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2005.05.18

(6)

テーマ：レンタル映画(818)

カテゴリ：アメリカ映画

雪に埋もれた田舎町。
兄と弟と弟の腹の大きい嫁さんと440万ドル。
白い景色と
途方もない大金と、
男二人に女一人の人間。
当然のように思い描くのは、
そのお金をどうするか？ってことだ。
アメリカの雪深い田舎町の森で、
墜落したセスナ機の中にあったお金である。
どうする？
なんだか犯罪絡みのようでもある。
でも、どうする？
やっぱ、着服する？

1998年、サム・ライミ監督作品。
スコット・B・スミスの原作の本は分厚い。
そして映画の方も2時間を越える。
雪の景色が長く続く。
人口が少ないから、人間も少ない。
ただ、主な登場人物の皮がむけて、
黙っていても感情が露わになり、
真っ裸になってゆく。
なにせ、440万ドル。
日本円だと単位は「億」である。

嫁さんは腹が大きい。
亡くなった父の農場を買い戻そう。
借金がかさんでいる。

やっぱ、着服する？
しかし、ヤバイ金かも。
じゃあ、しばらく様子を見て、
後で山分けしたら安心かもしれない。

というスタートだったはずが、

死体がドンドン増えてゆく。

ちょっとした良心が生まれても、
誰かが、耳に悪魔の囁きを吹き込むから、
良心よりも妬みや欲望が育まれ、
死体がドンドン増えてゆく。

不幸がドンドン増えてゆく。
着実に、着実に、増えてゆく。
着実に増えてゆくのを観るのは退屈である。
退屈な映画だが退屈なワケを考えるとゾッとする。
幸せにも慣れてくるものだと言うが、
不幸にも慣れてくるのである。
440万ドルを手にした人間の不幸。
違う人生が歩めるかもと期待した不幸。
まだ自分のものでもないのに、
取り上げられまいとあがくうちに、
失ってしまうのだ、多くを。

雪深き町に暮らす人々。
ドラマティックな人生とは無縁で、
自分の日常を、自分なりに生きている人々。
自分の日常を、自分なりに生きていないか、誰もが。
それでも別の生き方を思い描いたりする。
その思い描く別の生き方の中に、
自分の欲望が見え隠れするものかも知れない。
440万ドルを手にしたら、どうする？
着服する？
犯罪絡みかも知れないのに。

全く、ビリー・ボブ・ソーントンは化ける。
気の弱い兄のジェイコブを魅力的に演じている。
弟のハンクは、ビル・パクストン、
だんだんと兄を疎み始める視線は、秀逸である。
ブリジット・フォンダは腹に命をかかえ、
男たちに悪意を吹き込んでゆく。

なんの理由もなしに
大金が転がっているはずはない。
番号は控えられていたから金はただの紙くず。
紙くずは燃やすことができても、
燃やせないものがある。
犯してしまった罪と叶わなかった別の生き方。
真っ白な世界に
真っ裸の人間の感情が露わになる。
嫌に、なるほどに。

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