2004/08/03
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カテゴリ: 海外小説感想
 眠れず、布団の上を這っていた子蜘蛛と羽虫を叩き潰した。隙間の空いた窓の傍に白い服を放り出しており、格好の呼び込み餌になっていた。道端に落ちている蝉を拾い上げた男の子はその年頃に似合わない冷めた目で興味なさそうにバス亭のゴミ箱へ蝉を投げ入れた。近頃猫を見かけない。
 アマゾン駐留部隊の兵士が現地の女たちに乱暴する事件が多発しているのを憂慮して、軍は極秘に売春婦たちで組織した部隊を作り各地の兵士たちへの慰みものとする計画を立て、主計課の将校、パンタレオン・パントハ大尉をその隊長に任命する。不幸な事に、その任務を彼はあまりに見事にこなして大成功してしまい、極秘に小規模どころか何十人もの娼婦を抱え、彼らの部隊の飛行機をアマゾンの子供たちが追っかけ、「パンティーランド」の通称で、その楽園を利用出来ない民間人の反感を買うことになり、ラジオには叩かれ、軍上層部の思惑とは全く違った結果になってしまう。
 動物の躯を十字架に貼り付ける聖者の作る宗教団体にパントハの母親が関わるなど、パンティーランド一辺倒の話ではないところが相変わらずリョサの味で面白い。『若い小説家に宛てた手紙』十一章「通底器」を読んでいた時、リョサが例に挙げたフォークナーの小説や『ボヴァリー夫人』よりも、本書を念頭に置いて理解した。
 今日もうまく眠れない。


1986年 新潮社





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Last updated  2004/08/04 01:02:24 AM
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