マスターA、デビュー!



カウンターに座った私は、【アルバイトの女性】が代わっているのに気づきました。
そこはかとなく、華やいだ雰囲気が漂ようのはそのせいでしょうか?…
焼きトン屋さんのマスターは、今ちょうど60歳だそうです。
こないだ自分でそういってました。まあ、大体そのぐらいな?感じであります(笑)。

  * * *

マスター、なんとなくウキウキしております…
この人は嬉しいと、【口ウルサクなる】傾向があるようで…。
おしぼりのたたみ方など、いつまでもクドクドと指示しております…
バイトの女性(50歳くらい?、わりと若造りで可愛らしい風情の…ただ気が強そう)は、
うるさがって時々口をはさみます。
が、それがまた【可愛い】らしく、マスターは嬉々として
【あーだ、こーだ】を繰り返すのでありました…

  * * *

ふと見ると、一番目立つ柱の【ど真ん中】に新しいお品書きがあります…
 【カリブの恋】。
…良いネーミングであります。
ただ気にかかるのは、このお店ほかのお品書きには
英語など一切入ってない、という事なのでした…
【カブ漬け】・【自家製キムチ】、飲みものは【焼酎炭酸わり】・【ウーロン割】…。
…たしかにこの中では非常にめだつ名前でありましよう。

  * * *

(指さして)「マスター、これは甘いんですか?」
「お?う~ん、そうだな…甘酸っぱいぞ…【恋の味】だ。」
バイトの女性が笑っております。

「……解りづらい表現ですね、わりと。」
「まあ深く考えるな。飲んで見ろ。」
出された【葡萄色の液体】は、赤ジソの味と微かな酢の香りがしました…
「ウ~ン、これは旨い! 疲れがとれますねぇ!」
「なんだ、疲れてるのか? フム…、【カリブの恋】だ。」

でもこの【小洒落すぎたネーミング】は、ココに来るおっさん達にとって
【気恥ずかしくて】注文しづらいのでは…とも思われます。
思い切ってマスターにその疑問をぶつけてみました。

「そんな事はないぞ。これは【いい歳したおっさん】が付けた名前だ!」
「へ~、誰ですか?常連さん??」
…マスターはややうつむきました。
「…オレだ。【カリブの恋】だ…」
下町のマスター、まだ心のなかに【少年】が住んでいるようです(笑)…

※読み返してみると、自分で作った【飲み物】、
自分で命名するのが当たり前ではないかと…。
なぜ気づかんのだろう?オレ…

(04.3.18)


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