moonlight

vide esprit ―deux―



朝だ。
なのに起き上がる力がでない。

まただ。
最近いつもそう。
カーテンの隙間から差し込む太陽はいつも暖かいのに、
触れる為に手をのばすことさえしんどく思う。

ドアの向こうから声がする
「ねぇ、今日も。。。学校。。。行かないの?」
おどおどした母親の声。
あたしが何かしたってわけでもないのに、
最近---学校に行かなくなってから---ずっとそうだ。

「あと、先生から電話なんだけど。。。また。。その。。。でない?」
もちろんあたしは返事をしない。
返事をする元気があればとっくにここからでてってる。

「また、あいつはでてこないのか・・・」
下で父親の声がした。
そしてきっといつも通り母親に言うのだ。
「『あいつのことはお前に任せるから、何とかしろよ』」

ほら。
また言った。
あたしの事で父親は口を開くといつもそう。
『あいつの事はお前に任せるから―私は関係ないから。私に責任はないから―』
これを聞くと、ちょっとだけ母親に同情してしまう。
けど、あたしが同情したところで何にも変わらない。

あたしの拒絶はひどかった。
人間もそうだし、(特に父親のあの言葉を毎日聞くようになってからは)
食べ物もそう。
最初のうちはよーぐるととかをたべてたけど、
今はもう、水とサプリしか口にできない。

生きるのに最低限の栄養素だけとってた。
もぉ、いっそのこと何もかもをやめたかったけど、
それは苦しかったからやめた。
でも、このまま少しづつ、少しづつ身体が軽くなって、
中身もからっぽになって、
眠ったまま起きれなくなればいいのにって思う。

そして、家からあたし以外の人間がいなくなって、
いつも通りの毎日が始まる。

はずだった・・・

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