FFいれぶんのへたれな小説とか

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January 28, 2005
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カテゴリ: 七番目の魔法塔
 スケルトンやゴーストなどのアンデット族は、生前に強い思いを残して死んだ亡者の成れの果てだ。既に意思を持たない彼らは、亡くした体を求めるかのように、生きる者の臭いを嗅ぎ取り、襲い掛かってくる。
 彼らに鎮魂の念を抱くわけではない。そんな感情を持ち続けられるほど、冒険者を待ち受ける戦場は甘くは無い。
 でも、たとえそれでも―――
 トコは愛用のフルートに少しだけ力を込め、静かなバラードを奏でる。戦いの喧騒に掻き消されそうな儚い戦慄が、ぽっかりと開いた巨大な空間の中、ゆるやかに木霊する。
「――ほらよ、次っ!」
 シーフが次の標的の指示を出す。ナイトは迫り来る敵の攻撃をことごとく打ち払い、戦士は必殺の力を込め、巨大な両手斧を振り下ろす。やがてスケルトンは骨屑の山となり、ゴーストはうめき声と共に宙空に霧散していく。
「雑魚とは言え、これだけ数が多いと―――」
 肩で荒い息をつきながら、来た方と反対側に開く暗い穴から次々とあふれ出してくるアンデット達に、ヒトは舌打ちした。黒魔道士の大規模魔術で一掃でもしない限り、いずれこちらの方が根負けしてしまいそうだ。
「ルーツ!どこか抜け道は無いのかい!?」
「今探ってらぁ!」
 焦りを隠せず、ルーツは叫んだ。入ってきた穴は既に閉じ、唯一先に通じる穴には大量のアンデットが蠢いている。
(唯一通じてた道にこんなご大層な罠・・・)
 心の中で毒づきながら、短剣を振るう。
(絶対作った奴性格悪い―――)
 敵との斬撃をかわしながら、視線を配る。正方形の何も無い部屋は、唯一の穴を覗けば、規則正しい模様の描かれた壁に囲まれている。
(となるとやっぱ、頼みの綱は・・・)
 間隙を縫って、ルーツはトコへ駆け寄る。ヒトの文句が聞こえたが、とりあえずそれは無視することにする。
「トコ!さっきみたくどっかに穴があるはずだ!開けてこい!」
「え?そんな事言われても・・・」
 あたふたとするトコに業を煮やしたのか、ルーツはさらに声量を上げる。
「あーもう・・・いーから何とかしてこいっ!」
 そう言ってルーツはトコを蹴り飛ばした。顔から壁にぶつかったトコは、低くうめき声を上げる。
 その時ごろんと転がった黒いクリスタルに感応するように、壁にぽっかりと穴が出現した。
「ナイス!トコ」
「酷いよ~・・・」
 少し赤くなった顔をさすりながら、トコが立ち上がる。その姿に苦笑しながら、ヒトが号令を下した。
「よし、行くぞ!」
 トコを抱え上げ、ヒトが新たに出現した穴へ飛び込む。アンデットの群れに必殺の一撃を叩き込んだルーツとツィンの二人も、アンデットたちが怯んだ隙に後へと続いた。
 やがて元の無機質な壁面へと戻っていく穴を認めると、亡者達は低く呻き、静かに仄暗い闇の中へとまた吸い込まれていった。





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Last updated  January 28, 2005 02:29:05 PM
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