ProjectMeltDown

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Ver.White ACT1


瞳に映る惑星 Planet InYour Eyess
Ver.White act-1


       曲、入る。(2003/08/30でのお奨め曲は.soulの 『wherever...』
       曲に合わせてストロボが点灯している。
       7人の男女。
       ソファや椅子から立ち上がる者、ドアを開け入って来る者。
       まるで自己紹介でもするかのように、順次、ポーズをつける。
       それぞれ自分の恋愛の対象に強く視線を当てる。
       各自、一瞬の憂鬱。正面を向き、今度は微笑み。
       暗転。全員掃ける。

       曲、小さくなる。
       閉店作業中の喫茶店。
       ウェイターがシャッターを閉める。
       ウェイトレスがグラスを片づける。

       店長が椅子を引っ繰り返し、他の椅子に乗せる。


正樹    店長、おもて閉めましたー。

青木    じゃあ、エアコンとか確認しといて。

正樹    はーい。


       正樹、奥へ行く。


香織    洗い物、終わりましたー。

青木    香織ちゃん。悪いけど、トイレのほう見てきて。

香織    わかりましたー。


       香織、トイレのほうへ。


香織    正樹いー。予備のトイレットペーパー持ってきて。

正樹    はいよー。


       正樹、トイレのほうへ。


正樹    ここ置いとくよ。

香織    正樹、ありがとう。

正樹    どおいたしまして。それより、お前のほうが年下なのに、なんで俺が呼び捨てにされるんだ。

香織    さあねー。だって正樹、お兄さん的にはとても・・・

正樹    とても、何。

香織    とっても。プッ。

正樹    店長ー。香織ちゃんがいじめるー。


       香織と正樹が可愛い口論。
       正樹、店長に助けを求めにカウンターのほうへ。


青木    あ。全部おわった?

正樹    あ、はい。

青木    んじゃ、帰るか。香織ちゃん!おわるよー。

香織    はーい。

青木    じゃ、エプロン回収。

正樹    はい。


       香織、カウンターへ。


香織    はい。エプロンです。

青木    とりあえずでようか。

二人    はーい。


       正樹、香織、店長、店の出口へ。


青木    香織ちゃん、家どっちだっけ。

香織    南中の裏です。

青木    そっか。少し遠回りだけど、正樹君付けるわ。

香織    えへ。ありがとうございます。

正樹    俺は問答無用ですか。

青木    元気よくっても、香織ちゃん女の子だぞ。

正樹    はーい。

香織    正樹、よろしくー。

青木    じゃ、お疲れさまでした。

二人    お疲れさまでしたー。


       正樹・香織組と店長、別々の方向へ帰る。
       正樹・香織が掃けると、店長振り返り、ニンマリと微笑む。
       カフェ14の店内。青木だけ残っている。


青木    少女は少年に恋しています。

      しかし、少年は気付く様子もなく別の人に恋をしている。

      そんなことはよくある話だけれど、私はあの女の子を応援したいと思っています。

      とにかく見守ろうと思います。そのなりゆきはきっと私の望む展開を生むと信じています。


       鷹宮が入る。


鷹宮    相変わらずいい趣味してるわね。

青木    もう閉店しましたよ。

鷹宮    閉店後のあなたに用があるのよ。

青木    そりゃまたごひいきに。

鷹宮    どういたしまして。じゃ、お酒くれる?

青木    ここはコーヒー屋さんなんで、お酒がありません。

鷹宮    じゃあ、コーヒーちょうだい。

青木    閉店しました。

鷹宮    何?たまに顏出したかと思えばいじわるねえ。

青木    時間外労働は嫌いなんだ。

鷹宮    じゃあ、自分で探す。

      ・・・。ここかな?ほら!あった。・・・発泡酒。

二人    発泡酒じゃ酔えない。

青木    ・・・まあ、呼吸はあうんだな。

鷹宮    だいぶね。しかし、発泡酒しかないとは、とほほだねえ。

      飲まないのになんで置いてあるかなあ。

青木    飾りだよ飾り。

鷹宮    そんなに大事にしてるかしら。

青木    そういや趣味ってなんの話?

鷹宮    さっきの若い子達、どうにかしようとか思ってんんじゃないの?

青木    別に。

鷹宮    くっつけたり離したり、よく飽きないね。

青木    そういう君こそ懲りずにそこにいるよなあ。

鷹宮    あら?貴方を求めてわざわざ来たのよ。恋の魔法かしら?

青木    かけた憶えはないけどな。

鷹宮    いいえ、かけたわよ。三年遅れてかかったわ。

      それを何?私がその気になったらもう、別に興味が移ってるんですもの。

青木    忘れろってそんな過去。

鷹宮    しつこく言わせて。(云々・・・)

青木    口を挟むようで悪いけど、口説きに来たの?

鷹宮    交渉よ交渉!お互い得をする道を選ぶべきよ。

青木    交渉の席につかないのも立派な戦略なんだけどな。

鷹宮    やだやだやだ!

青木    それもそろそろ通用しないことに気付いてほしいな。

鷹宮    私にもプライドとか若さとか信念とかあるのよ。かなぐり捨てて駆け込んできた私の立場を考えてよ。

青木    考えたくない。というのが結論。

鷹宮    冷たいわね。相変わらず。

青木    熱いな相変わらず。

鷹宮    これでも世間じゃクールビューティーで通ってるんのよ!

青木    クレージービューティーの間違いじゃないか?

鷹宮    褒め言葉ね。

青木    まあ、一応。

鷹宮    まあ一応、か。仕事仕事の毎日で何が本当の賞賛か分からなくなるわ。

青木    時代を作りながら生きている人間は大変だね。

鷹宮    私と時代は一体よ。

青木    勘違いさえしなければ、良い生き方だよね。

鷹宮    勘違いか。自分が世界を動かしているなんて思ってたら案外あっけなく「ホされる」もんよ。

青木    厳しい世界だね。

鷹宮    そこをお気楽にアガっちゃったあなたは偉いと思うわ。

青木    君らの世界は速すぎて俺には向かないんだよ。

鷹宮    だから私がおいてけぼりなのよ。

青木    すまないねえ。

鷹宮    というわけで、ひとつ頼みごとよ。

青木    (は?)

鷹宮    これ、売ってくんない?(といって詩を見せる)

青木    よく見つけたな。

鷹宮    普通に検索で見つかるわよ。そんなことより、あれ売ってみる気ない?

青木    なんというか売り切れなんだよ。

鷹宮    嘘!どこのだれに。私が聞き逃すとでも思うの?

青木    今かかってるのは良く聞く曲?

鷹宮    は?・・・よくかかってるわねこれ。歌も確かあったはずよ。

      でもこれ英語じゃなかったかしら?まさか!

青木    そうだよ。英訳版だよ。

鷹宮    くう、不覚!

青木    だから諦めたほうがいいよ。なんならこの場で発泡酒の歌書こうか?

鷹宮    やだやだやだやだ。

青木    無理だって。

鷹宮    やだだだだだだ。

青木    新しいなそれ。

鷹宮    だだだだだだ!・・・あ?

青木    何?

鷹宮    日本語版は出てない。

青木    く!

鷹宮    貴様はかりおったな!

青木    いえいえ滅相もございません。

鷹宮    はいはい、おさけ飲む前に契約書書くわよ。印鑑持ってきて。

青木    え~。

鷹宮    ぶつくさいわないの。どうせ印税暮しなんでしょ。本が数冊売れたぐらいで安心しないの。

青木    大人だなあ。

鷹宮    いいから持ってきなさい。

青木    ぶうぶうう。

鷹宮    あ~、もたもたしないの。

青木    うえ~ん。鷹宮さんがいじめるよお。

鷹宮    仕事だから甘くしないわよ。

青木    はーい。


       青木、奥へ。


鷹宮    私は彼と言うより彼の言葉が好きでした。

      同じ会社でお互いデザインの仕事をしていましたが、ぐずぐずしているうちに各々の道へと進みました。

      彼は書き溜めていた小説があたり、表舞台から消えてしまいます。

      その間に私は小さなレコード会社の重役になり、その子会社にいたっては株も独占しています。

      私の仕事は芸術家の歩む道を整えることです。

      私たちは結局つきあうこともなく、時を重ねました。

      こうして私が振り向いたとき、かれは別の方向をみつめていたのです。

      ・・・遂げることはなくとも、この情熱があれば私は生きていける。

      わたしは彼の言葉の中の住人なのです。


       鷹宮、青木の隠れていった方へ入っていく。


鷹宮    こら、いつまで待たせるの!

青木    「ハンコがない~」


       照明、変わる。場面は夜道。正樹と香織がいる。


正樹    うわ。くらー。相変わらず。

香織    でしょ。この辺が一番暗いんだよ。いつもは走っちゃう。

正樹    今日は?

香織    結構、大丈夫。正樹いるし。

正樹    (そ)んな、変わるかなあ。こんなトコじゃ狙う奴いないでしょ、真っ暗だし。

香織    えー。オバケは暗いトコに出るんだよ。

正樹    オバケえ。出ないって、そんなの。変質者の方が全然怖いと思うけど。

香織    なんでえ、オバケのほうが怖いよ。

正樹    昔から、このへん出るって噂あるよなー。

香織    お、脅かさないでよ。

正樹    あれ、聞いたことない?あそーか、越してきたの結構最近だっけ。

香織    うん。

正樹    香織ちゃんさあ。オバケいる派なの。

香織    正樹、オバケいない派?

正樹    つーか、まだ見たことない派。

香織    わたし、見たことないけど、いる派だよ。

正樹    なんでかなあ。おれ、みたことないから、いない派なんだけど。

香織    変わってるなあ。

正樹    香織ちゃんに変わってる言われたくない。

香織    心外だなあ。正樹がこの香織サマに逆らうとは。

正樹    おれにだって自由と正義があるんだぞ。

香織    なにそれ?

正樹    教育も思想も、信じる信じないは俺の自由ってこと。

      つまり、カオリサマに従うも従わないも強制は出来ないってこと。

香織    それ、つまんなーい。香織様は絶対なのだー。

正樹    はは、じゃあ、香織ちゃん自分でお化け追い払えばいいじゃん。

香織    正樹、覚えてろー。女の子の弱み責めちゃいけないんだぞお。

       香織、正樹の腕にくっつく。が、正樹あっさりとかわす。

正樹    ちょ、ちょっと。なに。

香織    そおいうこと聞かないの。バイト帰りに女子高生と歩けるんだぞ。

正樹    そんなこと言われたって・・・なんで道ばたでプロレスごっこしなきゃいけないんだ?

香織    違うう!そおいうことじゃないい。

正樹    じゃあなにしようとしたの?

香織    あー、ガキ扱いしてるでしょ。

正樹    扱うも何も香織ちゃんまだ

香織    まだとか言ってるー。正樹、先に大学入ったけど、誕生日は半年しか違わないんだぞ。

正樹    そうだったの?てっきりもっと下かなとか。

香織    さーいてー。私の誕生日覚えてないの?

正樹    聞いたことないぞ。

香織    そういう問題じゃないい。女の子の誕生日ぐらいチェックしとけ。

正樹    聞くと怒るじゃん、体重とか。・・・って、あれ、どしたの。

香織    なんでもない。

正樹    ああ!お腹空いたんでしょ。

香織    ちが・・・(腹の音)・・・ありゃあ

正樹    やっぱり。

香織    そおじゃない。・・・正樹、やっぱサイテ。

正樹    なぜ最低呼ばわり。


       香織、足を止め、正樹にもう一度とびつく。つい防御


正樹    こらこら

香織    ばか・・・

正樹    ・・・

香織    ・・・

正樹    なにゆえに馬鹿。

香織    聞かないの、そおいうことは。

正樹    香織ちゃん家、この辺でしょ。帰ったら夕飯食えるじゃん。

香織    少し、黙れ。

正樹    わかんねーなあ。

香織    正樹のばか。

正樹    ほらもうつくよ。

香織    ・・・うん。


       香織、どうやら家の前。香織を置いて正樹が去る。


正樹    じゃね。お疲れさまー。ちゃんと寝ろよー。

香織    正樹もオバケに気を付けてね。

正樹    大丈夫だって。じゃ!


       香織、手を降る。


香織    なんで、ワカンナイのかな。正樹のブーニー。

      ・・・冬物っぽい服を着て、落ち葉の片付いた舗装道路を歩いて、コーヒー屋さんでアルバイト。

      相模大野の街は都会なのに、土の匂いがついた風が運ばれてくる。

      この街で過ごすのが好き。そして、この街で暮らす正樹で心がいっぱい。

      ほら、もう空気が冷たい!窓から星を見ていると、この空気が澄んでいくのがよくわかる。

      秋が終わろうとしているこの季節に、なんだか私はわくわくしている。

      あー、もう寝よう!おやすみぶーにー正樹。


       香織、掃ける。




Ver.White  第2場 へ続く

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