Lake Moraine ~Book Cafe~

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2009.11.25
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エマで 鮮烈なデビューを飾った森薫の最新作
あっちこっちで話題になっていてとても気になっていました。

今度の舞台は19世紀 中央ユーラシア
 数世代前に遊牧生活に別れを告げ定住化したエイホン家の
カルルクの元に 今も遊牧生活をつづけるハルガル家より
 アミルが嫁いできて 物語の幕があがります。

 カルルク 12歳、アミル 20歳 
びっくりの 年齢差ですが 
 この地方、この時代の結婚適齢期は
 14~5歳とのことで
 ちょっと若い花婿と 
 年かさの(ってまだ二十歳なんですが)花嫁との婚姻

幸いなことに 嫁いびりもなく
 第一話 ”乙嫁と聟花”(おとよめとむこはな) では

 二人の結婚式とカルルクの家族とむつまじく暮らす
          新婚生活の様子が描かれます。

 アミル 遠くより嫁いできたせいか
  彼女の身につけている服は
 カルルクの住む地方では随分と珍しく
   彼の甥っ子姪っ子達は 
     (でもカルルクとはせいぜい4~5歳違い程度)
   アミルの衣装に鵜の目鷹の目

 さらに遊牧の民らしく 持参した花嫁道具の弓を持ち出し
 見事な狩りの腕前を披露 
    その日の夕食はうさぎの肉のスープ

 第二話 ”お守り”  では

 カルルクの一番小さい甥っ子 ロステム登場
  彼は ご近所の大工のおじいさんの仕事にご執心

 精緻な文様の彫刻をほどこす柱作りの描写に
 主人公二人の部屋の模様替えの様子
 家の建築方法の話等をからめて描く手法は秀逸

 第三話 ”騎行” 

 カルルクの遠縁のおじさん一家に
  結婚祝いのお礼を言いに行くお話

 おじさん一家は今も遊牧生活をつづけているので
 この回では その遊牧生活をかいま見えると言う寸法

 騎乗のうまさ狩猟の醍醐味が堪能できます。

 第四話 ”アミルをかえせ”

 ほんわかなごやかなエイホン家にくらべ
 「娘を嫁がせた先の家族の土地は自分たちのもの」とか
 話している 不穏な空気をみせるアミルの実家から
  彼女の兄が二人の留守中に
 エイホン家を訪ねてきます。
そして
 開口一番 「手違いだったからアミルを返せ」

 そんな自分勝手な言い草が通るか
 もめてしまうなか エイホン家のおばあ様のみごとな
 一喝 with 弓射 で 一応その場はおさまりますが
 2巻以降への 不穏な雰囲気を感じさせます。

 第四話 "風邪"

 無事おじさん一家のところより戻ってきた二人
 疲労からかカルルクが風邪で寝込んでしまいます。
 あわてふためき 看病のために彼の側から
 片時も離れまいとする アミル

 その尋常ではない心配には
  末子が跡取りとなり
   歳若い嫁が歓迎されるという
  文化背景が物語る
  平均寿命の短さに考えがいたります。

いまさら この人の絵の描写力をとりあげる必要も
ないとは 思うのですが やっぱり凄すぎるの一語

後書きで じゃらじゃらが書きたかったとおっしゃってますが
民族衣装や 背景の 精密な意匠の素晴らしさを
あますところなく 描いています。
そして その描写も エマでは 時に描写に力が入りすぎで
物語がちょっと~と思ったときもありましたが

 今作ではああ~ ここを描きたかったのね~とは感じても
 物語の流れにごく自然にからんでいき
 この地方の習慣、風俗への興味を駆り立ててくれます。




中央ユーラシアに暮らす、遊牧民と定住民の昼と夜。
美貌の娘・アミル(20歳)が嫁いだ相手は、若干12歳の少年・カルルク。遊牧民と定住民、8歳の年の差を越えて、ふたりは結ばれるのか……? 『エマ』で19世紀末の英国を活写した森薫の最新作はシルクロードの生活文化。馬の背に乗り弓を構え、悠久の大地に生きるキャラクターたちの物語!








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最終更新日  2009.11.25 23:08:34
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