サイボーグ023

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第28話 受難の始まり 


取れなかったのか、もう一つすっきりしない。
そこで、シャワーでも浴びようと浴室へ。
浴槽はあるものの清潔さは微塵も感じられない。
おまけに、レバーをひねるが何も出てこん。

仕方ないので、また服を着てフロントに。
ちょっと待ってくれと言うので、
ロビーのソファに座ってたら
「国際電話」という文字が目に入った。

異国の地ですっかり忘れてたけど、
おじさんには家族がいたんだ。
日本との時差は1時間なので、
まだ起きてる時間帯。
無性に声が聞きたくなり、
フロントに頼んで日本にかけてもらった。

電話に出たのは奥さん。
きっと、寂しくて、懐かしくて、泣くんじゃないかな、
なんて期待しながら
「みんな元気にしてるか?」。
おじさんにとっては、
最大限のやさしさと愛情を込めて聞いてみた。

ところが、答えは強烈でした。
「もう帰ってこんでいいから!」。
こうやって、おじさんが遊んでる間、
働きながら4人の子どもの面倒みてるんだから、
気持ちはわかるけど・・・。

おそらく、人生最後の日まで
忘れられないセリフを頂きました。
かなりの衝撃を受け、
子どもたちの声も聞きそびれ、
とぼとぼと部屋にもどった、かわいそうなおじさん。

気を取り直して「シャワーや、シャワー」。
もう一度、裸になって浴室へ。
でも、結果は同じで何も出ん。
すっぽんぽんで立ちすくむおじさんは
寒さに耐えかねて、シャワーをあきらめました。

「ぞくっ!」嫌な予感がおじさんを包みます。
かつて台北(タイペイ)では、
ゴルフ予定の日だけ大雨を降らす等、
奥さんの呪いは効果抜群で、
今までにもいろいろ痛い目に遭ってます。

それでも、これが、
この後次々と起こる災難の幕開けだとは夢にも思いませんでした。


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