宗教監禁被害者「心のネットワーク」

宗教監禁被害者「心のネットワーク」

(3)監禁脱会者による独自の世界への「囲い込み」



○脱会と記憶の塗り替え作業

 さて、脱会者はたとえ脱会を決意してもその後、統一教会時代に自分の出会った「神体験」を相対化するまで安心できません。
 たいていは、脱会確定後もマンションで一定期間過ごしながら「神体験」を一つひとつ塗りつぶし、
「あれは神の声ではなく悪霊のささやきだったのだ」
 もしくは
「神体験ではなく思い込みだったのだ」
 どちらか路線で整理する作業が必要です(前者と後者は流儀や聖書に対するアプローチが違う)。
 私は、いくつかの監禁事例をふまえた上で、本人失踪後、実際に脱会するかどうかが決定するのは、約1ヶ月半後。それ以降は記憶の塗り替え作業で、これに数ヶ月(2、3ヶ月から半年、あるいは1年近く)を要すると考えております。
 教会に送られてくる脱会通知書の多くは「統一教会の影響が及ばないところで、家族と私だけでしばらく静かに考えていました。監禁ではありません」など書かれていることが多いですが、確かに最初の1ヶ月半を通過して脱会が決定した後は、監禁説得ではなく本人の整理期間と分類でき、ゆるやかな軟禁程度の状態に移行していることが多いように思われます(もちろん個別差はありますので誤解なきよう)。ですから脱会書の言うことはあながち嘘でもないということになります。


○リハビリ=監禁説得への参加

 さらにマンション終了後はリハビリと称して、脱会者間で共同生活をして、監禁説得などの反対活動に携わるケースがよく見られます。

 新たに説得する側は、多くの人がその説得によってやめていくという姿に触れて「やっぱり自分は正しかった」と安心し、説得される側は多くの脱会者の姿に触れて信仰を失って行く。その結果として脱会者だけの独自的な世界が形成されていくことになります。
 逆にこの脱会者だけの世界についていけない人も生じます。
 こうした人は脱会者コミュニティからフェードアウトする、またははじき飛ばされると考えられますが、こうしたいわゆる健全な人であっても、脱会者のコアメンバーが睨みをきかせており、自分の家族に影響力をもっている状態ならば、統一教会との交流をしたいとはまず思わないでしょう。そう、二度目の監禁可能性があるからです。
 ひっそりと、目立たないように。
 脱会者にとっては、それが安全への道なのです。

○そして、再監禁の可能性

 ある時期、所属教会の了解を得て、その教会内の監禁件数を調査したことがありますが、まず監禁例の10例に3例以上が、2度目もしくは3度目といったケースがありました。ご想像ください。監禁後に統一教会に戻ったとしても、その何割かは確実に、再監禁の被害にあっているのです。
 また、いわゆる線の細いメンバーに対しては、牧師が「この説得以降、統一教会とはコンタクトをとらないように。もし戻ったら、ヒドいぞ。俺を裏切るなよ」などと、二度目の監禁を匂わせて脅しをかけてきた例もありました。
 これほどの長期間に渡る綿密な思想改造と、コアなコミュニティへの囲い込み。横行する監視と脅し。
 これでは、本当によほどのことがなければ、脱会者が統一教会と交流をしたいとは考えないでしょう。


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