みやび

みやび

2008.03.02
XML
カテゴリ: 物語


 大輪の華麗な牡丹のようなカナは、どこでもいつでも、そのまわりを惹きつけてしまう。

 もちろん、このスポーツクラブでもそうだ。

 カナがやってくると、そこだけ空気の色が変わるのがわかる。

 カナを見つけると顔見知りが次々とやってきて、先を争うかのように声をかける。

 「カナさん、こんにちは」 「カナちゃん、今日は何するの?」



 そんなカナを、コウキは、いやコウキだけでなくとも、ここの会員なら誰でも、

 目に入ってしまうだろう。

 コウキは、大都会ではない、かと言って田舎でもないこの地方都市に、半年前に転勤で来た。

 なので、このスポーツクラブでは新参者である。しかしカナの存在は知っているほどだ。

 ある日ふと、コウキは、気が付いたことがあった。

 それは、誰もがカナに声をかけ、カナは誰にでも同じように笑顔で接するが

 カナからは、誰にも自分からは話しかけようとはしないのだ。

 (女王様ってわけか)

 だが、そんなカナだが、いつもこのジムに入ってくると、決まったように誰かを探す。

 やがて、“見つけた”そう言うかのように瞳をきらりと輝かすのだ。

 すると、その方向へ、良く通る気の強そうな声でその名を呼ぶ。

 「ミチル!」


 ミチルは、トレッドミルで走っていることが多い。もちろんカナに呼ばれるその時も。

 ミチルはひたすら走る。カナはその横で、ミチルの返答など気にすることなく話し続ける。

 少し離れた場所でそれを見ているコウキは、そんな風景がおかしくて、

 ついつい、忍び笑いをしてしまうのだった。

 ふっくらとまあるい大輪の牡丹の花のようなカナ。

 片や、少年のように腕も足も細くて長い、さらに言えば、おしりも胸もない。

 そんなミチル。


 いつからだろうか?

 コウキは、いつもカナの声を探していた。

 少し甲高い気の強そうな、そしてよく通るその声を探していた。

 ほんとうは聞きたいだけど、聞いたことのないその声を探すために。

 その先に必ずいるミチルの姿を探すために。


 そして、あの日・・・。





       (ここまでつづいたが これからどうする?)









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008.03.02 21:25:25


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Create a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: