**No.15**

あれからどれだけ経っただろう。

あたしは駿に抱きついたまま何も考えられず、ただ涙を流していた。

駿は黙ってあたしをずっと抱きしめてくれた。

そして時々「ゴメン・・・」と言った。

遠くから人の声が聞こえてきて、やっとわれに返った。

顔を上げて、「駿・・・ありがと・・・」と言って少し笑った。

「あたしね・・・尾崎裕二に告られたんだ・・・」

「え・・・」

「・・・でもね・・まだ返事してない・・・」

「・・・・」

「なんでかな・・裕二の事が好きって思うと駿の顔が浮かんだ・・・今日こんな事

もあったし・・・」

「・・千紗はどうするつもりなんだ?」

「・・・分かんない。・・正直自分の気持ちが自分でも分かんないの・・・」

「・・・そっか・・。でも俺諦めないよ?尾崎が千紗の事好きでも絶対。やっとこ

の言葉を言えたんだ。」

そう言った駿の顔はとてもかっこよかった。

「ゆっくりでいい。どっちにするのか・・・千紗自身の気持ちを聞かせてくれ。

それまでずっと待ってる。」


この人を好きになってよかった・・・・

この好きって気持ち消したくない・・・・


こんな事を考えてたらまた涙が出てきた。

「ご・・・ごめん・・・最近涙もろくて・・・はは・・は・・・」

袖(そで)で涙を拭いてるあたしを、駿はまた抱きしめた。

「もう・・無理しなくていいから・・・」

拭いても拭いても涙は出てきて、止まってくれなかった。

「・・ん・・うん・・・」

駿はまた、あたしが泣き止むまでずっと抱きしめてくれた。

ほんとに嬉しかった。



「今日は・・・ホントにありがとう・・」

「ああ・・」

「じゃ・・・また明日学校でね・・・バイバイ」

「またな。」

その日はあまり眠れなかった。

裕二の事が好き。

・・・でも駿も好き。

どうしよう・・・・

どっちが上かなんて分かんない・・・

2人ともあたしにとっては大事な存在なのに、どっちかを選ぶなんてやっぱり

あたしには出来ないよ!!!

朝日は徐々に光を放ってきていた。

朝が近い。 **続く**











































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