みどりの日記                  ~gardener's hum~

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第20回 8月11日



『お盆のお供え花』


お盆が近くなってきました。このラジオもいつもは通勤の車の中で聞いているけれど、
今日は自宅でお盆の準備をしながら聞いている…という人もいるかもしれませんね。


 「お盆」とは、新暦の8月15日前後に行われる祖先の霊を祀(まつ)る一連の行事の
ことを言います。仏教の行事と思われがちですが、日本古来の自然崇拝とアニミズム
という精霊崇拝、またはその延長線上にある先祖崇拝などの考え方が混ざって今の行事に
なったと言われています。


 私は子どもの頃には「お盆」という行事に何の疑問も持たずにお供え物をしたり、
仏壇に手を合わせたり、お墓参りに連れて行ってもらったりしていました。
大人になって勤め始めてからもお盆は「大人の夏休み」程度の認識しか持っていなかった
と思います。


 ところが、一念発起して“花業界”に飛び込んで初めて花が仏事とは切っても
切り離せない存在であることに気づいたのです。



 若い頃の「お花屋さん」のイメージは、巨大なショーケースの中に色とりどりの
バラや季節の花が並ぶ華やかなイメージでした。しかし、実際の花の消費量からいくと
全体の7~8割は仏事に関する花、菊などのお供え用の花であると考えられます。
葬儀の装飾に使う籠用の生花、仏壇用の組み花、お彼岸などに使うお墓用の組み花などです。
その他にも法事等の花も加えれば回数的には仏事の方が圧倒的に多いです。



 お盆が近くなるとお花屋さんは大量に菊などの花を仕入れ、スタッフ総出でお墓用の組み花
を作り始めます。
もちろん、残業は当たり前。みんな明るく笑いながらも「今日中に帰れるかしら」なんて
話しています。
花業界に入ったのがべら棒に遅い私は、若いスタッフ達の足手まといにならないように
動いていたつもりでした。…ところが、その年 水を吸って重たくなった組み花がたくさん
入ったバケツを持ち上げ“ギックリ腰”になってしまいました。


そうやって何年かお墓用の組み花を作り続けていたら、地域によって入れる花が違ったり、
仏壇用には使わないのにお墓用に使う花があったりするのに疑問が湧いてきました。
そして使用する花が持つ意味合いや、日本人が死者に対して持つ感情などに惹かれて
いきました。


どうしても気になった私は、それらを調べるために図書館に行きました。
案内されたコーナーは人気のない書棚でしたが、そこでしゃがみこみ関係しそうな文献を
読んでみました。


こうして日本人の死生観を確認し、ミソハギが盆花と呼ばれる理由や墓花にシマススキを
使う理由など、自分が日々行っている行為の意味が解明されると、辺りがパッと明るく
なったような気がしました。

それと同時に人生には無駄な経験など何ひとつないんだ…と実感したのでした。








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