2002/03/23
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「エーメ」で検索しても「フランス名作集」で検索しても引っ掛からない。中央公論社「世界の文学」のうちの一冊「フランス名作集」からの一編。ごく短いもの。
 シンプルな話。ある日サーカスの小人が突然身長が伸び始めた。大きい小人は何の役にも立たない。容貌もすっかり男前になってしまった小人を見て団長は悲嘆にくれる。サーカス仲間には「小人は病気で入院した」と告げる。仲間たちは気のいい小人のことを思い涙を流し、かつての小人を誉めたたえる。だが、小人ではなくなった主人公にとっては、過去の自分をいくら誉められたところで、何の役にも立たない。自分はもはや小人ではなく立派な一人の男となったのだ。小人の時ならば気安く膝に乗せてくれたサーカス一座のマドンナに甘い言葉を囁いても、女にとっては数限りない求婚者たちと同じ程度の人物だ。彼女が可愛がった小人は病気となってしまったし、立派な男前の人間なんていくらでもいる。
 そうして主人公はサーカス一座では役立たずとなり、やがて観客席からマドンナに拍手を送る。団長はそれを確認して仲間の一人に「小人が、今死んだよ」と告げる。それだけの話だ。
 過去の自分は自分ではない。数分前の自分と今の自分とでは、既に「数分前には一度も思ったことのないこと」を思ったりしているし、何度か息をして、数分寿命が縮まっている。小人時代の称賛を小人でなくなった者がいくら受けたとしてもそれは無意味である。
 過去に何かやらかした、名声を得た、人気を博した、もてた、苦労した、頑張った、それらは全て過去である限り、現在の自分には多少影響しているとしても、ほとんど意味を為さない。そして現在もすぐに過去となる。今書いたこともすぐに過去の自分という他人の書いたものとなる。過去の自分を見る目は常に客観的であらねればならない。過去の自分のした事を利用し、応用し、未来に繋げるのは構わない。過去の自分に満足し、成長を止め、生きながら死んでゆくようなことは現在の自分を殺すようなものだ。
 自分にとっては当たり前のことですが。
 とりあえず短いながらも素晴らしい一編だった。





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Last updated  2002/03/23 04:04:13 AM
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