2004.06.24
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アガサ・クリスティのミステリには
先を読むように駆り立てる魔力がある。

Ten little nigger boys went out to dine;
One choked his little self, and then there were nine.
10人の黒人少年 食事に出た
ひとりが喉に詰まらせて そして一行は9人になった

U・N・オーエンという謎の大富豪から招待され
孤島に閉じ込められた十人の男女。
マザー・グースの歌詞通りに人が殺されてゆく。
集められた十人が十人とも
過去誰かの死に関わっていたという経歴を持つ。
次々に歌詞通りの状況で殺されてゆく招待客。
一体ずつ減っていくインディアン人形。。。

3度にわたって映画化されているうちの1975年度版。
残念ながら吹き替え版のため確認できなかったが
U・N・オーエンの声をオーソン・ウェルズ。
リチャード・アッテンボローが
キーパーソンとなる判事を演じ存在感を示している。

この映画、原作とは多少
設定が変わっている。

10人の男女が集められたのは
砂漠の中に建てられたペルセポリスの宮殿である。
ミステリにおける孤島という設定は
読者を多大なる恐怖に陥れるのだが
砂漠ではどうしても
パニック映画の様相を呈してしまう。
しかも最後の最後に
二人の男女が
思いもよらぬ理由で生き残ってしまう。

それでも思うのだ。
苦痛に顔を歪め罪を吐露する者もいれば
必要悪のように正当性を主張する者もいる。
一人一人の罪が多種多様で、
普通の人に見えても
その口から告白される内容は
拭いようのない事実。
それは身近に転がっているような事件でもあり
狂気ゆえに手を染めてしまった事件もある。
だが内容の吟味さえ行われず、
U・N・オーエンは歌詞に合わせて
一人ずつ殺してゆく。

原作に描かれていた、
10人の経歴が映画では省かれている。
手紙によって明らかにされる真実が
余命いくばくもない犯人によって明かされる。
U・N・オーエンは罪を背負い死ぬ。
生き残った二人は
本当の招待客とは違っていた。

どこかで快哉を叫んでいるのか。
罪を犯した者は逃げ出すことが出来ず
恐怖を感じながら死んでゆく。
いや、10人の招待客は私たち自身かも知れない。
一人づついなくなるインディアン人形。

「そして誰もいなくなった」は
アメリカとイギリスで二つの原題を持つ。
「And Then There Were None」
「Ten Little Niggers」
殺人予告ともなる歌詞もまた
黒人とインディアン、二通りの歌がある。
複雑に絡まり合うアイテムを
クリスティ女史は見事にミステリに仕上げている。

原作の醍醐味を知っていれば
充分楽しめる映画だが物足りなさは否めない。
1945年のモノクロ版の評判がいい。
機会があればぜひ観てみたいと思う。


追記
バトルロワイヤルを想起させ、
長崎小6女児殺害事件を思い出す。
クリスティ女史はきっと嘆いていることだろうな。










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Last updated  2004.06.24 22:26:26
コメント(10) | コメントを書く


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Re:●●●そして誰もいなくなった/1975(06/24)  
アガサのファンなもんでー素通りできませんでした。
そして誰もいなくなった、は名作だよね。
私のHPの「死ぬまでにやりたい10のこと」にアガサの名前出してます。よかったら来て下さいな。 (2004.06.24 22:29:19)

Re:●●●そして誰もいなくなった/1975(06/24)  
この小説のプロット、いろいろな作品(小説、映画)に流用されていますね。
アガサの推理小説の魅力は、緻密かつ合理的な謎解きというより、その大胆な発想の転換にあります。

乗客全員が犯人、小説の作者が犯人、とか。

アガサによるよれば、「灰色の脳細胞」の働きによる必然の結果ということになるのですが、彼女の特徴はメタ・レベルでのトリックにあると思います。

>二人の男女が、思いもよらぬ理由で生き残ってしまう。

こういう状況で結ばれた二人が、羨ましい・・・。 (2004.06.24 22:33:43)

Re:●●●そして誰もいなくなった/1974(06/24)  
ぷちてん525  さん
ミステリー好きは一度は読むアガサ・クリスティですよね。
3度も映画化されているの?
それは知らなかったナ~~。
でもきっとどれかを見ているはずと思うのだけど、思い出せないなあ。

原作と設定を変えているのは、3度目だからでしょうかね~。
10人のインデアン人形が一つ一つと消えていく、恐いですね~~。

どの映画でもそうなんだけど、原作のあるものを視覚化するとどうしても、「これしかない」という一方的な相手からの押し付けが強くなるよね。
想像がきかないというか・・・
自分がぼんやりと思い描いたものと違うと、「違う、違う~」って言いたくなる。
でも、それもまた楽しいのかも♪
(ちょっと、余裕のあるフリをしてみた私(笑)) (2004.06.24 22:38:24)

Re[1]:●●●そして誰もいなくなった/1975(06/24)  
雨のようぽんさん
>アガサのファンなもんでー素通りできませんでした。

いらっしゃいませ~。

ははは、私も原作、一晩で読みました。。
オリエントもミス・マーブルもポワロもってま、普通ですが。ほとんど、意味わかってんの~って年齢のときに。もっかい、読みたいですね。

はい、お伺いしますです。 (2004.06.24 23:34:27)

Re[1]:●●●そして誰もいなくなった/1975(06/24)  
北の狼@Wolfさん

確かに、合理的な謎解きを考えてるヒマなんてないですもんね。ガツーンと来ますから。しかも原作だと人物描写もマメだし。けど、誰一人共感出来なかったりするんですが、アガサという作家にはやはりガツーンと来ます。

でもってこの映画で生き残った二人はやはり、結ばれたのではないかと思います。後日談として。 (2004.06.24 23:37:17)

Re[1]:●●●そして誰もいなくなった/1974(06/24)  
ぷちてん525さん

たぶん、観てらっしゃると思いますよ。
こういう作品、日曜映画劇場とか(あ、関西ならです)放っておくはずないもの。

原作の映画化ですが、やはり、咽を詰まらせて死んでしまう場面はエキサイティングです。そう言えば、他のミステリでも咽を詰まらせて死んでしまう方がいるとエキサイティング! (2004.06.24 23:40:53)

Re:●●●そして誰もいなくなった/1975(06/24)  
わたしもクリスティーヌを名乗るほどのクリスティーファンです。
「そして誰も~」はほんとドキドキしながら読んだのを憶えています。
映画版も見てみたいなー。
テレビのポアロはよく見ます。デビッド・スーシェ、あの人以上のポアロはいないですね。ボン! (2004.06.24 23:57:26)

Re:●●●そして誰もいなくなった/1975(06/24)  
gacha-danjhon  さん
三作も映画されているのですか。何年版かは分からないけど、原作と違い二人生き残るってパターンのを観ましたな。クリスティは、はまりましたねー。全巻揃えようとして、挫折しました。もちろん全巻読みましたが。(笑)今新しいデザインで、又本屋に綺麗に並んでるのをみると嬉くなります。
「そして~」はお気に入りで何度も読みました、。小学生の頃からファンでした。小学生でも理解しやすいんですよね。あっと驚くラストとかあるけど。
「そして~」はすでに、何番目かに殺されたはずの犯人が、医師に手伝わせて、死体の振りをしていてというもんでしたから、読み手としては当然、犯人は生きてる人から考えるから、まったく予想を裏切られますね。クリスティを読むと、大体の、犯罪トリックパターンや、犯人宛てとか、基礎が出来ますよね。 ミステリの初級~中級本ってとこでしょうか?え? 上級はなにか?ン~なんでしょう? (笑)  (2004.06.25 09:29:21)

Re[1]:●●●そして誰もいなくなった/1975(06/24)  
アヴリルになりたい!さん

>テレビのポアロはよく見ます。デビッド・スーシェ、あの人以上のポアロはいないですね。ボン!

もう、生き写し、生まれ変わり、、!

映画としてはB級に近いくらいですが、私はB級も大好きなので満足してたりします。「あ、咽つめた、つめた!」とか。

やっぱ、アガサ・クリスティってスゴイです。夢中になって読める、ミステリのジェット・コースター!
(2004.06.26 00:53:02)

Re[1]:●●●そして誰もいなくなった/1975(06/24)  
gacha-danjhonさん

がちゃさん、きっと観てられますよん。このタイトルがビデオで並んでたら、つい手にとってしまいますよ~。テレビでもやってたっけな。

わかりやすいミステリとしての魅力はもちろん、ちょっとした「装置」的な感触を受けました。招待客は死んで当然なのか、とか、他にやり方があったんじゃないか、とか、オーエン、キミ、ナニサマやねん、とか。答えは出ませんが、そういうことを考えされるつー意味のいわゆる「良心(常識)回路」かも知れません、人間の。
-----
(2004.06.26 00:56:47)

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