サイボーグ023

サイボーグ023

第14話 キジル千仏洞


フロントがある受付棟を中心として、
両側に2階建ての客室棟が広がっている。
ホテルというより洒落た研修所って感じ。

客室に通されて荷物を置くとすぐにレストランへ。
何の変化もない、いつもの中華料理の昼食を、
これまた、いつもと同じビールで味わってホテルを出発。

向かった先はキジル千仏洞。
クチャ市内から西に70kmほどにある。

荒削りの岩肌を持つ山の間を縫うように走っていると、
いつのまにか天気も曇天になり、
見渡す限り茶褐色の世界。
まさに「荒涼」て言葉がぴったり。

「何かさみしそうな場所やんか」
おじさん、だんだん、不安になってきた。
ところが、心配無用。
山肌の切れ目から突然、水色と緑色が飛び込んできた。
それは、ムザルト河の細々とした水流と、
流域の低地に拡がる草地。
心なしか空も青くなってきている。

そのうち、前方の岩壁に奇怪な構造物が見えてきた。
ギザギザの斜面の一画に、
コンクリート造りと間違うような平らな外構えを持つ石窟が多数あり、
それらを黄色い手すりの通路や階段で結んでいる。
表現力の乏しいおじさんでは、
なかなか言葉にできないのが残念。

窟内は塑像がほとんど無く、
壁画がわずかに残っているだけで、
拝観が制限されている石窟もある。

3世紀から500年ほどかけて造られたらしいが、
誰がこんな凄い物を造ったのか。
拝観を終えて洞前の広場から千仏洞を見ながら、
柄にもなく、古代に瞑そうをふくらましていた。

ふと気づくと、
5才と2才くらいの姉妹がおじさんを見ている。
おじさんが、あんまり男前なもんでびっくりしてるのか、
じっと見てる。

「よっしゃー」
おじさん、意を決して手招きをする。
そして、近寄ってきた姉妹に
日本から持っていったキャンディーを渡した。
恥ずかしそうに、にっこりと微笑んだ二人の無邪気な眼を、
おじさんは今でも忘れられない。


© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: