2006/01/01
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カテゴリ: シュートなお話
その男に肩を叩かれたのは、ちょうど0時の鐘が鳴り始めたときだった。

…探しましたよ!
寒さのためか唇を少し震わせてその男は、俺に言った。

…アナタでしょう、アナタに間違いないですよね。
なんだか酷く興奮した様子で、男は俺に問いかけた。

…アナタ、戌年の戌の日の戌の刻に生まれた年男ですよね。
鳴り響く鐘の音にも負けないくらい大きな声で男は俺に確かめた。

確かに、俺は年男だが、戌の日戌の刻だったかどうかまでは知らない。そう男に言ってやろうと思ったのだが、あまりに鐘の音がうるさくて、面倒になってしまった。
男は、満足そうに頷くと、
…ああ、これで、無事に年が越せる。
と、言いながら、俺に何かを渡そうとした。

一瞬、やばいような気もしたのが、最後の鐘が鳴るのにあわせて、男は俺にその箱らしきモノを渡すと、
…あとは、よろしくお願いしますよ。
と、言うと、コートを翻して足早に雑踏に消えて行ってしまった。

鐘が鳴り終わると同時に、そこかしこで花火が打ち上げり、人々の歓声が響くのが聞こえてきた。
一人取り残された俺は、今のはなんだったのかと首をかしげながら、男が残していった箱を開けてみた。

箱を開けると、昔の御伽噺に出てくるような白いひげで白装束の杖を持った小さなじーさんが、ちんまりと座っていた。
俺と目が会うと、じーさんはやおら立ち上がると、

コトシハ オマエダナ。

と、言った。

そして、俺が答えるのを待つまでもなく、

サア ライネンノ トシオトコヲ サガシニイコウ

と、言うと、あまりのことに呆気に取られている俺を、

オマエガ サガシダサナイト ライネンガ コナイゾヨ
サガシダスマデ ワシハ オマエカラ ハナレナイノダゾ

と、叱り付けた。
おどおどしている俺が、それでもじーさんになんでだと尋ねると、

ワシハ トシガミジャ
ヨルトシナミデ トシオトコヲ ジブンデサガスノモ メンドウニ ナッタデナ
ヒトサガシハ ダレカニ サセルノガ イチバンジャヨ

と、言ったのだ。





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最終更新日  2006/01/01 06:16:58 PM
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