　　みどりの日記～gardener's hum～

第４回　４月２１日

『見えないものに縛られて』

最近、日常生活の中で自分がすっかりインターネットの世界に囚われているな
と感じることがあります。
十年前には使うことができなかったパソコンや携帯電話なるものも、
今や生活の中でなくてはならないものになってしまいました。「便利ね」
なんて、思ったのも束の間。いつの間にかパソコンや携帯なしでは生活できない、
仕事もできない、という状態になってしまいました。

以前、パソコンの買い替えをきっかけにメールアドレスを変えた時がありました。
すると、偶然ですが２回ほど小さな『トラブル』が発生ました。大したことでは
なかったのですが、「メールが届かない」というよくあるパターンでした。

ある日、アート関係の友人であるＳさんから電話をいただき、その事態が発覚しました。
「こんにちは。先日はどうも。ちょっと前のことなんだけど、私が送ったメールは
見ていただけましたか？」

「え？届いていないんですけど…。あれ？どうしたのかな。昨日もちょうど
似たような事があったんですよ。みなさんに迷惑をかけているのかな、すみません。
ウチのサーバーがおかしいのかな？…どうしよう」。

私の頭の中では、昨夜確認した数日間のメールの内容が走馬灯のように巡って
いました。体中がカーッと熱くなり脇の下にはイヤ～な汗が流れ始めました。
すると、軽いパニック状態の私の耳に、落ち着いた声が返ってきました。
「あ…そんなこともあるから、そんなに恐縮しないでよ。ああ、きっとね、
私が送ったメールは、世界中を巡り巡って迷子になちゃったんだよ。」

へ？私はその言葉に驚いてしまいました。そしてキョトンとしている私を置いて、
言葉は続きました。
「あるんだよ。本当に。この前なんてＴさんと『さようなら』って別れて、
『お疲れ様でした』ってメールを送ったら届いているかな？って心配して、
また電話しちゃったもん。変だよね。縛られているのね。」

「縛られている」…まさに私の感覚はそうでした。
ただ一つのメールが上手く届かなかっただけじゃないですか。それだけの事で
“大変な事をした！”とこの世の終わりみたいな感覚に陥ってしまう…。
ちょっと返事が遅れただけで「どうしたのかな」と感じてしまう。
完全にネットの世界に支配されていますね。

こんなに街の中にいるのに、そんなことくらいで孤島に一人で取り残された
気分になってしまう。「現代病だ…」。Ｓさんのように、「これだけ世界中
を巡っているんだから、迷子にもなるわ…」とおおらかに構えよう。

ふと、受話器を握ったまま窓の外の景色に顔を向けると庭に植えこんだ
薄いピンクのマーガレットたちが風にそよいでいました。

…ということで、みなさんメールを送ったのに返事がないと思ったら、
気軽にお電話してみてください。意外と“メール君”は地球の裏側で迷子
になっているかもしれないので。

ジャンル別一覧