9(年産35万トン)を有効活用する半面、「コスト劣位のものからスクラップを行う。20万トン以上は王子側で出来る」(篠田社長)と競争力強化への考え方を示した。
また、独禁法上の問題について、篠田社長は「日本製紙と大昭和製紙が統合した2000年当時とは状況が違ってきている。海外との競争力について当局が意識し始めて、ガイドライン見直しの機運が高まっている。現時点で大きな問題があるとは考えていない」と述べた。
8月1日 新たな展開
製紙業界2位の王子製紙は1日、北越製紙への敵対的株式公開買い付け(TOB)の実施を決定したと発表した。最大で1658億円を投じて全株式を取得する。提案している経営統合について北越紙の経営陣の賛同が得られないなか、北越紙の株主に提案の是非について直接判断を仰ぐ。
北越紙が三菱商事への増資を実施することを前提に、王子紙は1株800円で北越紙株式を買い取る。TOB期間は8月2日から9月4日まで。最低で北越紙の1億81万8239株を806億円で買い取る。この株式数を買い取った場合、王子紙の北越紙保有株は、既存株を含めて50.0004%(増資実施後の比率)になる。
増資が実現せず、北越紙と三菱商事の業務提携が撤回された場合、王子紙はTOB価格を7月23日に表明した860円に引き上げる。
王子紙のフィナンシャルアドバイザー(FA)は野村証券で、法律顧問は長島・大野・常松法律事務所。野村証の法律顧問は西村ときわ法律事務所。北越紙は王子紙がTOBを実施した場合、クレディ・スイスをFAに起用する予定にしている。老舗企業の王子紙が敵対的買収に踏み切り、国内最大手の野村証がFAに就くという、日本のM&A(合併・買収)の歴史で画期的な案件が実現する。
M&Aに詳しい中央青山PwCコンサルティングの新木啓之M&A担当エグゼクティブコンサルタントは「日本を代表するオーソドックスな王子紙と独自路線にこだわる北越紙は企業文化が違い過ぎる。王子紙が北越紙の過半数の株式を取ったとしても統合効果を発揮することは極めて困難だろう」と指摘した。
王子紙、統合効果を強調
王子紙は自身の豊富な経営資源と北越紙の効率的な事業運営を合わせれば、規模と効率を拡大できると強調した。自身の小型老朽設備と北越紙が増設する塗工紙生産設備で効率的な生産体制も確立できるとしている。また、輸送・販売、技術面での相乗効果も大きいとして、北越紙との統合効果を強調している。
同時に、統合提案について懸念を示している北越紙労働組合について見解を発表、「従業員に不利益を及ぼさないこと、北越製紙の一体性と文化を尊重することは提案の基本」として従業員を重視する考えを強調した。
王子紙の篠田和久社長は都内で記者会見して「友好的な段階は過ぎた」と述べた。王子紙は当初、北越紙による三菱商事への第三者割当増資の撤回を条件としていたが、その結論前にTOBを開始する理由について「増資は事実上撤回されないと判断した」と述べ、北越紙との統合を最重要視してTOBに踏み切ったと説明。当初の条件とも「矛盾は感じていない」と語った。そのうえで「TOB成功は確信しており、『票読み』もしている」と述べた。TOB開始後も機会があれば北越紙側と話し合う意向も示した。
王子紙の枝川知生執行役員経営企画本部長は記者会見後、ブルームバーグ・ニュースの質問に答え、TOB成功の自信の根拠として、野村証券とともにファンドを中心した株主の動向を見極めたことや、株価にプレミアムを付けた場合の株主の動向などの経験則を挙げた。ただ50%取得できる確約を取り付けているわけではないとも語り、「株主に信を問いたい」と強調した。
北越紙は2日対応を発表
王子紙の敵対的TOB実施について北越紙は「王子紙の提示は初めのものとかなり内容が違っているとの印象。あす早朝に全役員を招集し対応策について決議し、すみやかに発表したい」(相沢重雄・北越紙総務部副部長)とコメントした。
王子紙は7月3日、経営統合提案書を北越紙に提出して1株860円でのTOBも提案した。これに対して北越紙は買収防衛策導入を発表、21日には三菱商事への増資と業務提携を発表した。これを受けて王子紙は23日にTOBの意向を対外的に表明して、北越紙に増資と業務提携の撤回を迫った。これについても北越紙は拒否しており、王子紙は北越紙の株主に直接判断を仰ぐ対応に踏み切った。
王子はTOBで、三菱商事への増資に伴う増加分を含めたうえで、北越株の過半数取得を目指す。応募が半数を超える場合は全株を買い付けるが、過半数に達しない場合は取りやめる。買い付け金額は総額806億円を予定。TOB期間中に増資が撤回された場合は、買い付け価格を1株860円に引き上げる。TOBで全株式が取得出来ない場合は、株式交換などの手法で北越を王子の100%子会社とする予定。
王子は7月3日、北越に経営統合を提案したが、北越は拒否。王子は同23日にTOB実施を軸とする統合提案を公表した。28日には北越側に「増資を撤回すればTOBは実施しない」と妥協案を提示したが、北越は再び拒否。経営統合をめぐって平行線をたどっていた。
◇北越製紙は沈黙守る
王子の発表に対して、北越製紙はコメントの発表や会見は行わず、沈黙を守った。ただ、北越は労使とも王子のTOBに強く反発しており、買収防衛策の発動に向けて第三者の「独立委員会」による検討を始める見通しだ。また、王子のTOBが不成立になるよう、増資に応じることを表明した三菱商事などの株主にTOBに応じないよう、安定株主対策に力を尽くすとみられる。
北越の防衛策は、第三者の独立委が「敵対的」と判断すれば、新株予約権を無償で買収者以外の株主に割り当て、王子が北越の経営権を握るのを難しくする仕組みだ。独立委は王子の行動を「敵対的」と判断する可能性が高いが、実際に買収防衛策が発動されれば、王子は裁判所に差し止めを請求して法廷闘争に発展する公算が大きい。
◇三菱商事「決定に変更はない」
三菱商事は1日、王子製紙がTOB実施を決めたことを受け、「(北越の増資引き受けの)決定に変更はない」(広報室)とのコメントを発表した。TOBが実現する可能性は低いとみていただけに、「想定外のシナリオ」となった形だが、今後はTOBに応じる可能性を含めて対応を検討することになりそうだ。
8月30日 (おそらく最後のコメント)
王子製紙は29日、北越製紙に対して実施中の敵対的TOB(株式公開買い付け)
について、株式の取得目標比率の引き下げなどの条件変更を行わないと発表した。
同日会見した篠田和久・王子社長は、北越製紙側の徹底した安定株主対策で、
既に「50%超の取得は非常に困難だ」と指摘。これは「TOBの敗北宣言だ」と
認め、今後、北越株主への勧誘は打ち止めにすると言明した。これにより、北越の
新潟の最新鋭工場を活用し、自社の生産体制刷新を狙った王子の戦略は頓挫
した形。王子は代替戦略として、500億~600億円をかけて、生産能力30万トン
規模の新型設備を導入すると表明した。老朽設備の廃棄についても「速やかに
決定する」
とのこと。以前から読んでくれている方は、よくわかると思うのだが、TOBを
かけるということは、TOBが間違いなく成功するということを前提に全ての戦略を
進めていくもの。この話は、ニッポン放送に対してのTOBをかけていた
フジテレビがライブドアの出現によってTOBが失敗に終った際にここによく書いて
いた話。このとき失態を演じたのが大和証券。今回ちなみにこの王子製紙に
ついていたアドバイザーは野村証券。王道で攻めている印象が強かったのだが、
TOBやM&Aというのは必ずしも王道だけでは片付かない。そういうことや周りを
固めたり、足で稼ぐ、汗をかく、というような地道な作業をしっかりしないから、
大和証券が後手に回ったフジテレビ時のように、野村證券も失態を演じてしまう
結果になった。実際に外資の投資銀行でこういった事例の最前線に関わって
いた私、ぽんたは、外野にいながら双方の動きが手にとるように分かる。
明らかに相手の方が何枚もうわてだった。上手くやられてしまったね。北越
製紙にも、日本製紙にもついているのは外資系の切れ者アドバイザー。どうやら
ゲームの勝負がついたようだ。
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