小説 こにゃん日記

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偉大な一歩



『どうして、旗はなびいていたんですか?』

人類史上初めて月面に、麦国のロケット・ポポロ11号が、到着したのは1900年だった。
月面に立てられた麦国の旗。
その写真は広く世界に展示された。
月の石も万博に展示され、時代はすっかりロケット・ブーム。
探検に参加した人たちは、一躍地球の英雄になった。

『答えてください。
どうして、空気のないはずの月で、
旗が、あんなにはためいていたんですか?』

突然のインタビューに、関係者はざわめいた。
見交わす顔と顔。
狼狽、怒り、不振・・・いつのまにか問題はうやむやになり、
今現在に至るまで、謎の解明はされていない。

『キャプテン!
我々が宇宙に行ったことも、嘘だと報道されてるんですよ!』
『どうせ3流ゴシップ雑誌だろう。』
『サビエトに先駆けて、月面着陸したかったから、
国家レベルの謀略だなんていう輩までいます。』
『負け犬どもの遠吠えだ。』
『このままでは、我々のあの苦労、努力、生死をかけた戦いが笑いものに!』
『人は信じたいものを信じるものさ。
この偉業は、我々だけでなく、国家、いや人類の願いなんだ。
中傷より、人類が月に立ったという歴然とした功績を信じるさ。』

心配顔のクルーの2人を、睨み付けるようにして、アーノルドキャプテンは厳しく言った。
『いいか!実は我々は、月面着陸をしていないなんて、絶対にしゃべるんじゃないぞ!』

足音もあらくキャプテンが、部屋から出ると、マイカスがぼやいた。
『いまさら言えるわけないよ。』
オルデリンもため息をついた。
『もう少しで月というところで、皆で祝杯の酒盛り、酔っ払ったあげく、
そのまま月を通過、宇宙で迷子になってたなんて。』
『ああ・・・あの時はもう駄目だと思ったよ。』
『それにしても惜しいな。
めちゃくちゃに航海したから、どこの星かもわからずじまい。
空気もうまかったし、美味な料理、我々より進んだ科学、友好的な宇宙人もいたのに。
帰りは宇宙人の転送装置で帰ってきたしなぁ。』
慰め顔で、マイカスがまあまあという。
『まあ記念に旗も立てたし、写真も撮ったし。』
『どうせなら科学の高度に進んだ都市を撮りたかったよ。
月っぽいところを探せってんで、あんな砂漠でさあ。』
オルデリンが突然大声を出した。
『俺たち、月に行くより偉大な事を成し遂げたんじゃないか!
どうして発表できないんだよ!』

『それがお役所仕事って物さ。』


*これはフィクションです。
実在の人物、団体や、歴史的偉業にはまったく関係ありません。


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