2004/10/29
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カテゴリ: 詩集感想
 角川書店、カラー版世界の詩集第二期全八巻のうちの一巻。1972年刊行。巻末の彼の年表は1971年で止まり、まだ存命中であった。1973年9月、心臓発作を起こした彼の元への救急車出動要請を軍は無視し、逝去。69歳。
 白川静が文化勲章貰い、94歳だと初めて知る。すごい。
 映画『イル・ポスティーノ』で冴えない男に詩で女を口説く術を教えてた老人の印象しか抱いていなかったので、彼の政治的側面はあまり知らず、そういえば映画の最後はデモに参加した冴えない男の詩の余韻で終わっていたことを思い出し、それほど好きになれなかったはずの(詩で女口説けるとこ)映画なのに、思い出し感動をした。
 1936年、スペイン内乱で親友のガルシア・ロルカ死す。

  フェデリコ・ガルシーア・ロルカへのオード

もしも 野の一軒家で 恐怖にふるえて泣くことができたら
もしも われとわが眼を抉りとって 食べることができたら
ぼくはそうしただろう 喪服をきたオレンジの木が
あげたようなきみの声のために
きみの叫びながら迸りでた詩のために

~略~

きみの家に
ぶち割られたくちびるで 夏がやってくる
断末魔のぼろをまとった たくさんの人たちがやってくる
悲しい栄養にかがやく かずかずの地区がやってくる
死んだ鋤とひなげしたちがやってくる
惑星と血のついた名刺がやってくる
灰だらけの潜水夫たちがやってくる
長い刀で刺しつらぬいた処女たちを引きずって
仮面の男たちがやってくる

~略~

もしも むごい匕首がぼくらを探しまわっている
この夜のために
心臓をぶち抜かれた人間が死にかかっている
この日のために この夕ぐれのために
この崩れおちた片隅のために
詩があるのでないとすれば
いったい 詩はなんの役にたつというのだろう?

~略~

これが人生だ フェデリコよ
ぼくが 血気さかんで憂鬱な男の友情として
きみに差しだすことのできるのがこれだ
きみはもうきみ自身のたくさんのことどもを知っている
だんだんきみは ほかのひとたちのことをも知るだろう


 ロルカへの思いはおいといて(長谷川四郎訳のロルカ詩集は大好きだけど手元にない)、役者が演じたものとはいえ、動いて喋って詩を語る老人のイメージを映画で知っていると、詩と詩人の結びつきが近く、言葉を受け止めやすい。

来て見てくれ 街街に流れてる血を
来て見てくれ
街街に流れてる血を
来て見てくれ 街街に流れる
この血を!

『そのわけを話そう』より


 メキシコ市の壁という壁にはりめぐらされたという『スターリングラードに捧げる愛の歌』に関しては、時代の空気に今ではついていけない感もあるので通り過ぎた。
 古代インカ帝国やゲリラの英雄を謳った詩はいいのに、愛の詩は私には退屈だ。なのに詩人は誰もが愛を謳うから厄介だ。

角川書房 1972年


参照: チリ年表 その5 人民連合圧殺の時代 1973年9月





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Last updated  2004/10/29 10:40:42 PM
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