ねことパンの日々

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カレワラ 小泉保訳 岩波文庫

カレワラ 小泉保訳 昭和51年 岩波文庫

カレワラ

2年前、ふとしたことで手にとって読んだ本です。現在は絶版。

これは、北欧の国フィンランドに伝わるたくさんの伝説(しかもそのほとんどが口伝え)を、リョンロットという人物が収集・編纂し、ひとつの壮大な叙事詩に仕立て上げたというものです。
世界の創造から英雄の活躍、そこから生まれる悲喜劇の数々....。
壮大でハチャメチャで、意味不明。そしてかなりエッチ。(/ー\*) イヤン♪
しかしこうした性質は、他の地域に於ける神話・伝説にも見出されるものであって、そう珍しいものではありません。日本の『古事記』然り、ギリシャの『オデュッセイア』然りです。
この叙事詩の最大の特徴は、いま現在もなお、フィンランドの人々の人口に膾炙し、文化的バックボーンとしてしっかりと根付いているということです。

そもそも、この『カレワラ』がリョンロットによって編纂されたのは1835年。このときフィンランドはまだロシア帝国に従属する大公国であり、1809年まではスウェーデンの属領でしかありませんでした。しかし、大公国時代になってようやく、スゥオミ(フィンランド人は自分たちを指してこう言う)は、自らの起源を探求し、国家としてのアイデンティティを持とうという気風が生まれたのです。リョンロットの活動はそれに触発されたものであり、そして最も輝かしいものとなったのでした。
この叙事詩の発表により、フィンランドでは独立の気運が高まり、1917年、第一次世界大戦とロシア革命のどさくさに紛れて(?)ようやく独立を勝ち取ります。その活動の精神的支柱となったのが、『カレワラ』であったといいます。

生まれながらの老人(!)、スーパーおぢいちゃんで全知全能のヒーロー「ワイナミョイネン」、女の子大好きな暴れん坊「レンミンカイネン」、悲劇の男「クッレルボ」など、さまざまな登場人物が、歌や呪文を駆使して駆けめぐるさまは、広大で平坦なフィンランドの大地と、厳しくも美しい極北の自然を思い起こさせます。
もともと韻を踏む定型詩であり、それを節の変更無しに踏襲して訳してあるため、すらすらと読めるような類のものではありません。しかし、なかなかにハマリます。
これを読んで、ほんとうにフィンランドに行ってしまったひとを、私は知っています。
恐るべし....。

ちなみに、対訳も出ています。原語のリズムを味わいたい方はこちらもどうぞ。
ちなみに絶版です...。いい本ってすぐ無くなってしまうような...。
カレワラ対訳

(2005/10/3)



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