みやび

みやび

2008.02.25
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カテゴリ: 物語



 ミチルとカナは、まるで逆ばっかのことだらけ。なにもかにも。

 だからこそ、仲が良いのかも知れないけど。

 だいたいカナが、ほとんどを仕切っていてミチルがそれについて行く。

 見た目だって、一目瞭然だ。

 カナは大学生の頃、この地方の民放のテレビ局で「特にかわいい女の子」が選ばれる

 『フラワーシスターズ』の、何代目かの一員だったんだ。

 時々テレビに映ったり、イベントに出たりして、女子大生を真正面から“やってた”感じがする。

 片やミチルは、白衣を着て実験室で暗く試験管を振っていたクチ。

 全然違うのに、でもなんとなく、くっついている。


 一番最初に知り合ったときに、カナはミチルに言った。

 「ねえ、これから私のこと“カナ”って呼んでくれない?」

 実は、カナの本当の名前は“カナ”じゃなくって、女の子にはめずらしい四文字の仰々しい名前だ。

 カナは家では、その四文字の名前に絶対に「さん」をつけて呼ばれるそうだ。

 決して、呼び捨てでも「ちゃん」でもなく。

 カナは、それがいやでいやで仕方ないって言ってた。

 「じゃあ・・・」とミチルはカナに言った。

 「私のことは、ちゃんと本名で“ミチル”って呼んでくれる?」

 ミチルの名前は漢字で“美満”と書く。

 満月の美しい夜に生まれたからって、そう父に言われてから、すごく好きになった名前なんだ。

 でも、家族は「ミーちゃん」って呼ばれるし、友達は「ミミ」か「ミチ」

 最悪は「チル」って呼ばれてたこともあったし。


 「オッケー、じゃあこれからは“ミチル”と“カナ”でいこ!」

 鶴の一声ならず、カナの一声。





 そのカナが、飛んでくる。

 そして、ミチルとウッドストックの人との間に、ぎゅっと割り込んで

 「ミチル、何してんのよ。さっさと行くわよ」

 そう言って、ミチルの腕をひっぱる。

 ミチルは、カナによって、ずるずると出口へ引きずられ行くみたいに見える。


 「ミチル!あの人誰、なんなの、知り合い?名前しってんの?」

 矢継ぎ早の質問に、もうどれから答えていいか、ミチルはわからない。

 けど、どの問いにもきっと「わからない」しか答えられないだろう、そう考えながら

 ミチルはカナの、良く動く形の良いピンク色のくちびるを見つめていた。



          (このつづきは つづくんだろうか?)







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Last updated  2008.02.27 13:02:44


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