こけだまのつぶやき がんになって今思うこと

こけだまのつぶやき がんになって今思うこと

看護婦さん



でも、毎日される点滴が苦痛でした。点滴そのものが、ではなく

血管が出なくて針を何度も挿されたり、漏れたりすると痛くて。

本人にとっては辛いものでした。

漏れてしまうと又やり直しになるので、また針を刺す場所がなくなり・・・と

悪循環を繰り返すのです。

手の甲が紫色になり、たまらず点滴をぶら下げてナースステーションまで行き

「漏れちゃった。痛い」と泣きを入れたりしていました。

楽しいこともないし(当たり前だけど)ふさぎこむ毎日。

私は髪の毛を毎日洗わないと気持ち悪いほうなので 

手術が終わるとすぐに看護婦さんたちに

「ねぇ、髪の毛洗いたい」と言って困らせていました。

当時肩の下あたりまでの髪を伸ばしていて、洗いたくて洗いたくて仕方ありませんでした。

洗髪許可が降りたのか、ある看護婦さんが「髪の毛洗おうか?」
と言ってくれました。

お風呂はまだダメなので 床やさんのような洗髪台で髪を洗ってもらいました。

洗髪が終わるとドライヤーで乾かすのですけど、その看護婦さんは丁寧に丁寧に

私の髪の毛をとかしながら乾かしてくれたのです。

途中で他の看護婦さんが「自分でできるんだからやらせたら」と注意してきました。

でも、その看護婦さんは「いいの!」と言ってずっと優しく乾かしてくれました。

特に何を話す訳でもなかったけど、ゆっくりゆっくり乾かしてくれた。

その時、私はこの看護婦さんがただ洗髪してくれた訳ではない、ということに気がつきました。

ふさぎこんでいる私を元気づける為にしてくれていたのです。

秋の午後、髪をとかしながら無言で励ましてくれていたのです。

あのときの看護婦さんは本当に天使のようだった。

産婦人科の看護婦さんは助産婦さんが多いせいか年数が経ってもあまり異動がないようです。

退職される人は別ですが、当時の看護婦さんの中には今も現役で働いていて、病棟や外来で
顔を合わせたりする人もいます。

でもこの時の看護婦さんとは退院以来会うことがないので少し
残念に思っています。

今度も私は術後2週間経てば退院できると思っていましたた。

でも主治医の先生から回診の時

「身体が回復したら化学療法をするからもうしばらく入院してね。」

と又も駄目だしをされて落ち込むことになるのです。

私はこの2年前に実の父親をガンで亡くしていました。

身内にガン患者がいると 先生の

「おでき」とか「化学療法」という言葉が何を指すのかちゃあんとわかってしまうのよね。

(抗がん剤やるのか)と思ったけれど口には出せなくてただ黙っていました。
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