みどりの日記                  ~gardener's hum~

  みどりの日記 ~gardener's hum~

第17回 7月21日



『虹が見えた!』


夏の天気は不安定。
さっきまでお日さまが照って「暑い、暑い」と言っていたと思えば急な雨。
それも半端ないくらいの雨量で“ゲリラ”呼ばわりされる始末です。


ある日のことです。その日は朝から雨が降ったり急に太陽が現れたり…と、
とにかく変な天気でした。夕方近くになり、庭の作業もいち段落。

夕飯の支度でも取り掛かろうかと思った時でした。突然二階から息子の声がしたの
ですが、響いて何を言っているのか聞き取れませんでした。「何を叫んでいるんだ…?
騒がしいな」私はあまり気にもせず作業を進めていました。


 その直後、慌ただしくバタバタと階段を下りてくる音がして、リビングの扉が
勢いよく開きました。静かにしなさい、と注意しようとしたら、息子が叫んでいました。

「大変!空に虹が見えるよっ」「え~本当?」

 私は息子の「事件だ!」と言わんばかりの興奮気味の表情にすっかり乗せられて
しまいました。窓際に駆け寄る息子の後からリビングの窓をのぞくと、そこには
くっきりとした虹の一部が見えるじゃありませんか!

スゴイ…こんなにはっきりとした虹は見たことない。


 「いや、俺の部屋の窓のほうが良く見える!」息子は自信満々に上を指差し
ソファから飛び降りました。「よし、見に行こう!」 二人で慌しく階段を駆け上がり、
子ども部屋の窓際へ。うわあ…すごい。半円がくっきりみえる。あまりの巨大さと
色彩の美しさに私は言葉を失いました。キレイ…。


 地球の丸みに沿うように七色のラインがしっかり見えました。
それは、あたかもとてつもない巨人が、空をキャンパスにして絵を描こうと筆を
引きずった後のようにも見えました。


 時間にして数秒。その景色に見とれていた私は、はたと気がつきました。
「あ、これ写真に撮ろうか。」私のつぶやきに息子が反応。
「そうだよ。早く、早く!」
その声にせかされるようにこれまた一階に駆け下り、カメラを抱えて、また二階へ…。
私は一体何をやっているんだろう?
もうそろそろ体力的にも限界なんですけれど。


窓際に戻りカメラを構えると、もう虹の一部が消えかかっていました。
あ、消える、消える。気まぐれの巨人が「やっぱり、や~めたっ」と言ったかどうか?
大きな消しゴムをこすり付けて描きかけの絵を消し始めたようにも見えました。
私は乱れた呼吸もそのままに、慌てて数回シャッターを切り、何とか写真をゲット
しました。


 すべてがほんの一瞬の出来事でした。
しかし、こんなスケールの大きな景色を見られたのはラッキーでした。
「これは何かいいことあるよ~」と横を向いて息子に声をかけると、彼はサッカー選手
のように親指を突き出し、得意げな表情を見せていました。



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